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第1話 時計塔の告白

初めてのラブコメですが、良く書けたと自負しております。

ヒロインの可愛さに悶えろ!


最後までお付き合い頂けると幸いです。

 出席番号一番のプリーツスカートが椅子の背もたれに隠れて、僕の番が来た。

 高校デビューなんてイタいけど、きっとこれで何かが変わるはず。だから息を吸って、一息に言った。


朝陰真(あさかげまこと)です。趣味は普通にゲームとか漫画とか。……あとその、Metubeで配信とかやってます。アサシンチャンネルって言うんで良かったら見てください」

 

 教師に言われる前に席に着く。

 

 言ってやった。

 言ってやったぞ。

 

 顔が熱い。

 心臓がドクドクいってる。

 皆が僕を見てる気がする。

 でも確かめる勇気はない。

 他のクラスメートの自己紹介を背中で聞き流しながら、僕は机の下で両手を握り締めた。

 

 ■

 

 スマホを見る。

 

 〈棒読みの上反応薄すぎ。感情死んでる?〉

 

『底辺配信者が新作ホラゲー“バロックタワー5”初見攻略配信してみた!』

 視聴数15、高評価1、コメント1。

 チャンネル登録者数、0。

 それが放課後時点での、結果だった。

 

 やっぱダメか。

 高校生活一日目。自己紹介直後の期待感は、同じ量の落胆に変わっていた。そりゃそうだ。期待した僕がバカだった。あんなイタい自己紹介で、何が変わるというんだ。

 ため息をつき、帰り支度を始めた僕の前に誰かが立つ。

 

「朝陰君」

 

 涼し気な声だ。

 机の向こう、スカートのチェック柄から伸びるストッキングの黒。これは、60デニールといったところか。

 顔を上げる。 

 美少女が、そこにいた。

 

音無澄乃(おとなしすみの)です。学級委員の仕事を手伝って欲しいので、差し支えなければ一緒に来てもらえますか?」

 

 え、なんで?

 学級委員?

 というかこんな美少女、クラスにいたっけ?

 それにこんな可愛い子にどう返事したら……。

 

 混乱する頭で、僕は……。

 

「俺は構わないけど、今から?」

「はい」

「そう。じゃ行こうか」

「はい。ありがとうございます」

 

 淡々と、鞄を持って立ち上がった。


 ……なんで僕は、こうなんだろう?

 動画のコメントを思い出す。

 僕の感情は、死んでなんかない。 

 

 とにかく、音無さんと一緒に教室を出る。

 美少女学級委員の後ろを歩きながら、僕の思考は交通渋滞。

 

 こんな子が同じクラスにいたとは。

 今日一日、チャンネルのことで頭一杯だった。

 まずい。クラスメートの名前、一つも覚えていないぞ……。

 というか学級委員の仕事ってなんだ?

 それになんで僕なんだ?

 まあ、こんな可愛い子とお近づきになれるなら悪くはないけど……。

 ――なんかいい匂いがする。

 音無さんの匂いか?

 顔がいいと匂いまでいいのか?

 

 各々自宅や部活の見学に向かうであろう生徒たちの間を縫って、僕は音無さんの後を追う。

 後ろにいると、すれ違う生徒のほとんどが目線をこちらに向けるのが分かる。正確に言えば、前を行く美少女の顔に。

 

 僕は極力“たまたま後ろを歩いているだけですよ”という空気を出した。陰キャの僕に、美少女オーラの範囲内を歩く勇気はない。だから音無さんよ、そうやってちらちら後ろを振り返らないでくれ。

 

 音無さんは視線を意に介さず廊下を進み、階段を登る。

 数段後ろを、僕も登る。

 

「……」

「……」

 

 気まずい。何か言ってくれ。

 階段のステップを踏む60デニールの黒も、空気を孕んで揺れるプリーツも、何も語ってはくれなかった。

 

 ■

 

 たどり着いたのは最上階の隅の、妙な部屋だった。教室の四分の一程の広さで、なぜか奥に階段がある。屋上への入り口だろうか? だが埃っぽい床と空気は、ここが普段まったく使われていないと物語っていた。

 

「なにここ?」

 

 戸惑いながら中に踏み出した僕の後ろで、扉を閉める音がした。そして、かちゃりという小さな音も。

 

「……音無さん?」

 

 振り向けば、俯いた音無さん。

 

「ここはもう使われていない時計塔の中です。今、内鍵をかけました。ここには誰も来ません」

「え?」 

「朝陰君、ごめんなさい。学級委員の仕事というのは嘘です」

 

 心臓が跳ねた。

 高校生活初日の放課後、時計塔の密室で、とびきりの美少女と二人きり。

 わからない。わからないけど、非日常的な何かが起こる気がする。

 

「朝陰君」

「はい」

 

 セミロングの黒髪が揺れる。音無さんが顔を上げた。白い頬には(ほの)かに朱がさしていて、僕はそのグラデーションにまばたきを忘れた。

 そして彼女は潤んだ眼で僕を見つめ、こう言ったのだ。

 

「お願いします。私と一緒に、ホラーゲーム配信して下さい……!」

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