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【短編】お弁当の中身は宇宙人!?いいえ、これはウチュウジン。あくまでも植物です。3 【コメディ】

    ◇

「ねえ、あれが光に弱いって知ってて、わざと私にカメラを使わせたんでしょう?」

 次の日、あたしのクラスにずかずかやってきた田辺さんは、開口一番そんな言いがかりをつけてきた。

 あたしは怒るよりあきれ果てて言葉も出てこなかった。


「本当はまだ隠し持っているんでしょう? ねえ、一体でいいのよ。私にちょうだいよ」

「ちょ、ちょっと田辺さん? 一体何の話?」

「だから、昨日の――」

 あたしは田辺さんの口をふさいだ。

 宇宙人だとかなんとか大声で口にされたら迷惑だ。あたしはそのまま彼女を廊下へ連れ出した。

 なるべくひとけの少なそうなところを選んでひそひそ声をだす。

「ちょっと! 田辺さん、そんなこと大声で言われたら困るんだけど!」

「どうして?」


 田辺さんはきょとんとしている。そしてあたしの努力もむなしく、興奮した様子でしゃべりだす。

「それより、アレ、資料とかで見るよりずいぶん手足が長いようだけど未発見種なのかな。ねえ、なんで学会に発表しないの? 宇宙人の存在を実証できるんだよ!」

 ダメだ、この人ぜんぜん話を聞いてない!


「ほら見て!」

 と田辺さんはいきなり、資料とやらを広げ始めた。

 UFOっぽい発光体の写真やら、宇宙人の想像図やら新聞の切抜きやらが詰まったスクラップブックだ。

 まったくもって廊下のすみに来た意味がない。ほら、皆ふりむいてるじゃない!

「あ、あのね、あたしそういうのよくわかんないから! 興味もないし! とにかく困るの。もう教室こないでね!」

 あたしも大声をだした。あたしは関係ないのよと、アピールしときたかった。


 かなり強く言ったつもりなのに、田辺さんはやっぱり聞いてなかった。次の休み時間も私のところへやってきた。

「ねえ、お願いだからアレ、一体ちょうだい! 一体くらいならいいでしょう。私どうしてもやってみたいことがあるのよ。機材は全部そろってるの。――麻酔もあるのよ」


 麻酔というところだけ声を潜めて、田辺さんはにたりと笑った。


「あいつ知ってる」

 クラスの男子がポツリとつぶやいた。

「D組のオカルトマニア。なに、宮下さんてアレと同類なの?」

 どうやら彼女は有名だったらしい。あたしはそういうことにはウトいから、全然知らなかったけど。

 あたしはあわてて首をふった。あたし、解剖なんてしないよう。


「そういえば宮下って、宇宙人食べるんだっけ」

 タイミングよく昔の話をもちだすヤツがいる。

「あっはっは! 宇宙人なんて食べないよ」

 あたしは笑って否定した。ウチュウジンは食べるけど。


 こういうときはむきになって否定しちゃダメなのだ。

「そういえば樹理ちゃん、ときどきお弁当抱えてこそこそどっか行っちゃうよね」

 結ちゃんがポツリともらした。私は内心「え~っ!」と思った。このタイミングでその一言はきつい。

「えーっと、アレはねえ~、ちょっと恥ずかしいから」

「見せて! 内緒にしなくたっていいじゃない!」

 結ちゃんは目をうるませた。


 な、なぜ……? あたしが悪者なの?


 ほかの女子たちがたしなめてくれたけど結ちゃんは首をふった。

 結ちゃんだって、おかずがヒドイと言いながら弁当箱のふたで隠しながら食べるとき、あるじゃない。どうしてあたしばっかり全部オープンにしなくちゃいけないの。

 あたしは内心ムッとしたが、逆らわなかった。

「いいよ、わかった」




 次の日、あたしが結ちゃんに見せた弁当は、白米に梅干だけのシンプルなものだった。母さんに頼みこむのは大変だった。十七回ほど事情を話して、ようやっと当面ウチュウジンはお弁当に入れないという方向で話がまとまった。母は「栄養が足りない」などと文句を言っていたが。


 結ちゃんは、あたしのお弁当を見るとなぜか口元をおさえた。

「樹理ちゃんち、貧乏だって聞いてはいたけど、そ、そんなに……」

 こっちのほうこそ、そんなに? である。梅干しおにぎりはよくて、日の丸弁当はダメなのか。海苔か、海苔の差か。


「えっと、気にしないで? お米を買うお金くらいはあるんだよ? それにほら、この梅干国産だよ!」

 おろおろ言い訳すると、逆効果だったようで、結ちゃんはぽろぽろと涙をこぼした。


「どうしよう、結、ひどいこと言って」

 いやー、そこで泣きだされても正直困るんですけど……。

 すると、横でやりとりを聞いていた女子のひとりが「あ~、じゃあさあたしの卵焼きあげる」とあたしのお弁当に黄色味をそえてくれた。


「おお、ありがとう!」

「あたしも~。しいたけあげる」

「あんたそれ嫌いなのあげてるだけでしょ」

「宮下~、かじっちゃったけど磯部揚げいる?」


 教室はちょっとした騒ぎになった。

 あたしは箸を置いて立ち上がりその場で頭をさげた。

「みんなありがとう。だけどいっぺんには食べられないから順繰りでちょーだい」

「おい宮下、おまえ遠慮というものはないのかよ!」


 教室内がどっと沸いた。よしよしいい感じにまとまった。

「ほらほら結ちゃんも泣きやんで。その唐揚げで手を打つよ」

「うわ、これだよ! こんなずーずーしい女に同情することないって!」


 失礼だな。けど、めったに食べられない唐揚げゲットしたからまあいいか。




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