【SS】『魔女』『調査』 【SF(すこしふしぎ)】
再掲です。
『魔女』(570文字)
『調査』(856文字)
『魔女』
彼女は魔女と呼ばれていました。
魔女はごみ置き場で材料を集めては、ゴーレムを作りました。彼らはあたかも命を持った存在のように振る舞います。
商人がやってきて食料と引き換えにゴーレムを買いました。
ゴーレムは戦に駆り出されてたくさんの人を殺したそうですが、魔女は気にしませんでした。
ボロボロの少女がやってきて魔女に償いを求めました。
「弟は、ゴーレムに殺された」
魔女は弟を見下ろして首を傾げました。
「こわれたならなおせばいい」
できあがったそれは過不足なく弟の姿をしていましたが、物言わぬ人形でした。
「なぜあの子にゴーレムを作ったんだい?」
少女が去ったあと商人が尋ねます。
「彼を殺したのはゴーレムじゃない。そんなこと君ならすぐにわかっただろう?」
「わたしはただ、なおしただけ。かんちがいしてるみたいだけど、わたしにできるのはそれだけ」
少年の首には絞められたような小さな手の跡があったけれど、魔女が気に留めたのは、少年がまだ動くかどうかだけでした。
数日後、魔女はごみ置き場に少女が倒れているのを見つけました。少女はもう動かないようだったので、魔女はすぐにそれを放り出しました。
魔女はただ、そこにあるものをなおすだけ。商人は魔女が直したゴーレムを売っただけ。政治家は戦争を始めただけ。
壊すことしか知らない人々は、いつごろからか彼女のことを魔女と呼びました。
『調査』
穴の調査が彼女の仕事だ。穴の数はこの地区だけでも三〇〇を超える。生命体の有無とか、ガスの発生状況など調査項目は多岐にわたるのだが、彼女はいつだって素早く的確だ。優秀な探査機なのだ。
そのはずなのに、彼女が戻ってこない。
僕は彼女を迎えに行くことにした。慎重に降下して深さ五十メートルの辺りで地面に到着した。彼女は少年と一緒だった。
驚いたことに、ここには生活の場があった。机や椅子やベッドがある。ここらあたりでは、生物の痕跡ですら稀なのに。
どういうことか尋ねるが、彼女はろくに返事もしかかった。
少年の背中にぴったりと身を預け、なんとも離れがたそうな様子である。
なだめても叱りつけても、彼女が仕事を再開することはなかった。
原因はどうやらこの少年にありそうだ。彼はいったい何者なのだろう。
少年は彼女のことをセレと呼んだ。彼女に名前をつけるなんて、彼はちょっと変わっている。
そして僕にはセノと名付けた。僕にまで。
僕はもちろん返事なんかしなかった。けれど彼は構わず僕を呼んだ。セノ。セノ。何度も。
そもそも彼はなぜ、こんなところで暮らしているのか、どうやって生存活動を続けているのか、僕はどうにも気になった。
彼は時折、壁から土を剥がしてさもうまそうに食べる。どうしてそんなものを食べるのか問うと、彼は僕に問い返す。じゃあ、セノはどうして物を食べない? どうしてここを調べている? それは何のため?
なぜって、それが僕の仕事だからだ。
僕は少年の観察を続け、仮説を立てた。穴をあけているのは、他でもない彼なのではないか。今まで彼の情報が一つも上がってこなかったのは、彼が探査機を壊してしまうからではないのか。
証拠はいくつもあった。彼の住まいに並ぶ家具は全て探査機でできている。よく見ればそれらは全て、壊れた探査機が積み重なったものなのだ。
思えば僕だって、彼女を探しに来ただけのはずなのに、いつの間にか少年から離れられなくなっている。
やがて、僕らを探しに別の探査機がやってきた。
ドウシタナニガアッタ?
その問いかけに、僕はうまく答えられない。




