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【SS】うちの王子がモブ過ぎる 【コメディ】

この作品はノベルアップ+にも掲載しております

 王子に生まれついたからと言って、全員がドラゴンを退治するわけではない。

 姫を救出するわけでもない。

 中には必ず『その他の王子(モブ)』がいる。


「ヴェジ! 僕は旅に出るぞ」


 私はため息を押し殺し、王子にニコリと笑いかけた。

 

「はあ、旅でございますか。それはまたずいぶんと急なことで。成人の儀を終えられたばかりではありませんか」

「だからこそだ。今日は僕が主役なんだぞ。今日くらいは、みなに注目してもらえると思ってたんだ。だというのに、司祭でさえ上の空だったじゃないか! ウェジ、おまえもだぞ」


「私はしっかりと拝見しておりましたよ。王子の晴れ姿」

「うそだ! 途中で猫に気をとられてたじゃないか」


 バレていたか。私は、舌打ちしてしまわぬように口の端をあげた。


「王子に危険がないよう確認しただけです。魔法使いが化けている可能性がありますからね」

「そ、そうか」

「さようでございます。まあ、このところ式典続きでしたから、王子の晴れ姿が霞んでしまった感は否めませんが」


「ほらな、やっぱり! 僕は本当に楽しみしていたんだぞ。裏切られた気分だ。だから旅に出る! そうだ、世直ししよう」


 また面倒なことを言い出した。

 いまは式典を終えたばかりで可能な限り着飾っているからそれなりに見えるが、見た目は平凡、中身はアホ。それが私のお仕えする王子だ。


「なにか深いお考えがあるのですね。では、どのように進めましょうか」

「……そうだな。私のように報われない王子を集めて、旅団を作るというのはどうだ。そして悪い連中をやっつけていくんだ」


「なるほど? 王子という後ろ盾と国の財産を使って、気に入らない連中を踏み倒していくと。そういうことですね?」

「な、なんかその言い方だと、僕が悪い奴みたいじゃないか」


「私はただ、王子のおっしゃりたいことを整理しただけにすぎませんが、王子にはそう聞こえるのですね?」

「うう! 違う。僕は世の中の役に立つんだ~っ!」


 王子が泣きわめきながら出ていくのを見送って、私は王子のために用意されたお茶を勝手に飲む。どうせ冷めれば入れなおしだ。


「それにしても王子を集めて旅団とは」

 さすがにため息をこらえられなかった。


 まったく笑わせてくれる。この国で、モブ扱いされるのが嫌で旅に出るのではないのか。

 王子ばかりを集めたら、やっぱり『その他の王子』になるじゃないか。

 根っからのモブなのか。考え方までモブなのか。

 そもそも、王子に人を集められるとも思わないし、旅団の意味を理解しているのかも怪しい。


 実際、五分もたたないうちに戻ってきて王子はわめきたてた。

「ウェジ! なに一人でのんきに茶なんて飲んでるんだ。おまえも行くんだよ!」


 巨人を倒して来いとは言わない。伝説の武器をとってこいとも。だがせめて、家出くらいは一人でこなしてほしいものである。

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