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【SS】スコッパー 【SFコメディ】


 俺は、滅びた世界の地層から、データを取り出すスコッパーをしている。

 たいていは個人情報とか、お金の出入りとか、今となってはなんの役にも立たないものばかりだけど時にはお宝も出てくる。


 物語だ。

 創作が禁じられた今、かなりの高値で取引される。


 一度に持ち帰れる量には制限があるため、慎重に選ぶ必要があるのだが、小型のリーダーで読み取れるのは、タイトルやタグ、文字数など表層だけなのだ。必然、タイトルで中身がわかるやつを中心に選ぶことが多くなる。


「お、これ面白そう! 異世界ファンタジーの大長編。なんと完結済み!」

「いいなぁ。こっちのは短編。なんかさっきからずっと婚約破棄しか出てこないんだけど」

「お前のママが喜ぶだろ。こっちはどうだ」

 ひょいと身を乗り出した時、向こうから何か来るのが見えた。


「文字喰らいだっ!」


 作者の思想、物語のテーマ、時代性、そんなもの一切お構いなしに、自分の嫌いな文字を喰らい、物語を台無しにしてしまうモンスターの登場に俺たちは青ざめた。

 彼らのおぞましい鳴き声、『くぇえええんえつぅぅ』だの『くぉおおんぷらあ』だの聞いているだけで寒気がする。


「は、早く逃げよう」

「待って、ここにはまだ他の物語がありそうだ」

「けど、どうせ婚約破棄だろ!」


「わからないだろ! もっと掘ればいいのが出るかも。それに、特定のジャンルだけを見捨てるのはダメだ。あいつらはお前の好きな追放ものだって狙ってるんだぞ。いま、ここで仕留める」


 長い死闘の末、なんとか勝利した。

 拠点にたどりついた時にはボロボロだったけど、後悔はない。物語は俺達の大切な稼ぎで、生きがいなのだから。


「完結済みの長編! 読むぞ!」

 今夜はきっと、眠れない。

 売り出す前の物語を読めるのが、なんと言ってもこの仕事の醍醐味なのだ。


「で、どうだった?面白かった?」

「ウン。その、あれだけの分量を書ききった熱意がスゴイなって」





            おわり

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