【 序章】姫の身代わりで追放された先は僕のふるさとでした 【女装男子】
冒頭だけです!
タイトルも含めて気に入ってるんですが……。なかなか、彼の順番が、回ってこない!※長編化の際は、ラブが加わる可能性がございます。
この冒頭部分は、ノベルアップ+にも掲載しています。
「ふうん、意外といいじゃない。男なんかにわたくしの代わりが務まるのかと心配していたのだけど、名前はなんと言ったかしら」
「レナキオにございます」
僕の代わりに、侍女が答えた。
「そう。いますぐその名は捨てないさい。これからは、エアリアンナを名乗るのです。
良いですね、このことは決して誰にも知られてはいけません。
あなたの振る舞いで、わたくしの名誉が傷つくようなことがあってはなりません。――それからジェイエード」
僕の背後にガッシリとした体つきの、不愛想な男前が立っている。姫は彼に声をかけた。
「あなた、本当にそちらに行くつもり? あなたには、わたくしについていて欲しかったのだけど」
「ありがたいお言葉です。ですが、この方もまた姫ならば、お守りする存在が必要です」
「まあ、そうなのですけど……。なにもあなたがいかなくても」
姫の不服を、ジェイエードはきれいに受け流した。
「ご容赦ください。それから、彼の素性を知る女がおります。その者をばあやとして伴いたく存じます。ひとりにしてあれこれ吹聴されるよりは、抱きこんでしまったほうがよいと判断いたしました。許可をいただけますか」
頭上で交わされるやり取りを、僕は黙って聞いていた。
床に両手をつけた状態で、身動きひとつ許されなかった。
姫の許しが出るまで、口を利いてはならない、顔をあげてはならない。そう事前に言い含められていたからだ。
「あなたがそこまで言うのでしたら、いいでしょう」
ばあやを連れる許可がおりたときは、ホッとした。目をつぶって、なんとかため息をこらえる。
「さあ、もうお行き。エアリアンナ」
笑いを含んだ声だった。
「あなたには不自由をかけるけれど、わたくしが都へもどる目星がついたなら、そうね、褒美を与えましょう。ですからそれまで、耐えるのです」
逃げるには少し遅い。
城から使いがきたとき、用件など聞かずにとっとと逃げ出していれば、あるいは間に合ったかもしれない。
想像するだけでも、馬鹿らしい。
僕はこれから姫の身代わりとして僻地へ送られる。そして用が済めば秘密を守るために殺されるだろう。
付け焼刃ではあるが、姫になりきるための特訓を受けて、ドレスをまとった僕は、自分で言うのもなんだけど、まあまあお姫様に見えると思う。
でも、僕は男だ。それも成長期真っ盛りの。
露見するのは時間の問題だ。そう思ってはいたけれど……。
「待って待って待って! 無理だよ、どう考えても無理だ。それって、僕の故郷じゃないか!」
僕の悲痛な叫びを聞いても、御者席のメルリンダ(仮称)は顔色一つ変えなかった。
僕が姫のフリでドレスを着こんでいるのに合わせて、彼もメイド服を着ているが死ぬほど似合っていない。声を作る気も、化粧でごまかす気もない、堂々たる女装っぷりだった。もう、彼の存在が大問題だ。
メルリンダことジェイエード。筋骨隆々でキリリとした男前なのに。本当にどうして、ここまでしてついてきたのか。
「絶対にバレる。むしろなんでバレないと思ったんだ。このままじゃ首を刎ねられちゃうよ!」
「姫、ひとまず落ち着いてください。お言葉が乱れておりますよ。それにはじめる前から諦めるなど情けのうございます」
「言ってることは正しいけどぉ……」
「山道とはいえ誰が聞いているかもわかりませんので」
そうだ、姫は横暴な方だ。もしも自分の計画がはじまる前に頓挫したと知ったらどうなる。
僕のドレスに半分埋もれながら、長旅に疲れ切って居眠りしているばあやに目を向けた。
始末されるのは僕だけではない。
僕は息を吸い直し、気持ちを切り替えた。
「わかりました。メルリンダ。ええ、そうね。わたくしが取り乱してはダメね。向かう先がどこであろうと、わたくしはわたくし。姫としての矜持を失ってはいけないわ」
僕は自分に言い聞かせる。姫のプライド。
そんなもの、僕にあるわけがないのだけど。
「ご立派です。姫」
メルリンダはたぶん、ニコリともせず頷いていることだろう。




