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第54話 いつか死ぬのだから喜怒哀楽なんて無い方が楽

 魔族を下したとは言えまだまだ敵はやってくる。魔物も魔界の瘴気で狂暴に活性化しているせいでとても好戦的だ。

 森のあちこちからおぞましい咆哮がこだまする。


「たくさん来すぎだね、帰ってもらおうね」


「帰ってもらうって言っても……大人しくしてくれそうにないよ?」


「トゲトゲがお願いすればみんなわかってくれるよ」



 トゲトゲはヴィルの両の耳を塞ぐ。と大きく息を吸い込み、吼える。

 耳を塞いだところでトゲトゲの咆哮は全身骨身に響き渡り脳も軽く揺さぶられ目眩と耳鳴りに襲われる。


 その咆哮を聞けば全身に鳥肌が走り、体が勝手に震え上がる。いつか、どこか、遥か昔にその音を聞いたことがある、ような、知らない筈の恐怖が蘇るような────


 以降、森は静かになった。魔物は近寄って来なくなった。



 ──── 一方その頃“麓町 ティリェ”では


「あ……あぁ……一体何が起きているんだ……」


「ひ、ひぃ……っな、なんて恐ろしい声……! まるでこの世の終わりを告げるかのような……ああ、私たちは何てことを……」


「まだ、少年は戦っているというのか……神よ……彼を守りたまえ……」


 皆腰を抜かしていた。



 ──── 一方その頃ヴィル達は


「うわーっ!? ま、魔族がさらにいっぱい出てきちゃった! これじゃ切りがない……!」


「タダイマ先のトゲの鳴き声に着想を得まして、魔族の苦痛の叫びを聞かせれば戦意喪失してくれるのデハ、と」


「え、ま、まさか流石にちょっと可哀想になってき──」

「侵略者に情けなど不要DEATH!!“死苦罰苦(エイティシックス)”!」



 空を埋め尽くす魔族へ大鎌を翳し、短い詠唱は虫の羽音の群れのような不快な音を乗せて黒い風を巻き起こし魔族を通り抜けて行った



 ──── 一方その頃“麓町 ティリェ”では


「あれは……! まさか全て魔族だというのか!? これではまるで魔王が侵攻のしてきたあの日の……」


「そんな……あの数を相手するなんて……あぁ……神よ、どうして……」


「これでも、これでも助けを呼んではいけないのか……? 少年がまた血みどろになって戦っているかもしれないのに……我々は……」


 皆腰を抜かしていた。



 ──── 一方その頃ヴィル達は


 黒い風に飲まれた魔族達は振り払うように魔法を放つなどしていたが程無くしてボトボトと地に落ちてはその場でのたうち回り苦しみ始めた


 その叫びは喉の限界を越え、血を吐きながらなお叫ぶのを止められないほどで──


「ギィヤァァア゛ァァアッ!?!? 痛゛イッ痛ィイィィィッ!!??」

「グォア゛ァァアァッ!! 体ッ体ガァア゛ァァ!!?」

「助ケッェ゛、ダズゲデェッ!!」


「ひぇぇっ!? ごっごめんみんなぁ!?」


 翼が一心不乱に振り回され血と土煙が飛び交い、胸や喉を掻き毟る魔族、白目を剥きながら痙攣する魔族、自害を試みる魔族で地面は埋め尽くされた。そのあまりに悲痛で絶望的な光景にヴィルは謝らずにはいられなかった。



 ──── 一方その頃“麓町 ティリェ”では


「こっ、この叫び声は少年……いや、魔族か!? 本当にあの数の魔族を前に相手しているというのか!?」


「私達には想像もできないような壮絶な戦いが繰り広げられているのね……彼は諦めるつもりなんてなかったのだわ……」


「おい見ろ! 魔族達が撤退していくぞ! 少年が追い払ったんだ……! 彼は英雄だ、だが、もう帰ってきていい……帰ってきておくれ……」


 皆祈っていた。



 ──── 一方その頃ヴィル達は


「後続はみんな戦意喪失してくれたみたいだ……これで安全に進めるようになったね」


「敵に背を向けるとは愚かデスね、ワタシがアレらの動きを止めるのでトゲは焼き払ってクダサイ」

「わかったよお兄ちゃん」


「あれぇ!? 結局倒すの!? 戦意喪失のくだりは!?」


「戦意喪失した程度で見逃されるトカ思ってる魔族なぞ笑止千万!人間様の恐ろしさを身を以て分からせて差し上げマス!!“心停死”!」



 魔族達の動きはびたりと張り付けにされたように止まり、トゲは体を大きく膨らせて息を吸い込み────



 ──── 一方その頃“麓町 ティリェ”では


 空をも焦がさんとする炎の柱に腰を抜かしていた。


「撤退していく魔族を一網打尽に……困難な状況にありながら我々や後世を想って全ての魔族を屠らんとしているのか……」


「なんて優しい炎……彼への恩返し、私達の今後の人生全てを捧げてもきっと足りないわ……」


「ああ……だが我々にできること全てを彼のために尽くそう。少年と出会いへの感謝をこの町で語り継ごう……」



 ──── 一方その頃ヴィル達は


 小高い山を登り、山頂に広がる広大な大穴を見渡す。大都市がすっぽり入ってしまう程の巨大な穴には膜のように結界が張られている。

 巨大な魔方陣はキラキラと輝き、十分に機能していることを示しているが、数ヶ所から真っ黒な煙が立ち上っていた。


 煙の上がる部分、結界の綻びの側には何やら奇妙な形の案山子のような物が立てられており、一行はそれに近づいて確認してみる、と


「……!! こっ、これっ、人……!?」


「魔族が作った呪物デスかね。これが結界の綻びを助けているようデスが………ホウ、ホウ、ナルホド」



 逆さの十字架に張り付けにされた女性の遺体。

 体中に黒く歪な杭が打たれ、皮膚や臓器を使った装飾がされており、乾いた身体には赤黒い魔界言語の術式が張り巡らしてある。命への冒涜、見るに堪えない。


「フム、どうやら此処の結界を張った魔術師の一人だそうデスが魔族に拉致され“加工”されてしまったようデスネ」


「う……なんで分かるの……?」

「ア、イヤご本人が教えてくださいマシた」


「……あ、もしかして“居る”の!?」


「エエ、魂をも縛られ利用され、地獄の苦痛を味わい続けているそうデス…助けたいデスか?」


「助けられる、の……?」


「この呪物は此処を含め三ヶ所だそうデ、お誂え向きデスね。ワタシが“二人も居れば”すぐ終わりマス………ので、その呪いの杖でワタシを呼んでクダサイ、手分けシマショ♡」




 ──── 一方その頃バクは


「皆さん急いで急いで!手が止まってますよ!ほらもっとキビキビ働いて!」


「も、もう休憩させてくださいよ……」

「この人なんか急に動きがキレッキレになったな……」

「いや助かるんだけどな……急いでる時の会長そっくりだ」


「お喋りしてる暇があるなら此処を切り取って!はい!手が取れましたよ早く計測しちゃって!持ってって!どんどんいきますよ!!」



 ハチャメチャに急いで解体を終わらせようとしていた。

一話に使っていい一方その頃の用法要領を守っていない。

まだまだ続くのでよろしければ評価やブックマークをお願いします。元気になります

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