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第52話 長い物は勝手に巻いてくる

日常、平穏パートは上手く思い付かないのに戦闘描写になるとウキウキになってしまいます。どうしましょう

 ドレッドがヴィルに取り憑き勝手に雲と雪と魔に閉ざされた北方を救うと断言してしまい、早速大穴へと向かうことにもなってしまった。


 ブラックドッグを連れたヴィル、ドレッドとトゲトゲドラゴンは雪深い森を進む。


「ど、どうして僕に言わせたんだ……!」


「エ?ヴィルくんしか言う人居ナイじゃないデスか?」


「そうだけど……それはそうなんだけど……せめて色々と考えたり準備する時間を……」


「あの町の人はヴィルくんを助けるコトを迷いませんで死たヨ?」


「うぐっ」


「どうせYESと頷くならすぐデモ後デモ同じデスよ、我々ならばなおのこと」

「人のために悩めるお兄ちゃんは優しいね」


「……僕に、僕たちに出来る、かな?」



 ドレッド達が規格外に、異次元に強いことを知ってはいる。だがその力の片鱗しか見れていないことへの不信感がまだ残ることも事実で。

 彼らの召喚や扱いに対する悩みや迷いは未だに尽きない。


「お兄ちゃんがしたいと思えばどんなことでも出来るんだよ。トゲトゲはお兄ちゃんのためならどんなことでも出来るからね」


「マ、ワタシ達の力が如何程かと見せる機会があまり無かったデス死ね?今後の指標としてチャチャッと人助け死まショ」


「……つ、つまり、本当に雲を晴らすのも、結界を直すのもできるってこと?」


「出来るよ」

「出来マスよ」


「……そっか、そうだよね……なら、僕もやれることをやらなくちゃ……」



 頼るばかりじゃ居たくない。皆を扱うに足る力を身に付けたい。そのためならもう、死にかけることくらいは覚悟を決めておくべきなんだ。

 そのための“呪い”なんだ。


「……ところでバクに何も言わずに来ちゃったけど大丈夫かな」


「チョットだいぶかなり拗ねるくらいデスよ」


「拗ねちゃうか……」



 このこと教えてたら絶対率先してやりたがっただろうというのが容易に想像できた。なんだか申し訳なかった。


 ブラックドッグの感覚を得ているお陰で周囲の魔物の大まかな居場所や種類を把握できている。

 大型の魔物も居る。呪いの杖はまだ使いこなせない、使い時の温存のためにもここはなるべく静かに……


「てか、雪が深すぎて歩き難いデスね~!溶かしちゃいマショ!トゲ!かえんほうしゃ!」

「ばぎゅあ~」


「え、ちょ」



 トゲトゲはあの巨体へ姿を戻してのそりとヴィルの前へやって来ては体を大きく反らせ息を吸い込み、吐き出す。

 真っ白な世界が紅蓮に染まり、直線上の雪は蒸発し、土は溶け、木々は黒く崩れる。

 その熱と衝撃でヴィルは雪の上に倒れかかったが、気づけば土の上に転げていた。


 この森の木はけっこう背が高かったんだなぁ、と思った。


 銀世界は黒く溶け焦げて、それはもうとても歩きやすくなっていた。


「しょ、少人数で目立たないように近付く必要があるって言ってたよ~!? あああなんか沢山こっちに来るのが聞こえる~っ!!」


「ンなもん大穴で戦えばどーせハデになるんデスから一緒デスよ!ア、死骸が無いと不自然デスね死なせま死ョ」

「ボコボコにすればいいんだね、トゲトゲがんばるよ」


「おわああぁぁ~~っ!?」



 地響き、大きな足音が幾つも接近してくるし大穴の方向からはバサバサとけたたましい羽音と影が飛び立つのが見えた。あれが魔族なのだろう。絶対に


 木々を薙ぎ倒して大型中型の魔物がこちらへやって来た。

 ドラゴンに匹敵する咬合力を持ち狂暴な群れを率いる白い猿型の魔物、イビルエイプ

 鉄のような毛皮と甲殻を併せ持つ北方の狩人、ドラゴヴォルフ

 サーベルマンモスをも喰い荒らす飢餓に狂う巨体を誇る森の主、マウンテンポーラーベア

 神話の時代から語られる全身にたなびく白い毛髪、剥き出しの牙と爪、真っ赤な眼の異形、イエティ・ギカント────それどころじゃない様々な魔物が大量に押し寄せてくる


 のを、ドレッドとトゲトゲがバサバサと薙ぎ払いながら軽快に前へと進んでいく。

 トゲトゲの拳は魔物の腹や顔を撃ち抜き、屈強な二本の尻尾は大型の魔物をくの字にへし折り、爪は簡単に雪国仕様の分厚い毛皮と脂肪を切り裂いた。どれだけ魔物が束になっても、死角を取ろうとも、トゲトゲには届かず一方的な破壊が繰り広げられる。


 まるで背後にも目が付いてるかのように正確に、襲い掛かってきた魔物の頭を捕まえて、他の魔物へと放り投げ、まとめて火炎で焼き尽くす。

 敗走する魔物も逃がさず衝撃を伴う跳躍で行く手へ躍り出て、叩きのめす。


「運動するとあったかいね、お兄ちゃんも動くと寒くなくなるよ」


「あ、いや……うん、そうだね」


 動く間も無く魔物は僕の所にまでは来ないのだ。


 ドレッドは“死の宣告”を使わず、大鎌で魔物の首を刈り取る。死神や魔術師と聞いて思い浮かべる姿とは程遠い、精密かつ洗練された大鎌の扱い。身の丈ほどある鎌を軽々と振り回し魔物の攻撃を受け止め、弾き、僅かな隙を逃さず首を落とす。


 曲芸のように身軽な身のこなしで魔物の攻撃を避け、巨体を駆け上がりあっという間に頭上を取って切り払う。

 常に余裕を携えて、全身を使って大鎌で周囲を薙ぎ払う様は踊っているようだ。しかし骨の表情はどこか冷めて退屈そうだった。


「やっぱり魔物相手じゃノれませんネ~魔族とやらに期待する死マスか………知性はあるんデスよね?」


「う、うん。下位の魔族でも人間とそう変わらない知性や言語能力があるらしい……けど人間より力も魔法の扱いも長けてるから、魔族の討伐は難しい……って言われてるんだけどね」



 既に察しは付いてしまっているし、力も魔法の扱いもこの上なく長けているドレッドの前で魔族について語るのはなんだか忍びなかった。


「ワタシは力比べなんぞに期待はして無いデスよ。なんせワタシより強いヤツなんて早々居ませんからネ」


「え、じゃあドレッドの期待って……?」



 羽音が近付いてきた。コウモリのような真っ黒な翼、槍のような特徴的な細長い尾、ぐねりと歪に湾曲した角。

 痩躯からは想像もつかない程の力を秘めているのが気配から伝わってくる。生まれた時から人間さえ真っ二つに引き裂く力を持っていて、その力を悪意や欲のままに振るうことを良しとする種族


 ────魔族

 一括りにされているが魔界に属する種の総称。



「そりゃ蹂躙、鏖殺した際にカタルシスが得られるかどうか、デスよ。死を以てワタシに生を感じさせテくれるのは叫喚が巻き起こる瞬間!イヤハヤ正義(合法)とは素晴ラシイ!」



 ……この場合はドレッドを指す方が正しいかもしれない。

せや戦闘を増やせばええんや

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