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第41話 君だけのオリジナルお兄ちゃんを作り出そう!

いいねやブックマークをたくさんありがとうございます。まだまだ続きます。楽しいので。

 盗賊団“ジュグーム”の縄張りにあった巨大な洞窟を探索するヴィルとトゲトゲ。洞窟内は盗賊が設置したであろう魔石ランプで灯るい。

 ジュグームは元々ここにあった“ダンジョン”を利用しているらしい。ダンジョンには魔物が湧くポイントがあるが、そこには魔物を捕らえて動きを封じる罠があった。


 ここで魔物を一方的に倒してランクを上げつつ隠れ家に……そして、殺した人をダンジョンに食べさせて処理もしていたのだと。探索をして大まかな考察をした。


 そこそこ歩いて気付いたことがもう一つ。入って暫くの地点と現在の地点で洞窟内の質感が違う。


 僕たちは入口からではなく“出口から入っていた”。

 別の場所から伸びるダンジョンを掘ってあの縄張りにまで貫通させた、だから突然ジュグームが癒町(ルタピス)の近くに現れたように見えたんだ。


「うーん……町を狙ってるのは確かだと思うんだけど、どうしてこんなバレるように大きな縄張りを作ったんだろう……」


「いっぱい考えるお兄ちゃんはとても賢いね、まるで盗賊博士だね」


「盗賊博士!? う、いや、盗賊の視点で考えるなら……ここは警告か、陽動……なのかな?」



 “ジュグーム”は王国騎士をも恐れない非常に好戦的で凶悪な盗賊団。集団戦闘では冒険者が寄せ集まった程度では相手にならないとも言われる。


 それがこうも目立っているなら癒町への何かしらのメッセージのように思える。が、わからない。何を伝えたいのかが……



「お兄ちゃん危ないっ」


 トゲトゲはヴィルの前へ出ては身を丸めて何かから庇う。甲高い、金属が削れるような音と、水飛沫。


「! ト、トゲトゲ大丈夫!?」

「大丈夫。お水が飛んできたよ」


 攻撃が止み、恐る恐るトゲトゲの向こうを覗き込む。固い地面に抉れた跡が残されている。お水どころの騒ぎではない。


「へぇ……ボクの“流刃”を防ぐなんて、イイ甲殻じゃないか……」



 視線の先、何処からともなく湧いた水が渦を巻いて球を象り、その中から現れたのは目元に隈を浮かべ顔色の悪い紺髪の長身痩躯、鋭い爪、頭に伸びる曲がりくねった角、細長い尻尾────竜人だ。


「きみもドラゴン?細長くてキレイだね」

「攻撃されたのに褒めちゃうんだ……」


「……ハァ、オマエみたいな甲殻種に言われると嫌味にしか聞こえないね……バカみたいな図体と頑丈さだけのオマエらのせいで魚鱗種だとか蔑まれ続けてるんだぞ……わかってないんだろうなぁ」



 ものすごい負のオーラを感じる。妬み、恨み、怒り。

 しかしトゲトゲは怯まないどころか不思議そうにしている。


「ウロコ、きらきらでキレイなのに。そんなに酷いこと言う人いるの?よくないね」


「……随分、お花畑な思考してるんだな。さぞかし恵まれた環境で可愛がられてきたんだろうな……腹立たしい、オマエらなんかにこの憎しみが分かられてたまるか……っ!!」



 幾つもの水の玉が浮かび上がり、超高水圧で水が放たれる。洞窟の岩肌をも容易く抉り取る威力があらゆる方向からトゲトゲに襲い掛かる。

 トゲトゲは拳の連打で全て打ち払う。


「──そうやって、助けてもらえないフリ。してたの?」


「は……!?」



 トゲトゲの仮面と思われていた“顔”が口を開く。

 嵐のような吐息が水を吹き飛ばす。


 水気もどこかへ行き、洞窟内はカラッと乾き竜人もいなくなっていた。トゲトゲの吐息は洞窟を突き進み風の音になってずっと聞こえる。

トゲトゲの背に隠れていたヴィルはなんとか飛ばされずに堪えられたが


「助けてもらえるの、タマゴと生まれてちょっとだけだよ」

「ふ、吹き飛ばしたの?」


「わかんない。いなくなっちゃった。いこ」

「そうだね……奥にも盗賊がいたらみんな吹き飛んでそう……」



 また歩き出そうとしたその時、トゲトゲの真上、洞窟の天井に大きな亀裂が走り、大量の水が流れ落ちてきた。巨大な滝に呑まれるトゲトゲ。


「あばばばば」

「うわーーっ!? わ、湧き水!?」



『────“氷瀑凍牢”』


 トゲトゲが滝から出ようとした瞬間に滝は瞬く間に凍り付きトゲトゲの身動きを封じてしまった。


「ううーさむい………」

「うわわ寝ちゃダメだよ起きて……っがぼ!?」


 手足や耳の先が痛む程の強烈な冷気。眠そうなトゲトゲを起こそうとヴィルが近付くと頭を水に飲み込まれ呼吸を奪われる。


 水の玉はヴィルの頭に張り付いてどれだけもがいても剥がれない。



『“水流同化”……ボクの一族秘伝の魔法さ。体を水と同化させて自在に操作ができる……コイツが溺死するのが嫌なら大人しく言うことを聞くんだな』

「っごば、っ!」


 こんな魔法があるなんて……。相手が水そのものでは物理的な干渉は無意味。召喚獣では有効的な手が無い。

 トゲトゲの炎ではヴィルごと沸騰させてしまうだろう


 トゲトゲはヴィルが人質にされたのをみるや否やキュッと瞳孔が細く、目を見開いて。無理矢理に氷の中から両腕を脱出させ、手を合わせて、指を組む。まるで祈りを捧げるような────



「ダメだよ、お兄ちゃんに手を出すなんて許されないんだよ─────“お兄ちゃん魔法”を使うしかないね」


「ががぼっ!?(お兄ちゃん魔法!?)」

『お兄ちゃん魔法!? う、ぐおおっ!?』

「もがぼっ!?(効いてる!?)」


 トゲトゲの謎の“お兄ちゃん魔法”が光を放つと水と同化した竜人は苦悶の声を上げ始め、水の玉が不安定に揺らぎ出し、やがてヴィルは解放されて地面に倒れて咳き込む。


「っぐ……オマエ、ボクに何をし……え!?」


「っがほっ! げほっごほっ……! はぁ、い、一体なに……え!?」



 ヴィルが背後の声へ振り向くとそこには青髪の竜人の、少年。短い二本の角、青い鱗、ふっくらした尻尾、半ズボンから覗く健康的なひざ小僧。くりくりの瞳。まだまだあどけなさのある少年が居た。


 これが、“お兄ちゃん魔法”!?

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