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第31話 病院ではお静かに

2章に突入しました。のんびり毎日気味投稿します。ここまで愛読してくださっている方々にありがとう

 “冒険街 ドラゴネス”から旅立ち

 “隣町 メレフ”でドレッドと出会い

 “豊穣都市 シノノメ”で二人目の追っ手を撃退した


 一行は森林を左右に携える綺麗に整備された道を歩いていた。

 ここはいつでも人通りがあって安心する。


「あ、見えてきた。“癒町 ルタピス”…町にしちゃ結構大きいね?」


「医療は発展の速度がすごくて、研究施設とかもどんどん建って町が広くなってるんだ。治癒術士系の専門学校もあるんだよ」



 町の門へやって来てはギルドプレートを提示する。ドレッドは人に見られないのでスルー。


 門を潜って、医療特化の町と聞いて真っ白を想像するかもしれないが意外にも淡い落ち着いた色遣いが建ち並び目に優しい。冒険者や一般人に多く紛れる白衣を纏った人達が印象的だ。


「傷や状態異常に効く温泉もあるから冒険者も多いんだ」


「へぇ温泉、源泉かけ流しなら興味ある」

「流石に医療特化を謳ってるんデスから湯は取り換えてるで死ョ~?」


「え……取り換えないことなんてあるの……?」


「半年取り換えないと湯の中の菌が3000倍くらいになるんだってさ」

「その事件聞いてからもう家の風呂シカ信じられなくなりました死ね」


「ドレッドお風呂入るんだ……」


「やはり病院が多いだけあっテ死神もいっぱいいますネ~」


「いっぱい居るの!?」



 ヴィルの用事があるのは町の隅、奥まって森林に囲われた所にある四階建ての病院。常に綺麗な外装、庭では患者衣の子供達が遊んでいる。


「ここは小児科医院なの?」

「うん、それも難病や未知の症例の子をたくさん預かってて、多くの病や呪いの解明をしてきた世界的な権威のある病院なんだよ」


 病院へ入れば早速子供達の楽しげな声と走り回る姿が見れた。一見すると元気そうだが、変異した肌や人ならざる物が突き出ている子が少なくない。


 受付の看護師はヴィルとは顔見知りのようで、軽い会話を済ませて病室へと案内される。

 階段を上がり賑やかな二階三階を過ぎて四階へ。


 窓越しの柔らかな日差しが静かな廊下を満たしている。

 角から三番目の部屋を看護師がノックし、ドアが開かれる。



「アイン、お見舞いに来たよ」


「……、……」


 ベッドの上、上体を起こした体勢で窓の外を眺めていた少年がヴィルの声を聞いてゆっくりと振り向く。

 優しい微笑みを浮かべる頬は痩せこけ、患者衣から覗く棒のような手足には何本もの管が差し込まれている。


 ドレッドは空気を呼んでかあまり近寄らずドアを背に寄りかかり、バクはアインの様子に驚く素振りもなく柔和に挨拶をする。


「えっと、この人は新しい仲間のバクチクさんだよ」

「やぁ初めまして、よろしくね」


「……」


 アインはバクの方を見て微笑み、本当に小さな動きでお辞儀をする。


「……一年前までは少し話せたんだけど、最近は具合良くない、かな」


「そっか…じゃ元気が出るように昨今のヴィルお兄ちゃんの活躍を聞かせてあげようか」


「え、う、わ、恥ずかしい……けど、兄ちゃんいっぱい冒険したんだよ」



 紙とペンを出して絵を描きながら“竜の背”から追い出されてしまったことも、バクに助けてもらったことも、召喚獣が強くなったことや、魔物と戦ったこと、特訓したこと……今まであったことをアインに話した。


「ヴィルくん絵うまいね~?意外な才能が明らかになった」

「か、家族の前でしか描いたことなかったから恥ずかしいな……」


「……」


 アインには喋る気力が無いけれど、楽しんでくれていることがヴィルには分かった。


「そんじゃ僕は外に出てるから、兄弟水入らずで少し話しなよ。またね~アインくん」


「ありがとう、バク」

「……」


 バクは手を振って、ドレッドを連れて病室を出た。



 ────階段の踊り場。

 窓を背にヴィルを待つ二人。


「思ってたよりだいぶ元気の無い弟くんだったね」

「そうデスね、ワタシのことが見えてました死ね」


「じゃあ近い内に?」

「ワタシ、彼に近寄らなかったんじゃないんデスよ」


「あれ、空気読んでたんじゃなかったの?」

「死神が見えるほど死が定まっているのに“死”が近寄れない、というのは、ネェ?」


「同業者は居るのかい?」

「居ますネ」


「どの辺?」

「四階にダケ」


「そら権威があるワケだ、あははっ」

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