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第26話 パクリとオマージュとアレンジの違い

「────……はっ!?」


 飛び起きる。見覚えのある天井。見覚えの無い衣服。

 状況の整理。バクとの戦闘訓練。最後の記憶は靴底。


 ……気絶した?


「おはようございマス?」

「わっ、あ、ドレッド……僕あれからどうなったの?」


「そりゃもう説明するまでも無く完封負けで気絶したんデスよ。服は汚かったので捨てま死た」



 ドレッドは僕の居るベッドの脇の椅子に足を組んで腰掛けなにかの本を読んでいた。


 服の話を聞いてまたハッと慌てて全身に触れて確めるけど痛みも傷も無い。まるで何も無かったかのようなまっさらな体。


「……バクは?」


「ヴィルくんの新しい服を買いに行きま死たよ。起きたら今日もアレをやるとも言ってました死ね」


「アレ……って、もしかして、やっぱり僕が勝てるようになるまでやる感じ……?」


「逆に、やらないんデス?」


「……その、やっぱり殺すなんて、そこまでしなくても……」



 大丈夫と言えど人を手にかける抵抗は相当なものだ。ただ強くなりたかっただけ。殺し方すら想像もつかない。


 俯いてぎゅうと拳を力をこめていたらドレッドはまたも呆れた様子で本を閉じる。


「キミなんかは死ぬ気で、殺すつもりでやらないと誰にも勝てないって話デスよ。弱いクセにな~にを贅沢に手段を選んでるんデスかね~?」


「うぐ……そう、かもしれない、いや、そうなんだけど……仲間を殺す経験なんて大丈夫でもしたくないよ!」


「…バクチは楽しんでま死たケドね?ヴィルくんと戦うことも殺し殺されるコトも。アレは戦いと言うよりはお遊びみたいなもんデス死ね」


「え……た、楽しんでる……? 死んじゃうことも?」


「恩があるなら、仲間だと思ってるなら盛大にぶち殺してやるのが礼儀ってもんで死ょう」


「そんな礼儀はないけど……そうするにしても、やり方なんてわからないよ……」



 するとドレッドは立ち上がってはヴィルの居るベッドに腰掛け直す。骨だから軽くて軋みも沈みもしない。


「じゃ、ワタシと一緒にアイツを殺す作戦を立てればイイじゃないデスか?ほっぽられて癪だし暇デスし」


「えっ、いいの……? てっきりドレッドの手を借りるのはダメなんだと……」


「ダメなのは戦闘の時だけデス死ね?事前にできるズルはやっておいた方が良いデス。キミが正攻法で勝つなんて何年やっても無理に決まってますカラ!」


「ぐぅ~……耳が痛い」



 ──ドレッドとヴィルの作戦会議が始まったのを部屋の外で立ち聞く影。


「…やっぱお楽しみにしとこ~っと」


 バクは足音を立てずにひょろりとその場を後にする。

 作戦を盗聴するのは常套手段だが、今回は見逃してやることにした。


「ヴィルくんの好きな食べ物とか聞いとけばよかったなぁ」



 ──────二回戦目


 例の砂浜で向き合うバクとヴィル

 前回と違うことと言えば魔物の死骸が無いことと、最初から多くの召喚獣が居ることと、ヴィルの背にくっつくドレッドくらいか


「ドレッド付いてるのはズルじゃないっけ?」


「たまたま此処に居るだけじゃないデスか~妨害も手伝いも何もしないデスし~?問題無いデスよね」


 にっこり微笑むバクとにっこり笑うドレッド。怖い

 僕の肩に重さの無いドレッドの手が肩にかかっている、これだけで前回よりかなり心の余裕ができている気がする。


「…さて、ヴィルくんは僕のために一体どんな作戦を用意してくれたのかな」


「……!?」

「ただの揺さぶりデスよ、一々気にしないでクダサイ」


「う、うん」


 一拍の沈黙。先に動いたのはバク。

 ヴィルの瞬きの隙に距離を詰めてきた──ヴィルでは反応できない速度もブラックドッグなら対応できる。


『ザコの出し惜しみはただの敗因デス』

 作戦その1、


「うおっ」


 砂の中から飛び出す無数のブラッドスライム達の触腕、これは一行が砂浜に来る前に仕掛けておいたものだ。召喚した瞬間を見せないことで相手に対応させない不意打ち。

 しかしバクは一瞬の迷いも無く、囲われる前に飛び上がって脱出


『失敗は大前提デス』

 作戦その2、


 ブラッドスライムの檻を上へと逃げたバクを待ち伏せ、大容量の粘弾で狙い打つ。


「おっと!あははっ良い入れ知恵してもらったじゃないか」


「バクから学んだこともあるよ……!」


 バクは宙で身を翻して粘弾すら避けてしまったがそれも折り込み済み、粘弾はバクを通り過ぎて背後回った瞬間に大きく広がり包み込んだ。

 発射したのは粘弾ではなくブラッドスライムそのもの


 このまま捕まえて溶かしてしまえれば勝ちではあるがバクをよりにもよってそんな方法で殺してしまうというのは嫌ではある


 それは勿論杞憂に終わった

 包み込まれてから間髪入れない爆発、バクは自身さえ巻き込むことに躊躇いのない発破でブラッドスライムを散らして脱出した。

 くるりと一回転して砂浜に降り立つ。そう簡単に取らせてはくれないのは知っていた、信じていた


「うん、うん、いいね。飲み込みが早いのは君が本気だからかな」


 降りてきた瞬間を狙ってブラックドッグが四方から襲い掛かるがバクの踏み込みの衝撃で牽制される。

 飛び上がった砂越しにブラックドッグ達をナイフが貫いた、バクはナイフを蹴って正確に飛ばしていたのだ。


「っぐ、うぁ……っ! あぁっ!」


「ひゅう、覚悟も決まってきたね。痛みの隙を減らさないとお話にならないもんね」



 骨を掠め肉が断たれていく感覚が体中を突き抜けて一瞬硬直するもヴィルは無理にでも声を出して体を動かす。

 だがバクも一瞬の隙を見逃さず距離を詰めてくる。


 ────そこを狙う

 バクが飛び越えた場所、真下からブラッドスライムが飛び出す。

 踏み込んだ足の真下だと感触で潜ませていることがバレるので網目状に砂の下に張り巡らせ“賭け”に出た。


 バクの驚異的な反射神経はブラッドスライムが砂中から僅かに身を覗かせた瞬間には飛び上がる姿勢になっていた、が、やっと此方が半歩だけ上回った。


 ブラッドスライムの触腕がバクの右足を捕らえた。一度触れれば高い粘度の触腕を取り除くのは困難、患部から侵蝕し続ける……帰還させられさえしなければ


 そこでブラッドスライムの核を更に深く砂中へ潜り込ませ、守りを固めるべく他の個体を集めて盾にする。

 今の弱体化が入っているバクの力では核を破壊する方法は無いはず



「じゃあもう要らないや」


「えっ……っ!?」


 血が宙を舞った。

 バクは靴底に仕込まれたナイフで捕らわれた右足を切り落とした。

 足の断面を振るい、ブラックドッグとそこに乗るヴィルの顔目掛けて血を振り撒く。視界と嗅覚を同時に奪われる。


「あはは、折角だし共有してから終わろうか」


 真っ赤に閉ざされた視界、顔のすぐ側をバクの声が通り過ぎて行った。


 不意に体のバランスが崩れる。足が、熱い?

中々長く続いてます。バトルは書くの楽しくてつい長くなりますね。面白かった、続きが気になったらぜひ評価やブックマークをお願いします!

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