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第18話 報連相のどれかを抜いとく

 ヴィルを捕まえに来たクジマをどうにか撃退し、一行はさっくり大通りに面した宿を取り、荷物を整理してから依頼を受けるべく冒険者ギルドを目指す


「あれ、この都市はギルド二つあるんだ?」


「広いから海と山の依頼がそれぞれ納品しやすいようになってるんだって。ここからだと……山門のギルドが近いよ」


「ん~…僕とドレッドは観光しながら海門の方行って来るよ。僕が代筆してやんないとね?」

「ムカつく~ヨロ死クお願い死マス~クソ~」


「そのまま依頼やって来るから、ヴィルくんも暗くなる前に宿に戻ってな」


「わかった、またね……」


 それなら僕も一緒にとも思ったけど、二人で話すこともあるのかなと気を使って別々に行動することに。

 人は多いがスリやタカりも多い治安なのでブラックドッグを召喚して念の為の警戒をしつつ山門の冒険者ギルドに向かう。


 以前バクから『人混みを通るなら敢えて真ん中を通るといいよ』と教えられていたのでその通りに。暴漢や追っ手に路地に引っ張り込まれたり壁に追い込まれたら逃げられないからだ。

 体も気も弱そうなヴィルは常に悪意にとって良いカモなのだ。


 大きい人の後をついていくようにして無事に山門の冒険者ギルドに辿り着く。

 都市のギルドは規模も大きい。宿と食事処も兼ねていて非常に活気がある。シノノメの古今東西多種多様な料理にも興味はあるが今は依頼を優先したい。


 依頼書が貼り出されているボードを眺める。上に貼られている依頼ほど難しく、右に貼られている物ほど報酬が高い。

 その日に誰にも取られなかった依頼書には下部に斜線が引かれていく。斜線の多いものほど人気が無かったりワケありだ。

 報酬重視で選び依頼書を剥がしていく。


・龍胡桃の採集(山林全域を推奨)

・鬼涙山椒の採集(北側山林を推奨)

・紅香鹿の狩猟(山林全域中腹を推奨)


 依頼書にはざっくりとした情報が記載されている。より詳しいことは他だとギルドの受付で聞けるが、此処だと別の窓口にて料金を払うことで教えてもらえるらしい。ヴィルにはブラックドッグが居るのでその必要は無い


 近くの食料品露店で目的の品の匂いをブラックドッグに覚えてもらう。ブラックドッグも匂いを嗅ぐとカッ!と牙を剥く。レッサーファングだった頃と変わってなくてなんか安心する。

 因みにだが、当然店で買った物は納品できない。店売りしている物は大抵加工済みだからだ。



 ────ブラックドッグの案内についていきながら山林を見て回る。海からの風が抜けてきて爽やかな場所だ。


「ヴォンッ」

「あっ、あれかぁ……思ってたより大分高いところにあるなぁ」


 ブラックドッグが高くを見上げて一吠え。ヴィルも見上げてみれば高い木々に絡み付く太い蔦の頂上付近に“龍胡桃”があった。


 通常のクルミと違い木ではなく蔦に生り、実も地面には落ちてこず高い所にあるままに果肉が腐る。

 中型~大型飛行生物に食べられることで生息地を広げているんだそう。この様子から“龍”と名につけられたんだとか。


「よし、新技を試す時だ……! “血濡れの同胞よ、我が声に応えよ”!」


 召喚したるはブラッドスライム。野生のスライムと戦った後にイメージを練り続けていた新技“粘弾”。遠距離技があれば心強いとずっと考えていた。


「ブラッドスライム、“粘弾”だ!」

「ヌチョッ」


 ブラッドスライムは砲身のように体を伸ばし、その先端から見事“粘珠”を発射──したが飛距離が及ばず、宙をUターンして地面に落ちた。


「あれっ……も、もう一回!」

「ヌチョッ」

「う~ん? もっと粘液を減らすのかな……?もう一度だ!」

「プチョッ」

「あ、あれぇ~!?」


 砲身を絞れども、弾を軽くしても結果はあまり変わらず、今回は諦めてブラックドッグに木を登って龍胡桃を落としてもらった。


「いいアイデアだと思ったんだけどなぁ……でも、攻撃としてならきっと強力なはずだ……」

「モチョ…」


 龍胡桃を拾って袋に詰め、十分な量が取れたら次の目標へ向かう。


 次に訪れたのは巨大な反り立つ岩壁の下。見上げると高く反った部分に垂れるよう生える低木、あれが“鬼涙山椒”の木だ。

 流石に反り立つ足場ともなるとブラックドッグでは難しく、今度こそブラッドスライムの活躍の番だ。


 粘着質な体は岩壁にしっかり貼り付いて、ゆっくりながら危なげなく目的地に辿り着く。

 細い触腕を伸ばし、実を支える細い枝だけを溶かして地面に落とす。それを下で待機していたヴィルが拾う。


「うっ!? ……っっく! 目と鼻に来るッ!?」


 ビリッと鋭い刺激が鼻の奥まで駆け抜ける。刺激的すぎて爽やか過ぎる、これはもはや激臭。ブラックドッグはヴィルからめちゃくちゃ離れて逃げていた。


 世に出回る鬼涙山椒は加工によって強すぎる香り成分を落としている。生の香りは涙を出さずに居られないほど、これが名の由来になっている。と後で知った。


 これも十分な量を拾って袋に詰める。支給された袋が二重だったのはこの匂いのためか。

 袋の口をぎゅうぎゅうに締めてもブラックドッグとの距離は縮まなかった。もう臭わないのに……


 残すは“紅香鹿”の討伐。これは単純にブラックドッグ達に倒してもらうのみ。


 5頭召喚し、走らせる。心なしか僕から離れてく速度が速い気がした。そんなにか

 先導役の子に小走りでついていく。マナ切れによる帰還を防ぐ為にも離れすぎないようにする。


 ────その時、すぐ真横の茂みが大きく揺れる音、『しまった』と思う間も無くソレは──



「あ、ヴィルくんやっほー…うわすごい匂い」

「うわぁっ!? ……な、なんだバクかぁ……ビックリした……」


 バクだった。海門側で依頼を受けて山門側の山林に居るとは如何に。完全な不意打ち。


「ちょうどいいや、これ持ってってくれない?これから山登るのに邪魔んなっちゃってさ」


「う、うん、いいけど……これ何?」


「依頼じゃないんだけどなんか珍しそうだから拾ってみたの。ついでだし君が拾ったってことでそのまま換金しちゃってよ。じゃ、またね」


 そう言ってバクはサッと緑の中に消えていった。

 渡されたのは白く淡く光る不思議な花や揺らすと鈴のような音を出す花など、確かに珍しそうな草花の束。なんか持っているのも緊張する。



 ────無事に紅香鹿を狩り終え、亡骸はブラックドッグ達に引っ張ってもらいながら山の麓のギルド中継所に全て納品する。ここで検品し、報酬確定証書をもらうのだ。


「ん~イイ質の鬼涙山椒だ! コレを採ってくれる人が中々居なくてね……ほお、この紅香鹿も若くて立派な個体だ、ちょっと傷が多いけど高く買い取れるよ!」


「ありがとうございます、あ、あとこれもいいですか?」


「はいはい見せてね~……ん? なん……んっ!? えっこれ?」


 陽気な職員が楽しげに検品してくれる中、バクから預かった草花も差し出すと職員の気さくな笑顔が消えていき、何やら本を取り出し草花と本とを交互に凝視しつつ素早くページを捲る。


 さらには他の職員数名を呼びつけて品を眺め何やら相談を始めた。


「え? え……?」


 何も知らないヴィルは困惑するばかり。なにかとても不味い草花だったのでは? 注目されると途端に嫌な汗をかいてしまう。どうしよう騒ぎになったら(もうなってる)


 おろおろと結果を待っていたら職員達が一斉に詰め寄って囲って来ては陽気だったな職員がヴィルの両手をガッシリと包むように掴んだ。



 あ、僕これ逮捕された?

いっぱい書けて達成感があります。もっと書くのでぜひ評価やブックマークをお願いします!テンションが上がると一日三話更新の日もあったりします!

読んでくださりありがとうございます

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