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第15話 序盤にファストトラベル全部開けとく派

地名が無いのはそろそろ厳しいと気がついたので今さらながら名前をつけてみました。

最初の街は“冒険街 ドラゴネス”(1話冒頭に加筆)

イノシシ倒した所は“隣町 メレフ”です。

 ──── 一方の“竜の背”拠点では



「クソ……面倒だな」


 執務室にはクランリーダーのルキと古参メンバーが数人。皆眉間にシワを寄せ、空気が重く張り詰めている。


 先日の“斥候(スカウト)”トーカス絡みの事件も“竜の背”の評判を貶めいまだ悩みの種であるが、芋づる式に“竜の背”所属の新米冒険者パーティーが各地でトラブルを起こしていたことが掘り下げられ露呈した。


「おいルグナ、教育役の務めに不備は無かったのか? 何をどう教えたらこうなるんだ」


「オレは……主に戦闘指南をしてただけだが、皆とは交流を通じて冒険者の心得を教えていたし、少なくともオレの前では皆素直で、気配りもできる奴らだった……!」


 “闘士(インファイター)”のルグナは拳を握り締め、歯を食い縛り辛そうに俯く。それを聞いてルキはわざと聞かせる大きな溜め息をついて頭を抱える。


「つまりはまんまと新人共のおべっかで気持ちよくなってたってことだな……お前の責任も重いぞ」


「な……ッ、教育は連帯責任だろ! “竜の背”は人数が多いんだ、オレだけが悪いなんてことあるか! お前達も皆に気を配って指導していればこんなことには!」


「何時からそんな泣き言を言うようになったんだ? ……黙っていろ、まだ問題は山積みだからな」


 ルグナの不満を無視しルキが話を続けようとしたところ執務室のドアがノックされ、報告を聞くために入るように促す。


「例の件に関係するであろう情報を新たに手に入れました」


「確かな情報か?」


「はい、隣町メレフで大量の害獣を駆除し話題になったのが一人の“召喚士”の少年だった、と。容姿の情報も一致しているので確かです」


「なら我々を避けてさらに西へ逃げるだろうな……先には魔法の本場、森林都市もある。ドルーシはメレフへ、テンエイは都市へ向かえ」



 “斥候”達が返り討ち遭ったのを警戒し“重装兵(エイジス)”のドルーシと竜を駆り高速移動が可能な“竜騎士(ドラグーン)”のテンエイに命令する。


(何でヴィルなんかのことでオレが出なきゃならねェんだ! お前が直接行きゃあ早ェだろうが)


(なんて不利益、無意味な時間なんでしょう……僕の貴重な研究時間をこんなことで割かせるなんてそれこそ損失だ!)



 二人は気乗りしない様子だったが文句は言わずに了承した。



 ──── 一方のヴィルは東に大きくUターンしていた。


 深い森と野山を越えていくルート。まず人は通らず目印は無いが手付かずの豊富な魔法植物が繁り、それを採集しながら進んでいた。


「次行くとこってどんな所~?」


「“豊穣都市シノノメ”だよ。海と大河と山に隣接してて食べ物が豊富で貿易も盛ん……食材になる魔物を狩る仕事がとにかく多くて重宝されてるらしいんだ」


「へぇ、そりゃ楽しみだね。稼ぎ時なら僕も一肌脱ごうかな」

「えー楽しそうデス、ワタシも冒険者になりま死ょうカネ?」


「ド、ドレッドも!? その顔で……?」


「失礼ナ!」

「失礼じゃないでしょ流石に事実だよ」


「仮面でも買って付けてりゃ大丈夫デスよ」

「でも血液検査あったよ?」

「マ?」


 二人はよく喋るので鬱蒼と同じ景色の続く森の中でも賑やかで楽しく感じられた。

 “竜の背”の初期、本当に短い間だけどメンバーとこうして一緒に冒険をしたことがある。あの時は僕を含めてみんなの仲はよかったと思う。


 僕が弱かったから、強くなろうとしなかったから皆に捨てられた、──悪いのは


「ん」


「え?」

「そこ、めちゃくちゃ滑るから掴まっていいよ」


 バクが手を差し出してきた。

 苔と泥のぬかるみ、僅かに坂になっている。


「ありがとうっ」


 自分だけの冒険ができるなんて思ってなかった。だから今、一緒に冒険をしてくれる仲間がいる、それだけで十分だった。



「ところで何で徒歩なんデス?ワンちゃん乗るとか飛べるヤツ召喚しないんデスか?」


「それは、その、こうやって誰かと歩いて冒険するのも夢だったんだ……二人のお陰でランクが上がって体力がついたから歩くの楽しくて」


 夢を語るのはまだ怖くて気恥ずかしくて声が小さくなる。

 “適性”が無いと夢を見ることも叶わなくて、笑われて、いつしか語らなくなっていた。


「わかるなぁ、歩くのってまた違う楽しみがあるよね。自分の力だけで来れたって達成感っていうのかな。ヴィルくんは案外登山とか好きになるかもね」


「アー、オープンワールドで序盤にマップ制覇してく感じデスかね、それなら分かります。自由だからこそあえて不便を選ぶのも一つの楽しみ方デス死ね」


「ドレッドのはちょっとよくわからないや……」


「でもさ、“僕ら”が居るからこその特別な、君だけの体験をするのもありなんじゃない?」


「特別な……?」


「ドレッド、ちょっとヴィルくんを僕に乗っけて。あ、靴は脱がせて」

「えっ」

「軽いデスね~!もっと食べた方がいいデスよ?」

「うわっわ、えっ、何!?」


 ドレッドはヴィルの両脇に手を差し込んで持ち上げ、余った2本の腕で靴を脱がす。


 そして背中で待ち構えるバクにヴィルをセット。背負う形になった。


「もっと近づいて、僕の首にしがみつくでもしないと腰が折れるよ」


「えっ!? も、もしかして走るの? このまま?」

「どうせほぼ丸一日森の中なんでしょ?同じ景色も快速で見ればきっと楽しいよ。行くよ~」


「待っ」



 止まってくれそうにも下ろしてくれそうにもないので大慌てでバクの首にしがみつく。

 加速は僕を気遣ってか緩やかめだったけど、あっという間に景色が通りすぎて行く。木々が避けてくような光景。

 川も崖も軽々と飛び越えて、森を抜けて草原に出れば驚いた草食獣の群れが駆け出して、それすらも追い越して

 雲も見たこと無いくらいの早さで過ぎ去っていく。


 圧巻の景色からふ、とバクの近い横顔を窺う。相変わらずな微笑み。

 僕の視線に気が付いてバクも視線を向けてきた


「どうだいお客さん、快適な旅も悪くないだろ?」

「っうん……! すごいよ……!」


「森を歩くのに飽きたって言えばイイじゃないデスか」


「あはは、かっこつけたいお年頃なんだよ、僕」



 休憩を挟みつつ、駆け抜ける。徒歩なら二日程を予定していたけど何と三時間でシノノメに到着してしまった。


「いや、っま……流石に、疲れた……」


「でも確かに体力ついてたね。前の君ならもっとぐたぐたになってだろうし?」

「くたくただよ……」


 起伏のある地形を越える時とかなんかに酔ったり意外と体力を持ってかれた。僕が酔わなければもっと早くについてた。


 呼吸をすると今まで訪れたどの場所とも違う空気を感じられた。見上げるとうず高く積み上がる鮮やかな色とりどりの建物。色んな種族の文字が並ぶ。

 人がとても多く、食べ物の店がずっと奥まで連なっている。


「実家のような安心感がありますネェ。このごちゃ混ぜ感」

「それ。料理屋と肉屋がやたら多いとことか似てる」

「ワカル~~」


「料理屋と肉屋が多いとこが似てるの……?」


「空気が肌に合います死ね」

「ドレッド肌無いでしょ~」

「もうずっと此処で働きま死ョうよ」


「旅が終わっちゃうよ!?」


 観光の前に一休みすることにして、都市を一望できる高い所にある店を目指す。

 狭く高く足場がスカスカな怖い階段をぐるぐると昇っていく。


「人がゴミのようデスね」

「ヴィルくんほら海、海見えるよ」


「ちょっとだけ見えるね……」


 建物の隙間から少し海が見えた。都市の両側には雲を突く高い山々。すごい景色だ


「ん……?」


 下の街並みを覗いた時にある物が目についた。

 人の少ない細い通り、特徴的な三角帽子、靡く艶やかな深紫の髪────


「…………!!」

「わ、ヴィルくん?高所恐怖症?」


「ク……クジマ……!? どうしてここに……」



 “竜の背”古参メンバーの一人、“魔術師(マジシャン)”のクジマが確かにそこにいた

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