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セーブアンドロード

作者: 紅葉 紅羽

エッセイ――というか、自分の思いをただ思うがままに書き綴ったものになります(もしかしたらそれをエッセイと呼ぶのかもしれませんが)。あらすじ通りとある物書きの独り言ですので、「へー」くらいで読み飛ばしていただいても全然かまいません。むしろここに来てくれただけでありがとうございますを言わなければならないのですから。ですが、欲を言うのならば――これを読んでくださった貴方の心に、何か波紋を残せますように。

――もし仮に人生を細かく――それこそ一日単位でセーブアンドロードできるとしたなら、僕はそれを押すのだろうか。全ての間違いをつぶして、全ての正しい道を目指して、進み続けることが出来るのだろうか。


 何言ってんだコイツと思うかもしれないが、この問題はずっと僕の中にこびりつき続けている命題だと言ってもいい。ループものと呼ばれる作品を初めて見た時から、ずっと。


 小説家になろうと志してから、五年か六年は経っただろうか。長い道のりだったような気がするし、誰かの歩んだ道のりと比較すれば短いような気もするし。……とにかく、何ともいえない長さの道のりの上に立っているのが今の僕、というわけだ。


 セーブアンドロードは、結局のところその道のりの質をどこまでも高めていく行為に過ぎない。今を生きる人間の誰しもに平等に流れるという大原則を捻じ曲げて、二十四時間の経験効率をどこまでも高めていく。……ある種、RTAにも似たような研鑽になっていくのだろうか。


 では、人生における無駄な時間とは何だろうか。僕がこうやって今キーボードをたたいている時間も、数十年後には『無駄な時間だった』と振り返るようになるのだろうか。……なって、しまうのだろうか。


 人生はゲームだなんてよく揶揄されるけれど、それならばこのゲームは相当に厄介だ。まず攻略本がない。そんでもってスタートが平等じゃない。ステータスの伸び率も平等じゃない。……おまけに、誰しもに共通するゴールがない。


 言ってしまえば、誰かが血の涙を流そうとたどり着けなかったゴールに暗い顔をしてたどり着く人間だっているわけだ。『……ああ、失敗した』なんて言いながら、誰かが目標にしていたゴールをとぼとぼとまたぐ人間だっているわけだ。……つくづく、残酷な話だと思う。この世界というのは平等な面をしているが、その実何も平等ではない。何せユーザーネームだって自分では決められないのだ。


 話を戻そう。人生がセーブアンドロードできるものとして、それならば何を無駄な時間として扱えばいいのだろうか。知識は二週目に持ち越せるとしても、一日の間にできる蓄積なんてものには限りがあるわけで。人は逆立ちしても一日で広辞苑を編めないし、どれだけ効率のいい食事とトレーニングをしたところで一日で育つ筋肉には限界がある。


これもゲームに例えるならば、『レベルアップの限界』と表現するのが妥当なのだろうか。一日を行動する僕達の意志や思考の蓄積―—このゲームのプレイヤーのスキルは向上しても、この現世におけるアバター、則ち僕たちの肉体がそれに追随するのには限度というものがあるのだ。どれだけセーブアンドロードを繰り返しても一日でボルトになれるわけはない。あくまで『自分』というレベルキャップの中で、最善を選択して少しずつ歩いていくしかないのだ。


――ここまで考えたうえで、もう一度よく考えてほしい。一日をセーブアンドロードでやり直せるのだとして、貴方ならどうするだろうか。なお、一度踏み越えてしまった一日へは二度と戻れないものとしよう。


 なんでこんな話をするのかと言えば、この話が前振りだからである。しかめっ面をした貴方、どうかここで立ち止まらないでほしい。話があちこちと揺れて本題へ移るのが遅れるのは僕の悪いクセなのだ。僕の作品を見れば、それは如実に出ていると思う――っと、宣伝が今回の意図ではなかった。今回の主題は、僕―—『紅葉紅羽』を知ってもらうことなのだから。


 小説というのは人生に似ていると、僕はそう思っている。主人公たちにとってスタートは明確でなく、ゴールも明確ではない。そんなものは書き手である僕たちの勝手な切り取りの結果であり、あるい受け手の一存で勝手に決められてしまうこともある。打ち切りになった漫画など、そのいい例ではないか。打ち切りという運命に飲まれて消えていった時間の中でも、キャラクターたちは確かに生きているんだから。


 そして何より、小説に正解なんてものはない。模範解答なんてものはない。あるとして国語のテストの中ぐらいだろうが、その問題すら作者が間違えたなんて逸話があるくらいだからお笑い草だ。……小説の正解を知る奴なんて、どこにもいない。いたら是非拝ませてほしいものだが、同時に会いたくないとも思ってしまう。……正解の定義された小説など、僕の書きたい世界ではないのだろう。


 自分で言うのもアレだが、僕の描きだすキャラクターは随分と身勝手だ。少し目を離せばあちこちへ寄り道するし、かといって手綱をつけすぎるとテコでも話が動かなくなる。プロットをがちがちに固めた作品ほどうまくいかないというのは、何時しか僕の中のジンクスとして成立していた。


 だが、手綱もなくあちらこちらへと進んでいく彼らの道のりをを喜んで見てくれている読者様たちがいる。僕と僕が生み出したキャラクター、言ってしまえば子供のような存在とのせめぎあいが生み出す世界を見て、良いと思ってくれている人たちがいる。それを知れたことが、僕にとって投稿を始めて一番良かったと思えることなのかもしれない。どれだけ小説を書くということに慣れが訪れても、誰かから応援の言葉を貰う事はやっぱり嬉しいのだ。


 さて、話は三度冒頭に戻る。……もしセーブアンドロードなんて荒業が出来るんだとしたら、小説の修業というのはおそらく無限に可能なものの一つとして挙げられるだろう。実際の作業が一日に進む量に限りはあるとしても、インプットとアウトプット、そして小説を書くという経験の積み重ねなら無限にできる。その無限の先には、きっと誰もが見たことのない小説の世界があるかもしれない。それを作り上げられたのならば、僕にはあらん限りの賞賛が向けられるのだろう。


――だが、少し待ってほしい。無限の先にある究極の小説を作り上げた僕に対しての賞賛に、そうなる前から僕のことを追いかけてくれた人たちのものは含まれているのだろうか。無軌道で、拙くて、修正点を挙げればきっときりがなくて。だけどそんな世界を楽しんでくれていた読者様たちは、究極にたどり着いた僕を褒め称えてくれるのだろうか。


 僕は臆病者だ。仮にそれが一番いい方法なのだとして、今僕の創る世界を楽しんでくれている人たちの笑顔を奪うことはできない。誰か一人でも笑顔でなくなってしまうのならば、セーブアンドロードなんてない方がいいのだ。その結果、仮に僕が間違えたのだとしても。


 それにきっと、僕の子供たちも僕のその行動を許してはくれないだろう。蓄積と試行の累積で誕生する究極の小説とは則ち、キャラクターの自由を、彼らが自分で動ける余地を一切合切奪ったうえで生まれるものである。……そんなもの、僕の子供たちが許容するものか。


 まあそんなわけで、僕は今日も小説を書き綴る。セーブもロードもできない世界で勝手に動くキャラに頭を悩ませ、行き詰る表現に自分の無力さを呪いながら、それでもチマチマと日々を、物語を積み重ねていく。―—そんな僕の姿も、いつかは物語になってくれるのだろうか。誰かに笑って語れる、そんなエピソードになるのだろうか。『紅葉紅羽』という人間は、いつか誰かに語られる存在に成れるだろうか。なれたらいいなと、思う。


 決して万人受けするような人間でないことは分かっている。それでも、僕の紡いだ言葉に少しでも何かを感じてくれるなら、そこから何かを見つけ出せるなら、そんなに嬉しいことは無い。極論、くすっと笑みを浮かべてくれるだけだって僕は嬉しいのだ。だからこれから、あるいはこれからも、『紅葉紅羽』とその子供たちが生み出す世界に、少しだけ顔をのぞかせて、そして気が向いたら声をかけてみてほしい――だなんて、これじゃあ結局宣伝じゃないか。やっぱり、僕は無軌道な人間である。

いかがでしたでしょうか。いったいどれだけの方がここまでたどり着いていただけたかは――まあ、いったん考えないことにします。冒頭でも言ったように、誰かの心に少しでも波紋が残ってくれればそれだけで意味はあったと思うので。これからも機会ときっかけがあればこういうのはやるかもしれませんので、良ければ応援いただけると幸いです。……僕の子供たちが織りなす世界も、良ければ何かの縁だと思って覗いていただければ飛び跳ねて喜びます。

――というところで、あとがきもこれくらいにしておきましょうか。最後にはなりましたが、ここまでたどり着いてくれた貴方、そしてたどり着けなくてもここに来てくれた方々に、最大級の感謝を!

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