消えたポップコーンの謎【加羅&刀利シリーズ】
とある喫茶店で青い髪の女が不満そうな顔をして、赤いソファに座っていた。髪と同じの青の瞳に、明らかに不満の色が浮かんでいる。
「帰ってきた私のポップコーン……」
呟いた女性の名前は笠吹雪 刀利。喫茶店には現在二人の人間がいる。一人は刀利。
「機嫌が悪そうだな」
少し離れたカウンターに立っている男性が刀利に声をかけた。黒い髪はボサボサなのに服装は綺麗だ。ジャケットが綺麗に着られている。
男の名前は千之時 加羅。喫茶店のマスターである。
「だって!ポップコーンは500円ですよ!?冗談じゃありません!」
刀利は怒り心頭とばかりに立ち上がった。
何が起きたのか読者の方にはわからないだろう。事件が起きたのは街の映画館である。
刀利と加羅は一緒に映画館に行った。座席の半分くらいは客が入っていた。映画のタイトルは『最上階を目指して』だった。
刀利は上映席に向かう前に、外の売店でポップコーンを一つ買ったのだ。一方、加羅は何も買わなかった。
上映席では、自分の座っている右側に買ったものを置けるスペースがあった。左の席に刀利。そのすぐ右側に加羅が座った。刀利と加羅の隣はすでに他の観客が座っていた。
事件は上映中に起きた。書いておくが、刀利の左側の置き場には何も置かれていなかった。刀利は自分の右側にポップコーンを置いていた。満面の笑顔でポップコーンを食べていた。映画楽しめよ。
しかし、刀利が映画に一時的に集中したあとにポップコーンを食べようとした時、自分の右側に確かに置いておいたポップコーンが無くなっていたのだ。
当然、刀利は疑問を抱いた。私のポップコーンちゃんはどこへ?
自分が置く場所を間違えてしまったのかと思った刀利。そして自分の左側。上映前は何も置いてなかった置き場を見た。そこには確かにポップコーンの姿が見えたのだ。
記憶力には自信がある刀利。間違いなく右側にポップコーンを置いた。しかし、ポップコーンは右側から消え、左側から帰ってきた。
そして喫茶店での会話に戻る。
「ありえないでしょう?右側です。確かに右側に置いたんです。それがいきなり左側へワープしたんですよ」
刀利は頬を膨らませている。
加羅は笑いながら聞いていた。
「宇宙人が観客にいたんじゃないか」
「馬鹿にして!」
「俺には消失の謎がわかるが、お前が有罪になってしまうからな」
「え?」
刀利は目を見開いた。
有罪?悪いことをした覚えはない。
「俺がお前のポップコーンを奪って俺の右側に置いた」
「は?」
「そしてお前の左側の人は、上映の途中までは置いていなかったポップコーンを右側に置いた。タイミングが悪く、それをお前が取った。つまりお前の左側のお客さんは500円の損をしたわけだな。ポップコーンが一個しかないというのが思い込みだ」
そういって加羅は煙草に火をつけた。
「加羅さんのバカ!!」
刀利はぶるぶる震えて喫茶店から出ていこうとした。その様子を見て加羅は笑っている。
「お前といると楽しいよ」
そんなことを加羅は笑いながらいった。
どうしてそういうこと言うかな、と刀利は頬を少し染めながら思った。




