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賢者タイムの石  作者: 千日月
2章 ブラック労働温泉 イカップ
9/21

2-1 作戦会議だ!①

「では、作戦会議を始めよう」

 昨晩の宴の後、見張り当番の兵士以外は皆朝まで死んだように眠り、のろのろと起きてきて昼頃から活動を開始した。

 基地内には竜人(どらごんちゅ)のような身体の大きな者たちを含めて10名を超えて集まれるような部屋がなかったため、急遽倉庫から巨大なテントを引っ張り出してきてそれを組み立てた。

「こういうの建てるとなんか気分が上がるであろう?」

 ズリさんは何百年かぶりにオラ、ワクワクすっぞ! と言った様子だった。

 急な来訪者があった場合、これで俺たちのことを旅芸人の一座で済ませるつもりらしい。

 そうなったらミスティアさんは怪力芸、タルタルは多才そうだしなんか上手くやってのけるだろう。玉乗りとか。

 俺は、股間が宝石芸人……想像して吹いてしまいそうになったが、それだけでは出落ち100%だ。今後のためにも何か考えておこう。うーん、何かできることがあっただろうか。

「ズリ様」

「おー! 来たかセンよ!」

 おっと、新キャラのご登場である。

 ズリさんの表情も声もパッと明るくなった。

「まったく、突然伝令を寄越したかと思えば急いで資料を作って来いだなんて……無茶振りにもほどがありますよ。ま! できるんですけど! そう、私ならね」

 新キャラが両腕に抱えていた大量のレジュメを机の上に叩きつけると、ズリさんの喜びが尻尾に向かってしまい、せっかく建てたテントの木製支柱が一本おしゃかになった。

 当然テントは崩れ……設置に再度時間を取る羽目になり、ズリさんは新キャラに怒られてしょんぼりしていた。

 気を取り直して、会議が始まった。

「まずは持っている情報を両者開示していただきまして、これから現魔王とどのようにして対峙するかを探って参りたいと思います。あ、申し遅れました。ワタクシ、ズリ様の参謀を務めさせていただいております。センと申します」

 センとズリで……その先の卑猥ワードを想像してしまい、本日2回目の吹き出しそうになるのを堪え、必死に抑え込んだ笑いで顔の筋肉をピクピク震わせながら挨拶した。

 センさんの身体は薄紫で、竜種にしては小柄で線が細く、レンズの入っていない眼鏡のようなアクセサリーを付けていた。知的に見せるためのアイテムはどこの世界も似たようなものなのだろうか。

 服装も他の兵士がほぼ全裸に鎧しか身につけていない状態なのに、この人はしっかりと着込んでいた。袖はたっぷりと長く、古き中華の軍師を彷彿とさせる。

「ではまずこちらの持っている情報の開示から。お手元の資料をご覧ください」

 センさんから開示された情報は以下の通り。


 ・全ての無毛種には魔王の加護が強制的に付与されており、あらゆる物理攻撃・魔法攻撃に耐性を得ており、自死もままならない。

 ・現魔王は強制的に脱毛する能力を持っていると思われる。(ズリさんの乳首毛の件から)

 ・自分達無毛種は何か良くわからないが現魔王に逆らえない気分になる。


 紙には現魔王の似顔絵とダ・ヴィンチの人体図のようなものが描かれていた。

 俺には明らかに人間に見えたが、彼には毛が一本もないらしい。睫毛すらもないのだろうか。え、てか、基本的に全裸なの? 服着てない絵なんだけど……人体図だからだよね??

 似顔絵が正確なら、整った顔立ちにスラリと長い手足……端的に言ってかなりのイケメンだ。ここに召喚されるのならば、それなりのDTPを持っていないとまずエレクトのような生物の目に止まらないワケなのだが、こんなイケメンでも童貞だったのだろうか。

 ぴらりと紙をめくれば、次ページに『性格→最悪!!!!』と大きな文字で書かれており、なるほどねと変に納得してしまった。ただしイケメンに限るはこいつには許されなかったらしい。

 俺がまじまじと資料を見ていると、ズリさんがこちらを向いて

「そして、そこなタカシと同じようにこいつの股の間にも」

「えぇ、ありますな。蒼い宝石が」

 センさんが眼鏡をクイクイと上げ下げしている。

「現魔王様は、それが蒼い光となって、槍になります」

 なるほど、股間のランサー……やつも強靭な男の武器を備えているというワケか。

「タカシ、そちらの情報も話してはくれぬか」

「あ、はい! 分かりました。しかし、どこから話したら良いか……」

 俺はこちらの世界で目を覚ましてから、これまでのことをなるべく簡潔にまとめて話した。

「……と、いうわけなんです」

「別の世界から! なんと!」

「なので、もしかしたらその、現魔王とやらも俺のいたような世界から来たのかも……」

「なるほど、それならば納得した。あいつは強すぎる」

「彼奴も頭の中にチート生物を飼っている可能性は十二分にありますな」

「お見せできる証拠が股間の宝石くらいしかなくて申し訳ないのですが……」

「タル、もしかしたらできるかもしれないよ! その子の姿を見せること!」

 今まで静かに話を聞いていたタルタルが元気に手を挙げた。タルタル、やはり多才だ。

「えっとねー、あの術とその術を組み合わせて〜」

 タルタルがほにゃほにゃと呪文を唱え始めた。

「ドーニャンセーニャン、ドーニャンセーニャン……破ァーーーーー!!!!!」

 すぐに呼びましょエレクトさん!

 ぼふんっと煙と共に現れた宇宙生まれのエレクトさんは、ちりちりと風鈴の鳴る夏休みの子供部屋で、丸い卓の上に麦茶のピッチャーとガラスのコップを置き、レトロなドット絵のゲームを楽しんでいた。

「めっちゃくちゃくつろいでるやないかーい!」

「わわわわわ! なんだいきなり! セーブするからちょっと待っててくれないか……のじゃ?」

「のじゃつけるとこ、そこじゃなーーーーーい!」

 てか俺の子供の頃の部屋じゃねーか!

「ふふん、僕は小学3年生で目覚めた性癖=一生の性癖説を推してるからね。君の小学3年生の頃の部屋を再現させてもらったよ」

 キリッとしてんじゃねー! てかなんだそれ聞いたことねえわ!

 周りのツルモフ達がざわざわと(ざわ)めいているなか、俺は一人げんなりとした気分で空中に浮かび上がる紅葉色の相棒を見ていた。

聖杯戦線に夢中になりすぎて、投稿が遅れてしまいました。申し訳ございません。

新規イベントも来週から始まるので、大変楽しみです!

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