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賢者タイムの石  作者: 千日月
2章 ブラック労働温泉 イカップ
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2-13 チャラチャラスパーキン

「来ました! ドンです!」

 センさんとミスティアさんはタルタルの遠隔通信魔法で別の部屋からこちらの様子を見ており、何かあれば来てくれることになっている。

「いらっしゃいませー!」

 入口からボーイの声が響く。

 ドンがチラッとこちらに目線を送ったのが分かる。

「ドン様、毎度当店のご利用まことにありがとうございます! 本日は珍しく三人も新人が入っておりまして、しかも一人はすこーしハゲ散らかしてますが熊人(くまんちゅ)の女の子なんですよ〜! どうです? レアじゃないですか〜?」

 俺のことだ。誰がハゲ散らかしとるか!

 ドンは自分の口からは直接ボーイに伝えず、必ず部下を通して意思を伝える。事前情報通りの行動を取ったドンは当然のようにVIP席へと歩を進める。

「ヨシ! 行くわよ! タル子! スケ美!」

 俺たちはシルバーのギンギラギンのワンピースに身を包み、夜会巻きのカツラをつけ、目元をバシバシのつけまつげと真っ青なアイシャドウで彩りすっかり夜の蝶へと変身……出来ているのはどうやらスケーケだけであった。俺なんかどう見ても三流バラエティ芸人だわ。

「タカ()どう見ても男の子だけど大丈夫かな? 熊人だって言っても無理があるんじゃないかな?」

「そうですか? お二人ともイケてますよ?」

 注文された酒を持ってVIP席へと向かう。

 先に来ていた魚人はなるべくいつもと変わらない格好に外見を整えて座らせておいた。

「お前さん、今日は良い首輪してんじゃねぇか。ワイフのプレゼントか? と、ドンは申しています」

 ドンの部下が告げる。

「あ、あぁこれはその、そそそ、そ〜なんす! ハハハ!」

 愛想笑い下手かーーー!!

「まぁまぁ、ようこそいらっしゃいました。初めまして、本日お席につかせていただきます〜。スケ美です〜。ささ、まずは一杯どうぞ〜」

 すかさずスケーケがフォローに入る。

 いいぞスケーケ! 偽乳もいい感じに盛れてるぞ!

「タル子はタル子なんだよ〜! よろしくね〜!」

 タルタルはスケーケにお酌されていた。そっちじゃないー! とは思うが、可愛いので許してしまう。可愛いは正義。

 俺は咳払いをして

「熊人のタカ江ですぅ〜ん、よろろおねしゃま〜ん! うふんうふん!」

 できる限りの猫撫で声を出して席についてみたが、キモいことこの上なし。

 ドンが何か部下に耳打ちしている……。

「熊人の君、とても可愛いね。こちらに来なさい。と、ドンは申しております!」

 マジか。顔の造形よりも身体がデカい方が好みなんだなぁ。

 タル子に席を譲ってもらい、ドンの隣に腰掛ける。

 するとドンがロックグラスを差し出してきたので受け取ると、トクトクと琥珀色の酒をたっぷりと注いでくれた。ざわざわと店内が騒がしくなる。

 なんだなんだ?

「ドンがお酒を注いでくださるのは大変珍しいことです! ありがたく飲み干してください!」

 ドンの部下が俺に叫ぶ。

 えぇーーーー俺そんなに酒強くないんだけどな……仕方ない。好意はありがたく受け取らなければ。

 ゴクゴクと酒を飲むと、カーッと燃えるように全身が熱くなる。なんだこれは。久々に酒を飲んだが、こんなだっただろうか。

 ドンはもっともっとという風に勧めてきたので、またグラスに酒を注いでもらう。しかし完全にペースを間違えているなと思った俺はそれを飲まずにニコニコ笑って誤魔化そうとしていると、隣のタル子が耳打ちしてきた。

「タカ江、言ってなくてごめんなんだけどこういうお店ではお客さんに注がれたお酒はすぐに全部飲まないと失礼になっちゃうんだよね」

「そういうことは研修の時に言ってくんない⁈」

 仕方なく、グラスを口に運ぶが……まずいぞ、これは完全にペースが……いや、なんかテンション上がってきた!!

「タカ江、歌いまーす!」

 バッ! と席から立ち上がってスペースの取れるところへ行く。

「ミラーボールないの〜⁈ まぁいいや! ウェーイ!」

 なんだかめっちゃ楽しい気分になってきた俺は、酒瓶をマイク代わりにステップを踏みながら子供の頃好きだった氷の中に溶けた恐竜が玉乗りをしたかった的なアニソンを歌い出した。

「ぜーーーーーーーーーっとぅ!!」

 熱唱してしまった。ドンは手を叩いて喜んでいる。完全に掴みはオッケーだろう。

 って? あれ? 世界が回るぅ〜。

「タカ江ーーー!」

「タカ江さーん!」

 タルタルとスケーケの声が遠くに聞こえる。

 背中をしたたか打ちつけて、倒れたようだ。最近よく倒れてるなぁ、俺。

 ぐわんぐわんと眩暈がする中、意識が途切れた。


火山が爆発したら、何が起きても気分はチャラチャラパッパ!

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