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賢者タイムの石  作者: 千日月
2章 ブラック労働温泉 イカップ
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2−11 タルタル肉球乱舞

 地面に叩きつけられる寸前、俺とスケーケはタルタルの魔法によって助けられた。優しい風の魔法がクッションとなり、ほぼ無傷で地面に降り立った。

 温泉と共に噴き上げられた3人の魚人は重症の火傷を負っており、ミスティアさんの魔法で完治まであと半分程度の治り具合まで回復してもらった。

「完治させることも可能ですが、これでいいんですか?」

 ミスティアさんが俺とタルタルの顔を見る。

「ありがとう、ミスティア! この子達は今まで悪いこといっぱいしてきたから、このくらいの罰は受けてもいいんじゃないかな!」

「そ、そんな〜!」

「痛いよ〜」

「ヒリヒリするよ〜」

 と泣く魚人達の手足をロープで縛り上げると、ムフゥーと鼻息を吐くタルタルは尋問を始めた。

「横取りしたお金を別の人に渡してるって言ってたけど、その人は誰なのかな?」

「そ、それは……」

「言ったら俺達そいつに何されるかわかんねぇ……」

「ふーん、喋らないならこのタル様の肉球が火を吹くよ! えいっ!」

 ぽふぅ……と鮫魚人の頬にタルタルの柔らかな肉球が当たる。

「アァン! なにこれぇ! ぎもぢいいいいい!」

「ぷにっとすりゅううううう!」

「えいっ! えいっ! とりゃあ〜!」

 タルタルがそのまま肉球乱舞をお見舞いする。そこ、代わってくれないか。正直、うらやましすぎる。

「やめ、やめ、ア! んあああー! い、言うぅ! もう言うからあああ!」

「誰なのかな?」

「こ、この辺りのマフィアのボス、ドン・キョ=コーンです!」

 根負けした鮫魚人の口から出た名前に俺は突然咳き込んでしまったが、いや、吹き出したのを誤魔化したりなどしていない。していないぞ。


 こうして俺たちは次はドン・キョ=コーンをとっちめるために行動を開始していくことになるわけだが、とりあえずはシーセさんを呼び出し、温泉については制圧が済んだことをズリさん達へ伝えてもらうよう飛んでもらった。

 何日かすれば、適任の人達を連れてこちらへやってきてくれるだろう。温泉もプシャアアアアアア!! と噴き上がったまま垂れ流しで困っているし。

 その日は縛り上げた魚人達を適当な室内に移し、俺たちは交代でそいつらの見張りをしながら一夜を明かした。

 スケーケは

「どうせ眠れないので僕がずっと見張りをします。皆さんはお休みを」

 と提案してくれたが、横になるだけでも良いから休んでくれと申し出を断った。

 スケーケは仕方なく横になって目を閉じていたが、眠れてはいない様子だった。


 次の日の朝、みんなで朝ごはんを囲んでいるとバン! とドアが開け放たれ、そこにはセンさんの姿があった。

「早馬速すぎません?」

「速いから早馬なんです! みなさん、今回の作戦お疲れ様でした。シーセから報告を受けましたが、皆さま何かお困りのご様子とのこと! ここは私の出番かと思い、馳せ参じまして候!」

「なんかテンション高くないですか?」

「いえ、こんな面白そうなこと久しぶ……ウヴン! なんでもありませんぞ!」

「センさんなんか楽しんでますよね?」

「そのようなことは考えておりません。えぇ、まずくなったらズリさまの部隊を使って制圧させてしまえばよいとか、まるで考えておりませんよ」

 か、考えてるー! 絶対遊びに来てんじゃんこの人ー!

「私が思うに……ゆすられた金は!! ゆすり返すしかありますまい!!」

 なんかおかしな方向へ進まなければ良いが……と思いながら、いや進むんだろうなぁと嫌な予感をひしひしと感じる。

 なぜなら頭の中から紅葉色の相棒のウヒャヒャという笑い声が聞こえてくるからだ。

 こいつ、一体何を予感しているのだろうか……。

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