2−7 さまよえる濃ゆい弾丸
「タカシさん、帰ってきませんねぇ」
焚き火の周りを囲むようにしてセットしてある、串刺し肉の火の当たる位置を調節しながらミスティアがつぶやいた。
タカシ、確かに遅い。
ダジャレみたくなってしまったが、なうその通りの状況になってしまったから仕方がないかな。
川に水を汲んでくる係を買って出てくれたのだが、一向に帰ってくる気配がなく……タカシが出発した時にはまだ世界には太陽がこんにちはしていたが、今はもうすっかりさよならしてしまった。
「タカシさん、口には出さなかったですけど、具合が悪そうに見えたので帰ってきたらタイミングをうかがって回復を提案しようと思っていたのですが……」
「ミスティアも気づいていたんだね。タカシが自分から言わないから、僕もこっそりと薬草の在庫を確認するに留めていたんだけど……。うーん、ちょっと探してみようかな。どこかで倒れていないか心配になってきたよね」
「探せるんですか?」
「うん、大体どこにいるか〜くらいだけど、できるかな!」
「さすがタルタルさん!ほんとになんでも出来ますね」
焼き上がった串刺し肉を葉っぱのお皿に乗せて、ミスティアがこちらにやってくる。
僕はセンさんにもらったこの辺りの地図を広げ、呪文を唱えた。
「ドコサヘキサ縁ニャン〜……破ァーーーーーーッ!」
ふわふわ〜ぽわぽわ〜っと赤い光が地図上に浮かび上がる。
「ここがタカシさんのいる位置ですか?」
「そうだねぇ。僕とミスティアがいるのがここ。でも、これはちょっとまずいかな」
光が示した位置は、今回の旅の目的地である温泉施設建設予定地の端っこの方ではあったが、すでに敵地の中に入ってしまっていた。
「この位置から動かないでいてくれれば、助けられるかもしれないけど……状況が全く分からないなか二人で突っ込んで行って、捕まってしまっては仕方がないし……ヨシ! ここは彼の手を借りようかな!」
僕は大きく息を吸い込むと、首にかけていたセンさんから渡された笛を勢いよく吹いた。
ビュルルルルルル!! と独得の音が鳴り響き、しばらくするとどこからともなく飛魚人のシーセが弾丸の如く飛んできて、華麗に着地……せずにドーンという音と共に派手に頭から地面に突き刺さった。衝撃で身体がビーーーーンと揺れている。焚き火の中に突っ込んでたら焼き魚だったよね。
「だ、大丈夫ですか?」
駆け寄ったミスティアがしびびと震える両足を掴んで地面から引き抜くと、口に入った土をペッペと吐き出す濃ゆい顔が現れた。
「へへ、お嬢さんありがとうごぜェやす……こうして出動するのも久々だったもんでェちぃと失敗しちやいやしたァ……かたじけねェ…。タルタルの旦那もご機嫌麗しゅう」
「君の仕事もなかなか大変なんだね。来てもらって早々本題に入らせてもらうんだけど、タカシがいなくなっちゃってさ。どうやら敵地に片足突っ込んでるっていうか、もう入っちゃってるっていうか……あ、君もお肉食べるかな?」
タカシの分も焼いてあったのでお肉は沢山あった。一本をシーセに渡すと
「こいつァーありがてェ!」
と言って串を横向きにして食らいつき、一気に引き抜いてあっという間に全て平らげてしまった。
「なるほど、そいつァいけねェなァ」
「悪いんだけど、ちょっと偵察に行ってきてくれないかな? 有毛種の僕達よりも無毛種の君の方が、侵入者として見つかったとしても大きな騒ぎにもなりにくいと思うんだよね」
「ガッテン承知のすけでさァ。タカシさんも笛をお持ちでいらっしゃいやすね?」
「敵に奪われていなければ、持っていると思います。位置はさっきタルタルさんがそちらの地図に」
「なるほど。あっしらァ飛魚人は世界中の笛のある位置を感知することができやす。タカシさんはこちらの光の位置と相違ない位置にいると思われますァ。いっちょひとっ飛び行ってまいりまさァ! では、御免なすってェ!」
そう言うとシーセはあらよっとという掛け声と共にどこからともなく取り出した砲台に自分の身体をセットし、またドーン! という音と共に飛び出していった。次の着地は失敗しないことを願うよ。
空中にたなびく火薬臭い白い煙を眺めながら、串刺し肉を口に運ぶ。ん〜、美味い!
「さ、出来ることはやったし、ミスティアもお肉を食べようよ! 美味しいよ!」
「はい! タルタルさん!」
とりあえずその日はお肉をうまうまして、シーセさんが帰ってくるのを待つことにしたよね。
タカシならなんとか上手くやってくれてるとは思うけど……うーん、心配だなぁ。
真夏の道満ショックが過ぎ去りまして、心身ともに回復いたしました。
更新再開して行きますので、よろしくお願いいたします。




