2−6 おれたちの失敗
「掘っては埋め……ってどういうことなんですか」
スケーケは口元を手で押さえ、さめざめと泣き始めた。
あぁ〜こんな時は男同士とはいえハンケチーフを……持ってねー! すまん!
「最初は僕ら一族も、温泉を掘り当てて、施設の工事を終えたらそれでお役御免。故郷へ帰れると思っていたんです。現魔王に屈したのだから、それくらい仕方ないよねと。でも、違ったんです」
スケーケはポツポツと話し始めた。全裸のままで。
聞いた話を要約するとこうだ。
まず、スケーケ達海月人一族はここからは遠く離れた海の近くに住んでいて、現魔王がそこに突然やってきて勝負を挑まれ、スケーケの父である族長は負けてしまった。
仕方なく現魔王に従うことにした一族であったが、温泉を掘り当てれば帰れると思って最初は一生懸命作業をしていた。だが、時々様子を見にくる上司がやってくるたびに最初の指示と違うことを言って、今までの作業は全てご破算。また一から作業が始まり……というのを繰り返しているのだという。
それでは永遠に作業が終わらず、施設が完成することもない。
終わりの見えない作業に、肉体労働が得意ではない海月人一族はだんだんと心身共に病んでいった。
しかし、元来真面目な性格である彼らは誰一人として弱音を吐かず、また、現魔王の加護によって自死することもできない。
頭を抱えたスケーケは知恵を絞り、一族の誰にも内緒にしていた自分の持つ毒の触手を使って仲間をこっそりと刺してみることを思いついた。
試してみたらこれが成功。
攻撃する意思を持てない相手に対してならば、毒も通るということに気づき、本人達には気づかれずに一人一人ゆっくり段々と毒を与えて倒れさせ、休養させたのだという。休養を必要とした仲間達は、故郷の海でないと治らないと嘘をついて帰郷させた。
そして、今残っているのはスケーケと数人のみ。その残っている数人にも既に毒を与えており、実質まともに働いているのはスケーケだけだという。
この作業場には元凶である上司と数人の取り巻きがおり、それらを倒せばなんとかなるかもしれないが、上司に対する腹立たしい思いを消すことが出来ないスケーケは現魔王の加護のせいで反旗を翻すことが出来ず、大変に困っているとのことだった。
これはもしかして、しなくとも俺達の出番ではないだろうか。
「上司の奴らの目的はおそらく金です。施設が完成しなければ、永遠に建設費や私達の給料を着服することが出来てしまう。本部からは律儀に何年もちゃんと経費やら何やらが支払われている様で……現魔王は有毛種に攻撃を仕掛けることには積極的なのですが、それ以外のことにあまり興味が無いようで、経済面はかなりザルです。査察官のような人がここに来たことは、今まで一度もありません。前魔王様を倒せるくらい能力は高いのかもしれませんが、ぶっちゃけあまり頭は良く無いんじゃないでしょうか……でなければもうとっくに有毛種を倒して世界を征服していても良い頃だと思うんですよね」
「なるほど……スケーケさん、それはお気の毒に……」
「あぁ、タカシさん……分かっていただけますか? ストレスで夜も全然眠れないですし、正直もう死にたいんです。まぁ死ねないんですけど」
だから河原であんなことを言っていたのか。よし、ここは一つ大きく出てみるか。
「スケーケさん。信じてもらえないかもしれないが、実は俺と仲間は現魔王を倒すために旅に出たんです」
「え! ど、どういうことですか?」
俺はこれまでの経緯をかいつまんでスケーケに話した。
「なるほど完全発情……しかしそれはまた、なんと面妖な魔法で……」
「試してみますか? もしかしたら、あなたの悩みも少しは軽くなるかもしれません」
「えぇ……いや、そのぉ……」
スケーケは分かりやすくドン引きしていたが、キッボルフの回復効果は前魔王ズリさんのお墨付きだ。試してみる価値はある。
「やってみましょうよ! さぁ、恥ずかしがらずに!」
「そ、そんなに言うなら……どうぞ……」
覚悟を決めたように正座をしたスケーケはぎゅっと目を閉じ、膝の上で固く拳を握りしめた。
行くぞ、エレクト!
(いいですとも!)
いつものように俺は股間から光を右手に集め、紅き剣を持って高らかに呪文を唱えた。
「キッボルフ!!」
狭い部屋の中に静寂が流れる。
「……?」
スケーケは恐る恐る目を開けると、何も変化の無い自分に気がつき、キョトンとして俺の方を見た。
あれ? おかしいな……もう一度だ。
「キッボルフ!!」
………………。
再び、静寂が訪れる。
「何も……起きませんね……」
「そ、そんなはずは……どうして……」
身体に感じる倦怠感は増して来ている。魔法は発動しているはずだ。
焦る。焦る。焦る。
「タカシさん、僕を励まそうとして作り話をしてくれたんでしょう? 局部を強制的に勃起させて、なおかつ他の部分も元気になるとか、そんな夢のある話あるわけないと思ってたんですよね。でも、ありがとう。面白いお話しでした。少し、元気になりましたよ」
スケーケは哀しげに微笑んだ。
「いや、違うんだ、これは一体……も、もう一度! キッボ……うぅ……」
俺はあなたにそんな顔をさせたかったわけじゃ……。
度重なる魔法の連続詠唱で体力を消耗、発熱の影響で弱っていたのもあっただろう。言い終わる前に俺はその場に膝をついてしまった。
「大丈夫ですか? おや、また熱が上がってきたかもしれません。また薬草を飲んで、横になってください」
「すまない……スケーケさん……」
スケーケは薬草を手でこね、自らの口に水と一緒に含むと、唇を俺に押し当て……
って、待て待て待て!!
びっくりして思わず飲み込んでしまったが、エレクト! お、おまっお前、知ってたな⁉︎
頭の中で昨晩の全てを見てきた相棒の大爆笑が響いている。
ふっざけんなよお前!! 俺のファーストキッスがあああああああああ!!
絶対に後で痛い目見して……やる……からな……。
俺の意識は、そこで途絶えた。
水着の蘆屋道満が来てしまったので人の形を保たなくなりますのでしばらく更新が止まると思います。来月には復活します!
すみませんが、ご了承ください。




