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賢者タイムの石  作者: 千日月
2章 ブラック労働温泉 イカップ
12/21

2-4 もう、若くない

 俺、ミスティアさん、タルタルの三人は次なる旅路へと出発した。

 目指すは火山の(ふもと)にある、イカップという地だ。

「イカップまでは歩いて三日ほどだ。乗り物を出すこともできるが、まぁまだそう焦ることはない。タカシはこの世界のことを少しも見ていないのであろう? この機会に実際に肌で触れて、感じてみるが良かろう」

 ズリさんの勧めもあり、俺たちは徒歩で現地を目指すことにした。

 サラリーマン・スーツは見た目も目立つし、この世界の今の気候にはあっていないので、旅芸人風の衣装をタルタルが買ってくれた。

 ランニングにダボっとしたズボン、ブーツにマントと動きやすくて通気性も良い。正直スーツは暑苦しかったので、大変ありがたい。全体のテイストがピエロっぽい雰囲気でまとめられている。タルタルの趣味だろうか。


 道すがら無毛種の村にいくつか立ち寄る機会があった。

 長年戦争をしていると聞いていたので、激しく拒絶されることを想定し覚悟していたが、この辺りは有毛種に敵対的でないズリさんの基地から近いせいもあってか、一般人も有毛種をそれほど毛嫌いしているというわけではないようだった。

 お金を出せば普通に買い物もできたし、タルタルは旅慣れているようで値切り交渉までしていた。

「わ〜! 有毛種だ! モフモフ触らせて〜!」

 驚いたことに子供が寄ってきたりもした。

 村の中の世界しか知らなかったミスティアさんは面食らった様子で、はにかみながら対応していた。

「魔王城の近くとか兵士はね、やっぱり有毛種と見ると追いかけてくるんだけどね、一般の人はそうでもないかな! 敵意がないことが伝われば、案外普通に接してくれるよ。ズリさんにもらったスーパー通行証もあるし、そう緊張せずとも大丈夫だと思うよ!」

 タルタルは言いながらビンを傾けて液状おやつをぺろぺろと舐めていた。

「タルタル、それ、俺の手に持ったところから食べてくれないか?」

 ハァハァと息を荒げながら申し出てみる。興奮から心拍数が如実に上がっているのを感じる。

「え? 別にかまわないかな!」

 きょとんとするタルタルからビンを受け取ると、ちゅっと彼の口元に充てる。ぺろぺろ、ぺろぺろと少しずつ(したた)る液体を必死に舐めとるタルタルの姿はなんとも蠱惑的であった。

「モモモモモモ、モッファーーーーー!!!」

「タカシさんのモッファーにも、流石にもう慣れてきましたね」

 ミスティアさんがふふっと微笑んでいる。あぁ、ミスティアさん、いつかあなたにも液状おやつを手ずから食べさせてあげたい……が、流石にそれは俺の息子が活火山になってしまうので極力控えたい。


 そんなこんなでえっちらおっちらと歩を進め、初めての野宿や野グ……お花摘み等々を経験したり、魔法の練習も兼ねて機能不全に陥った人々を回復させたりしながら、いよいよ明日はイカップに入るというところで俺は自身の身体が悲鳴を上げているのを感じた。筋肉痛がちっとも治らないのだ。睡眠は充分に取っているはずなのだが、俺も御年43歳。回復力が運動量に追い付いていないのだろう。

 ミスティアさんに回復魔法をかけて貰えば良い話なのかも知れなかったが、なんだか恥ずかしくて言い出せなかった。

 好きな女の子にカッコ悪いところを見せたくなく、見栄を張ってしまったのだ。

 それがいけなかった。結果的に最悪にカッコ悪いことになってしまった。

 今晩は野宿をすることになり、俺は水汲み係を買って出た。そして、一人で河原まで行ったところで倒れた。高熱を出したのだ。

 道中からおぞましいほどの寒気に襲われていることには気づいていたが、今晩眠れば治ると自分に言い聞かせていた。が、この有り様だ。情けない。

 意識が朦朧とする。まずい、早く立ち上がってみんなのところへ戻らないと。

 だが、意思に反して俺の身体はどんどん河原の石と仲が良くなってしまう。

「もし……! もし! そこのあなた。大丈夫ですか」

 誰かの声が遠くで聞こえる気がしたが、エレクトか? なんだかいつもより声が低い気がする。前のめりに倒れてしまったので、姿を確認することが出来ない。こんな時に聞こえるのはあいつの声くらいじゃないだろうか。先ほど辺りを確認した時には、周りには誰もいなかったはずだ。まったく、変な喋り方しやがって。俺の記憶からあれこれ引き出したか、前の宿主から学習していたか。

「全然大丈夫じゃない……早く助けてくれ……」

「え……! わ、分かりました。とりあえず僕の家へ行きましょう。狭いですが、河原(ここ)よりはマシなはずです」

 ほら、やっぱりそうだ。一人称が“僕“の知り合いはこの世界ではエレクトしかいない。家とはあの宇宙空間の様な場所のことだろうか。意識だけ避難させて、身体はその後どうにかするつもりなんだろうか。

 ぷよん、と妙な感触が俺の身体に触れる。ちょっとひんやりしていて、今の俺には気持ちが良かった。エレクトは何を使って俺の身体を運んでいるのだろうか。変なもん使ってないだろうな。

「悪いな……礼はあとで必ず……とびっきりのDTPをやるからな……」

「DTP? なんのことだか分かりませんが、礼なら僕を殺してくれるのが良いなぁ〜。なーんて」

 何言ってんだこいつ……。お前に死とかそういうのあるのかよ……。

 そこから先は言葉になって口から出ることはなく、俺は完全に意識を失ってしまった。


 次に目覚めた時、知らない天井が目の前に広がっていて、隣には見たこともない青みがかったスケスケの全裸のイケメンが俺の寝顔を覗き込んでおり、叫び声を上げるとになるのであった。

FGO、周年が近づいてきましたね。今年の周年鯖は誰でしょうか。ドキドキします。

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