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賢者タイムの石  作者: 千日月
2章 ブラック労働温泉 イカップ
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2-3 虚無を駆ける

太陽がその姿を全て表す前に、プオーーーーとラッパ係が目覚ましのひと吹きを鳴らす。

僕はハッとして急ぎ身体を起こす。

寝汗が全身にびっしょりとまとわりついており、気持ちが悪い。

きっとまた眠っている間に呼吸が止まっていたのだろう。とても息苦しく、心臓が激しく鼓動するのを感じる。ふぅーふぅーと呼吸を繰り返し、息を整える。


あぁ、今日もまた朝が来てしまった。


眠っている間に死ねなかったことに絶望して頭痛がする。

立ち上がろうとする全身は重く、どこが痛いのか分からないほど身体中のあちこちが痛い。

ふらふらと水場にたどり着いたが、食欲はなく、とりあえず喉は乾いているので水と痛み止めの効果のある薬草だけを胃に流し込む。

昨晩は何時間寝られただろうか。二時間? それとも三時間?

日中の活動しなければならない時間には頭が重く、気を抜いたら倒れ込みそうなほどの眠気に襲われているというのに、いざ床に着けば神経はギラギラと冴え渡って休まることはなく、眠りに就くことができなくなってから一体もう何年経っただろうか。

いっそ病気になったり、倒れてしまえれば良いのに。忍耐力だけはあるのか、悔しいことにそうなったことは今まで一度もない。

上司に相談しても単純に僕の怠慢、自己管理がなってないと一蹴されるだけ。

薬草屋に行っても、あれに効くこれに効くと言われて高価な薬草を売り付けられたが、効果があった試しはない。

茶屋で気分の休まるお茶を何種類も試したが、なしのつぶてだ。

朝の眠気を吸い取っておいて、寝る前の身体に流し込めるような方法があったらとっくに試している。

原因はわかっている。明日が来るのが怖いのだ。無事に終わった今日をいつまでも愛でていたい。永遠にこの安寧が続けば良いのにと思っているからだ。

そも、自分に穴を掘る仕事は向いていないのだ。なぜ土竜人(モグラんちゅ)にやらせないのか。有毛種はダメ? こちらの知ったことではない。

自分の一族は本来ならば神事で舞を奉納したり、人々に音楽や娯楽を提供することを生業としていたはずなのだ。

来る日も来る日も薄給の重労働……だが、これしか今の我らには生きる道はない。僕たち海月人(クラゲんちゅ)は現魔王に屈したのだから。

死んだら楽になれるのかなぁと時々考えるが、現魔王の加護のせいで自死できなかった仲間を何人も見てきた。何が加護だ。こんなものは呪いだ。

生きていればいいことがあるさ! と明るい同胞は言うが、先が見えない生活に毎日窒息しそうになるのを耐えている。

「出勤する前からおうち帰りたい……」

くたびれたよれよれの作業着を着込み、割り当てられた小さな宿舎のギィギィ軋む扉を開け、足取り重い身体を引きずる様にして通勤路をトボトボと歩き出す。


僕の名はスケーケ。あぁ、誰かこんな生活を壊して、僕と一族の皆を救ってはくれないだろうか。

誰でも良い。有毛種でも、無毛種でも、神でも悪魔でも。

その願いが叶うのならば、なんでもするのになぁ。

「誰か僕を……殺してくれないかなぁ……」

朝の爽やかな風に、呟きはさらわれて消えた。

源頼朝爆死しました。


2022/7/6

頼朝さんじゃないよ、為朝さんです。

鎌倉殿見てるので混ざりました。

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