地獄の沙汰も金次第って本当?
こんにちは、私はクラミ。70歳で現世に別れを告げて今は地獄に雇用してもらってる。あの世で働いているモノは自分の好きな時期の姿に変化出来るため今は20代の姿で活動している。地獄の詳細について詳しく話したいのは山々だが、今はそれどころではない。緊急で閻魔に呼ばれている。閻魔はかなりズレている方だが仕事は出来る。頭は切れてガッツも溢ている、おまけに度胸も抜群である。計画性や先を見通す力も優れており、滅多にミスもしなければたまに起きるミスも自分で解決できる完全無欠の方である。そんな閻魔でも白旗をあげる案件が今私に降りかかろうとしているのだ、気が気じゃない。色々考えているうちに指定された料理店までやってきた。閻魔のいる部屋をノックをする。入れ、と声が聞こえる。
「失礼します」
「クラミ、よく来てくれた。早速だが本題に入ろう。今日呼んだのは女房の奪衣婆についてだ。」
閻魔の話をざっくり要約すると、女房の奪衣婆のファッションをどうにかしてくれたら褒美をやる、とのことだった。もう既に嫌な予感はしているが、いくつか気になることがあったので聞くことにした。
「いくつか質問させていただいてよろしいですか?」
「構わんよ」
「ありがとうございます。ではいくつか質問させていただきますね。まず奪衣婆様のファッションを具体的に教えてください」
「厚底サンダルにやまんばギャル」
「は?」
「それからルーズソックスにキャミソール」
「は?」
「それから..」
閻魔の話はしばらく続いた。完全に90年代のファッションだ。私の記憶が正しければ、奪衣婆は閻魔の究極の熟女好きに合わせて見た目60歳くらいの姿に設定して三途の川を勤務してる。ヤバい、本能が逃げろって告げている。ババアの痛い姿なんて誰が見たいんだ。そもそもあの世で受ける精神的負担は現世とは少し異なっており、大ダメージを受ける代わりに回復もかなり早い、という特性がある。あの世は肉体が無いため疲れが無くお腹も減らない、おまけに寝なくてもいいと最初は違和感があったものの、慣れればメリットしかないなぁと考えてた自分をぶん殴りたい。なんだ奪衣婆のやまんばギャルって。名前だけで化け物が2体いるじゃないか。ギャル衣装の婆なんて見たら心臓が飛び出るわ。生きてた頃に見ても目が飛び出るわ。てか三途の川で身包み剝がされる奴が一番気の毒だな。しかし立場上しょうがないからもう少しだけ話を進めよう。
「次の質問行きますね。どうして奪衣婆様はギャルになってしまったのか何か心当たりはありませんか?」
「おそらくだが、俺がギャル特集を読んでいたからだろう。あいつ、嫉妬深いからな」
「そうですか」
多分本当のことを隠している、半分くらい。噂に聞くと閻魔は女癖が悪くいろいろな女にちょっかいを出しているらしい。おそらくそれが原因だろう。閻魔の女癖の悪さと奪衣婆の前でギャル特集を読んでいた間の悪さが原因だ。解散。もうここにいてもしょうがない。こんなの死に行くようなものだ。席を立とうとしたとき、それを察してか閻魔が言う。
「まあまあ、今回の女房のファッションを改善する話は急ぐものでもない。せっかく良い店に来たのだから今日は一緒に飲もうじゃないか!」
確かにこんないい店滅多に来ない。あの世の住人はご飯を食べる、眠るなど肉体を動かすために必要なことを行う必要はない、のだが五感が無くなったわけでもないので食べることも寝ることも好きなら特に制限する必要はないのだ。ちなみに私は忙しい時以外は基本的には現世にいたころの習慣を大事にしているし、いい店での食事は正直心が躍る
「分かりました。お付き合いさせていただきます。」
「うむ」
2人の飲み会は続いた。私の相談役としての仕事や完全無欠の閻魔の仕事の悩みや愚痴など大いに盛り上がった。ちょうどいい具合に出来上がってきた頃、いきなり閻魔がとんでもないことをいう。
「女房が会いたいらしいから一目会ってくれ」
「!?!?!?」
90年代ファッション化け物と会うのか?冗談じゃない。生気を吸い取られる。
「もう既にこの料理屋に着いてるらしい」
何で呼んだ?あんた以外に耐性は無いのだが?完全に終わった。けどまだ死ぬと決まったわけではない。イメージトレーニングをすればどうにかなるかもしれない。瞼の裏で奪衣婆のやまんばファッションをイメージして実際に会った時のダメージを減らす。これしかない。死にたくなければ集中しろ。
「お!この足音は女房だ」
(集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代ギャル集中山姥90年代..)
「失礼するわ」
「おお、待っていたぞ。さあこちらへ」
ずっと目を閉じているわけにもいかないので覚悟を決める。大丈夫だ。イメージは出来ている。意を決して目を開ける。そこにいたのは..ゴスロリを着た老婆だった。
そこからの記憶はない。決して飲みすぎたとかではなくあまりのショックに気絶しただけである。ちなみに起きたら身包みを剝がされていた。なんだそれ、自分の姿を見せて何かアクションを起こしたら私刑をするって口裂け女の性質も兼ね備えているのか。化け物何段活用だ?
今日の教訓としてみんなに伝えておきたいのは地獄の沙汰も金次第っていうけどいくら金持ちでも払う隙なんて無いから黙ってメンタルトレーニングしとけよってことです。ではまた次回お会いしましょう。ばいなら~
この度は小説を読んでくれてありがとうございます。思いついたら書いて投稿していきたいと考えているので良ければまた目に留まったら読んでいただけるとありがたいです。では