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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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賢者のお話 賢者マルマン

この世の物事を知り尽くした者は賢者と呼ばれ、根拠もなく人々からの知識への欲望に絡まれる。

賢者も皆が皆、そう易々と教えてくれるような者ばかりではないというのに。


そんな事も知らず、二人の悪魔がある賢者にひたすら問いをかけていた。

一人は赤い髪に赤いスクール水着のような服を着た悪魔、デサイア。

もう一人は紫の長髪の頭に黒い二本の角、相方と同じ種類の悪魔だが紫色のスクール水着のような服を着て、紫の尻尾を生やしたキュバス。

キュバスはデサイアより大人びた顔だが、目の前の賢者のある行動に、子供のように叫び続けていた。

「だから、伝説の宝の在処を言いなさいって!!!」

賢者は得意気に返す。

「嫌じゃー。悪魔になど話すものか」

こんな事を言ってるが、その賢者の姿には威厳も何もない。

丸くて赤い球体に短い手足を生やし、今にも寝そうな細い目、白い長い髭を生やしただけの姿だ。

本当に賢者なのか怪しいが、こいつがこの辺の島々を知り尽くしている賢者マルマンである事は解明済み。

二人は必死で可愛い子アピールをしてみるが、全く通用しなかった。

「…」

しかし、長年蓄えた知識のなか、あるアイデアが賢者マルマンの頭に浮かんでいた。

「そうさな、腹が減ったから、バナナを持ってくれば宝の場所を教えてやるぞ」

バナナ…二人は顔を見合わせた。

不適に笑う二人…。



同時刻。

二人が頭に浮かべた人物…れなは、研究所の庭の草むしりに励んでいた。

たまには草をむしり、集めた草で工作でもしてみようかという独特な考えだった。黄色いバナナのようなツインテールを地面に垂らしても気にせず、草をむしり続ける。

「さ、これが終わったら一旦柳葉魚でも食べて休憩に…」


言いかけたその時、れなは頭上から物凄い殺意を感じ取った。

ふと空を見ると、赤い光と紫の光が、閃光を放ちながらこちらに向かってきていた!!

「っ!?ちょ!!」

さすがに避けきれず、れなはその二人にツインテール髪を掴まれる。


キュバスとデサイアだった。

二人とも舌なめずりをしながられなの髪をしっかり握って離さない。

「げ、お前らは!」

二人とは顔見知りなれなは急いで逃げようとする。

一方二人はれなの髪を引っこ抜こうと、より腕に力を込め始めた。

「ちょ、やめやめ、やめ!!」

飛び上がり、左右のデサイア、キュバスに両足で同時に蹴りをお見舞いするれな。

ダメージを受けた二人はさすがに手離し、れなは自由になった。

「私の髪で何をする気だ!昨日はあまり洗ってないんだぞ!」

「あなたの髪は賢者様への生け贄となるのよ!」

キュバスの発言に、ついに中二病をこじらせたかとれなは笑おうとした。

だが、直後のデサイアの台詞で、れなは態度を変える。

「賢者に頼めばどんな事でも教えてもらえるのよ」

れなは、それを聞くとある事への知識欲が芽生えた。

二人の事はあまり信じてないが、もしそれが本当ならぜひ知りたい事があるのだ。


「じゃあ、私はどうしてこんなに可愛いのか聞いてきてよ」

このれなの言葉を聞いた二人の顔は、まさに、は?と言いたげな顔だった。

口を開け、あまりの滑稽ぶりに笑いさえ込み上げてきそうだ。

だがある事を考えた二人は悪戯な笑みでれなに言った。

「それなら、やつが本当に賢者かどうか確かめる為の質問で聞いてみたわ。れなは周りからどう思われてるのか…と」

勿論嘘だが、れなは信じきっている。上から目線な事に、自分の事を質問してくれた二人を、少し見直していた。


しかし、そんな僅かに芽生えた信頼はすぐに崩れ去る。


「頭悪い腐ったバナナだと思われてるらしいわよ」

「んな訳あるかボケエエエエ!!!」

返答が来てから直ぐ様れなは怒り狂った。

腐ったバナナことれなは、拳を構えてデサイアとキュバスに突っ込んでいく。

二人は背中から翼を射出し、羽ばたいて風を引き起こす。

デサイアは緑、キュバスは青の翼だ。立派な翼から放たれる風は凄まじい勢いでれなの体を丸ごと吹っ飛ばす。

「ぐっ!だが!!」

れなは右手の平を二人に向け、エネルギーを集めた。

れなの右手が青く輝き、けたましい叫びが響く。

「オメガキャノン!!」

れなの必殺光線、オメガキャノンだった。二人は青い光に飲まれ、周囲の草は吹き飛ばされていき、光線に空の果てへと飛ばされていく。

そして、とどめはまとまったエネルギーが飛び散る爆発だ。空中で爆発に巻き込まれた二人は煙をあげながら派手に落下する。

「くそー!!!」

結局賢者が欲するバナナは手に入れられなかった。悔しそうに二人は遥か先の地上に落ちるのだった…。



一件落着。自分の髪を守る事ができたれなは、ほっと胸を撫で下ろす。


「やはり、ワシの思った通りじゃ」

れなの後ろから、老いた声がした。


振り替えると、そこにはあの賢者が立っており、れなを見上げていた。

さっきまでいなかったのに、当たり前のように出現している。

彼しか知らない抜け道でも通ったのだろうか。そうだとすればまさに賢者だ。

「お前にひとつ、何か知りたい事を教えてやろう」


ここでようやく、れなは彼が二人の言っていた賢者であると気づく。



「!」

これは、れなが知りたいある事を知るチャンス。息を吸い、れなは聞いた。


「…Fという男の事を何か知っていたら、教えて」

「良かろう」

あまり期待はしていなかったが、賢者は即答した。

驚きつつも、どこに持っていたのか直ぐ様メモ帳を構えるれな…だったが。


「…!」

賢者の体に、突然苦痛が走った!

年老いた賢者はそれに耐えられず、白目を剥いて気絶してしまう。

「ちょ、大丈夫!?」

賢者を抱え込み、町の病院へ向かう為、走り出すれな。訳も分からず、れなはFの疑問を後回しにするしかなかった。



「…知られては、困るからな」

茂みには、紫の球体から翼と丸い手足を生やした生き物…闇姫軍四天王の一人、デビルマルマンが、右手を向けて佇んでいた…。


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