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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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ルークワースの陰謀 虎型キメラヒューマンと鬼子

闇姫の城にて、闇姫軍にその力を貸している謎の組織が、闇姫軍最高の科学者であるガンデルにある映像を提出していた。

ガンデルはその蛙面に満面の笑みを浮かべ、広い広間の壁に映し出される映像に釘付けになっていた。

映っているのは不気味な笑みを浮かべ、片手が丸ノコギリになっている鉄の怪人と、半分人間、半分馬という奇妙な生物…。

二つの存在は、彼の興味を引かせるのに十分だ。

だがガンデルの横では、紫色の球体に翼と手足を生やした姿をした悪魔、デビルマルマンが不快そうな顔をしていた。

「ガンデル、目を覚ませ。悪趣味だ」

「デビル!これは世紀の大研究だぞ!?」

特にガンデルの目を引いたのは馬人間。二人を見ていた黒服に白髭の老人が、嬉しそうに笑っている。老人の右手には、青い液が入った注射器が。

「これを人に刺せば生物の遺伝子構造を強制的に変化させ、この生物兵器…キメラヒューマンへと変える事ができるのです」

ガンデルはますます目を輝かせ、デビルマルマンは大きなため息をつく。

「遺伝子の強制組み替えを施しつつもあそこまで安定した生命体を作れるとは!これを我らの軍にも取り込めば…」

「バリバ、お前との契約は破棄させてもらう」

デビルマルマンに長話を遮られ、白目を剥くガンデル。

バリバと呼ばれた老人の笑みが、別の笑みに変わる。彼の本性を色濃く表した、邪悪な笑みだ。

このような安全性の欠片もないような強制遺伝子組み換えなど、何が起きるか分からない。ライデンだってドクロ兄妹に敗北しており、第一単なる人間であるこのバリバがあの青年、Fを狙う理由も明らかになっていない。

「お前は何かと信用できん…俺は四天王だ。闇姫様に一声かければ、お前らをいつでも追い出せる」

「…そうですね。では、楽園を作り上げる為、Fを倒す…こう言えば見逃してもらえますかな」

舌打ちするデビルマルマン。

「とにかくまだまだ貴殿方はキメラヒューマンもライデンも実力を見誤ってます。ご安心なさい。すぐに結果を出しますとも…」



…その頃、とある寂しい山奥で、銃声が響く。

平和な青空の下でライフルで発砲していたのは、緑のサイドテールを揺らす葵だった。

その横には赤い髪に赤い着物、背中に鞘に入れた鎌を持つ少女が…。

彼女は鬼子きこ。れなたちの友人の旅人だ。

「鬼子、銃は良いわよ。遠くから狙えるし威力も高いし何よりかっこいい」

二発目の弾丸を大木に放つ葵に鬼子は面倒臭そうにため息をつく…。

銃は葵の代名詞であり、生き甲斐なのだ。




そんな生き甲斐を鬼子に叩き込んでいる葵だったが…。


「…!葵!静かに!!」

葵の引き金を引く指が止まる。



周囲の暗闇に耳を澄ます鬼子。

何かが近づいてきているようだった。


この気配は…獣だろうか、それとも人だろうか。

二人ともサバイバル生活を送っており、気配で相手の気配は大体分かるつもりだったが、この気配は全く読めない。

野生ならではの荒々しい動きと、人ならではの知性のある動作をしている事が、空気の流れで分かった。



そして、その気配は急激に速くなっていった。


「危ない!」

葵が鬼子を蹴っ飛ばす!

蹴飛ばされた鬼子は顔面から地面に叩きつけられ、苦痛に顔を歪める。

「あ、ごめんね」

駆け寄ろうとする葵だが、どうやら今はそんな状況ではないらしい。


二人のすぐそばに、敵はいた。


茂みからこちらを睨み付ける恐ろしい虎の顔があった。

一見虎かと思ったが、違うようだ。

頭は虎だが、体は白いスーツを着た人間だ。

よく見ると四肢も虎のものであり、鋭い爪が白く輝いている。

「ほほう、お前らが闇姫軍と対立している連中か…予想してたより弱そうだ」

闇姫軍というワードに、葵は虎にライフルを向ける。

虎…いや、虎人間は臆する事なく喋り出す。

「言っておくが、私は闇姫軍ではない。闇姫軍と協力関係にある売買組織、ルークワースの者だ」

どこか上品な声で話す虎人間。

ルークワース…鬼子は長旅のなか、聞いた事があった。

「確かそれ、裏社会に出回る黒組織…」

「そうだ。そして私は彼らに作られた超生物…キメラヒューマンだ。地上のどの生物よりも速く、そして優秀な頭脳を持つのだ!」

さすがにそれはないだろと首を横に振る鬼子。

それにしてもキメラヒューマンとは奇妙な名前だ。鬼子も葵もこれは聞いた事がない。

虎人間は両手を構えつつ、下半身にどっしりと力を込める事で力強い構えをとる。

この威嚇姿勢を崩さないまま、虎人間は続ける。

「さて本題だ。貴様らFという男を知らないか」

葵が反応する。

F…前にれなとラオンが会い、事務所に来た彼だ。

何が目的か知らないが、こんな怪しいやつに情報を漏らす訳にはいかない。


「悪いけど、あんたにFの事は教えないわ」

「そうか。ならば、ルークワースの科学力を見せてやろう…」

虎人間は虎らしいうなり声をあげたかと思うと、一瞬にして葵の真横を通り抜けた!

草や木すら動かさない、凄まじく繊細な動きだ。

それでいて、攻撃力は抜群。葵の頑丈な髪の毛が何本か切り裂かれ、宙を舞っていた。

「葵!…女の髪を野蛮に切るなんて、最低よ」

鬼子は鎌を虎人間に向け、睨み付けていた。

先手必勝とばかりに飛びかかってくる虎人間!鬼子はその突進を、鎌を正面に構えて受け止めた。

凄い力だった。鎌が折れてしまわないか心配になるほど。

しかし幾多の敵を切り刻んできたこの鎌は簡単には傷つかない。

鬼子は鎌で逆に押し返し、虎人間を仰け反らせ、怯ませる。

その隙に鎌を振り上げ、虎人間の体に斬撃を炸裂させてみせた!

空中に吹っ飛ばされる虎人間は、酷く驚いた顔をしていた。

「バカな!キメラヒューマンである私がこんなやつらに…!」

どうやら生物兵器として絶対の自信を持っていたようだが、葵たちは生物兵器をも凌ぐのだ。

地上に落下する前に、葵が虎人間の腹部目掛けて落下、両足で派手に踏みつけ、ケリをつけた!

土砂が吹き荒れ、静かな森に一瞬で巨大な豪音が響き渡った。


「ぐ…な、なぜ!私はキメラヒューマン…」

その言葉を最後に気絶する虎人間。

こいつは…どこか遠くの島にでも送り込んだ方が良さそうだ。


キメラヒューマンにルークワース…。


世間の裏に隠れる二つの存在。

彼らが闇姫軍などと何をするつもりなのだろうか…。

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