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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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ルークワースと闇姫軍

「ライデン、帰還しました」

ドクロマークに丸い手足を生やしただけの簡素な姿の兵士が、ある人物に敬礼する。

深緑色のデフォルメ化した蛙のような姿をした怪人が、敬礼に対して白衣を翻す。

ここは少し前にれなたちを襲撃した闇姫軍の本拠…漆黒の城だった。

蛙怪人、ガンデルは兵士の頭を軽く撫でた後、すぐ後ろに立っている黒いツインテール髪に赤い左目、翼のような眼帯を右目につけた女、闇姫に敬礼する。

「闇姫様、ライデンが帰還いたしました…」

「ごくろう」

闇姫は黒いハイヒールの音を無機質に響かせながら、廊下を歩いていく。そんな闇姫に、ガンデルは耳打ちする。

「あんなやつらを信じて良いのですか…」

「利用する物は利用する。使い物にならなくなるまでな」

闇姫がしばらく歩いていくと、一際大きな赤い扉の前に辿り着く。

ゆっくりと扉を開く闇姫。



扉の先には、長いテーブルが置かれた広間になっていた。テーブルの上にはワインやチキンが並べられ、それらに手を伸ばすのは黒服の男や女たち。

見たところ、闇姫のような悪魔でもガンデルのようなモンスターでもない…ごく普通の人間だ。

「やあ闇姫様。ここは実に良い場所ですね。ワインも美味いしチキンも旨味がある。人間が目指すべきエデンそのものだ」





彼らの代表と思われる長い白髭の老人が、骨付き肉を右手に闇姫を見つめていた。

その目は穏やかだが、何かが違っていた。

穏やかさのなかに、隠しきれない荒々しい本能を感じる。今にも血走りそうな、異様な目だ。

…面倒な奴らを城に雇っていた闇姫は、ため息をつく。老人は胸元の赤いリボンを左手でいじりながら肉に食らいつき、何やら余裕の態度だ。

憎たらしい様子の老人に、闇姫の背後の兵士達は今にも殴りかかりそうに震えていた。だがやはり闇姫は全く動じず、ただ老人の目を呆れ気味に見つめていた。

「早速本題を言わせていただくと…ライデンを目的以外に仕向けるのはやめていただきたい。我々の目的はあの死神兄妹でもアンドロイドたちではありません。あの男…Fです」

闇姫は、彼らの目的がFである事は事前に聞かされていた。

Fとはまだ会った事がない闇姫だが、何か強力な力を持つ青年が彷徨いている事は、大気中の魔力の流れから既に察していた。

…彼で何をしようとしているのかは分からない。

まあ、期待はしていなかった。

「Fを放っとけば必ずや貴殿方闇姫軍の脅威となるでしょう。その為に、やつを一刻も早く捕らえ、始末するのです」

老人はそう言うが、闇姫は騙されない。

こいつの目には、偽りが混じっている。淡々と嘘をつけるようなその余裕ぶりと、狡猾な思考回路…闇姫は、舌打ちした。

「どうです?まずは小手調べでもしてみては?」

老人の目は、不気味なオーラを放っていた…。





二つの組織から狙われてるF…今では、テクニカルシティから離れた小さな山の獣道を歩いていた。

風が強い。木からは葉っぱが飛ばされ、Fの青いコートに張り付こうとして来る。

「…クラナ、お前はどこに…」

青空を見上げるF。見つからない妹に対して募るのは不安ばかり。

れなたちの前では一切見せない表情を浮かべていた…。



「…っ!!」

突然、Fは周囲に強い殺気が集まってきたのを感じ取った。

一番強い殺気は…背後からだ。


直ぐ様体を右に傾けるF。

直後、Fの真横に黒い矢が通過し、木に深く突き刺さる。


振り替えると、そこにはドクロマークから短い手足を生やした姿をした小さな兵士が、その丸い手で器用に矢を構える姿が。

よく見ると周囲の草むらに無数の兵士達が。槍や剣を持っており、Fへの殺意が剥き出しだ。

「そんなに殺意を出すと虫一匹殺せんぞ」

一斉に向かってくる兵士達!

Fは跳び跳ね、近くの木の枝に掴まり、そのまま派手に前回りをする。

回るFの足が地上の兵士に炸裂し、早速三人ほど気絶させた。

それでも兵士達は臆する事なく武器を片手に走ってくる。度胸だけは一人前だ。

Fは蹴りや拳で兵士達を吹っ飛ばし、確実に倒していく。

最後に角が生えたエリート兵士の背後からの襲撃が飛んで来たが、Fは華麗な後ろ回し蹴りで彼を蹴落とした。

あっさりと敗れた兵士達。

Fはまだ意識を保ってる彼らを一人ずつ掴みあげ、こう怒鳴った。

「桃色の服を着た少女を見なかったか!!」

「み、見てません見てません知りません!」

どいつもこいつも返答は同じ。本当に同じで、見てません見てません知りませんと誰もが揃って口ずさむ。

…団結力は相当なものだ。

それはさておき、Fはまたもや見つからなかった妹の足跡を再び探す事となってしまった。


「…」

やはりれなたちに相談した方が良かっただろうか…?

このまま探し続けてもキリがない。無駄な戦いを続けるだけだ。

クラナの為にも、ここはれなたちを頼った方が…。


…いや、そうはいかないと、Fの中にあるものが激しく拒絶する。

このまま証拠を見つけるまで一人旅を続けるだけだ。


「…ん?」

嫌な予感がした。

兵士達とは比べ物にならない何かが迫ってくるのを感じたのだ。

少し焦って周囲を見渡すが、誰もいない…。


…だが、確かに敵はいた。

Fの頭上に。


「!!」

Fの頭上から落っこちてくる黄色い丸ノコギリ!


間一髪でかわすが、ノコギリの勢いでその場の地面が歪んでしまった。

叩きつけると同時に周囲に電気が駆け抜け、黄色い電流が地上を駆け抜ける。


「…っ!」

Fを襲った、新たな襲撃者。

それは、闇姫軍が送り込んだ謎の敵、ライデンだった。

不気味な笑顔はドクロたちと戦った時と何一つ変わってない。

ライデンはノコギリを振り下ろし、地響きを起こし、亀裂を発生させながら走ってくる!

そして、Fをノコギリで真っ二つにしようとノコギリを上下に振り回しながら近づいてくる!

「お前は…ライデン!」

Fはこいつを既に知っていた。後ろに下がってノコギリを回避しつつ、両手を構えて反撃姿勢を取る。

攻略法も知っている…初対面ではないのだ。

ライデンは唐突にノコギリを横に振ってくるが、Fはそれにも対処、バク転しつつ、左右交互に足で蹴りつける。

さすが、容赦無しだ。


(こいつばかりは俺一人ではどうにもならん…!)

Fはライデンの隙を見て、悔しそうに歯を食い縛りつつも背を向けて逃げていく。


その光景は、監視者の目にしっかりと映っていた。


森の上空で、灰色の翼を広げて飛びながらFを見下ろす闇姫に、Fは気づいていなかった。

「なるほど、ただの小僧ではないようだ」

闇姫は不適な笑みを浮かべ、空の果てへと飛んでいった…。

同時に、ライデンもFが逃げるのを見て、森の奥へと去っていった…。

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