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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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桜と共にある未来

時の流れを示すかのごとく強く地上を照りつける夕日のなか、男とFは殴りあっていた。

…男の拳の方が、遥かにFに当たっていた。

一発殴られる度にFの息が一瞬止まり、そしてその度に再び動き出す。

振り上げられる男の拳を下がってかわし、逆に拳をお見舞いしようと突きだすも、容易く弾かれ、逆に回し蹴りを叩き込まれる!

背中を蹴られ、前に倒れそうになるF。

直ぐ様横に転がりつつ体勢を整え、今度は飛び跳ね、踵を振り下ろす!

男のスキンヘッドに直撃する踵落とし。しかし、痛むのはFの足の方だった。

「ハゲは強ぇんだぜ?」

男はFの足を掴もうとする。もう一度へし折ろうとしたのだ。

だがFは両手の平を男の目の前で叩きつける猫だましを繰り出し、何とか退ける。

だが男は怯む時間も短かった。

すぐに立て直し、落下するFの体に膝蹴りを叩き込む!

「ぐは!!!」

血を吐くF。しかしながら流れる自分の血にも一切の動揺も見せず、何とか着地し、男の顔面に蹴りを叩き込む!


男は思ってた以上の反撃に胸を踊らせているようだ。その顔は尚も傷つかないままだが、はっきりと喜びが浮かび上がっている。

「そろそろこいつを見せて良いか?」

男はその大きな体で軽快にFの背後に回り、右腕のオレンジの入れ墨を黄色く光らせる!

すると周囲に衝撃波が放たれ、Fは吹っ飛ばされる!

攻撃が読めず、飛ばされるままのF。男は地を蹴って空中のFに拳を叩き込み、そこから頭突きもお見舞いする!

Fの意識が一瞬飛びかけるが…。

「ふん!」

男は左腕の緑の入れ墨を輝かせつつ、Fの頭を叩く。

すると、薄れていた意識が戻ってくる。

あまりにも状況が変わるので、Fは完全に置いていかれている。

地面に派手に落下したFは傷だらけだ。

腕から血を吹き出す。それでも彼は男を睨み付けていた。


「こいつは俺が自分に刻んだ入れ墨だ。お前の導狼の証のプロトタイプ、とでも言うべきか?だがこれ一つだけでも導狼の証の倍以上の性能があるぞ」

左腕を回して男はFを煽る。

…このままでは勝ち目がない。

「俺の意識を戻しやがったのか…。より痛め付ける為に…!」

「おい、そりゃ違うぜ」

男は先程の技でFの意識を取り戻した理由を話す。


「俺は見てみたいんだよ。お前がどれだけ生きていきたいのか。自分が良かれと思った道を歩む覚悟があるのか」

先程から何様なのかとFは拳を構える。

男も腰を深く落とし、Fを睨む。そして、指を振って何かを誘う。



「早くお前の覚悟を見せろ」


…その一言で、Fは悟った。

自分がどんな攻撃を撃てば良いのか。





「…分かったぜ」

Fの導狼の証が輝く。


…強く輝きつつも、Fは苦しそうに呼吸を乱す。

もう魔力も体力も少ない。この状態で導狼の証に力を巡らせるのは、はっきり言って自殺行為にも等しい。

…だが、これで良いのだ。


Fはよろめく足を必死で止めながら、右腕の拳を握る。

握ると同時に腕から血が流れる。もはやこの腕も長くは持たない。


…青い光に照らされながら、男は笑った。

面白そうな笑顔で、Fを見つめていた。

「良い覚悟だ坊主。さあ、やってみろ」

男の胸の赤の入れ墨が光りだす。


Fの視界がぼやけていく…。意識を失う寸前だ。

それでも、それでもこいつには見せなくてはならない。

力を、覚悟を、必ずここから生きて帰る、勝利してみせるという意思を。





…また仲間達に会いたいという思いを。









また妹の頭を撫でてやりたいという思いを。









「おいおっさん!!!」

Fの拳が、目映い光に包まれる!

男は目を見開き、綺麗な白い歯を見せて笑った。


「上から目線も、いい加減にしやがれぇぇぇぇぇぇ!!!!」





…Fの左目が、赤く光った。

青と赤の眼光が、男に放たれる。

凄まじい勢いで飛び出し、足元の山を破壊しながら男に向かう!

そして、全てを決める覚悟で突き出す!!

男は入れ墨の力で纏った光の壁で拳を受け止める。

恐ろしい程の圧力と魔力のオーラが、空間全てを揺るがす!!





…白い光が、Fの目の前に広がる。





Fの耳に、何か声が聞こえてきた。

聞いた事のないような声が。






「お前は、フューガ。ファン・マリス・フューガだ。俺の息子、お前は未来の俺だ」





Fは…フューガは、目を見開いた。












…山が、崩壊した。












瓦礫が空を舞い、夕暮れの空は鈍く光っていた。

Fと男は、宙に立っていた。




Fは、男に拳を突きつけたまま動きを止めていた。

赤い目は元の青い目へと戻っていた。


男はFを見下ろして言う。


「フューガ。それがお前の本当の名だ」




…自然と拳を下ろすF。


血にまみれた導狼の証は、光っていなかった。

男の入れ墨も光っていない。



…もう、拳を解いても良いようだった。



「リューガが…親父が、俺につけた名前か?」

「リューガの事だ。フューガのフューとは未来という意味合いがあるんだろうな。つまり、やつが自分の後継者に選んだ男。お前は、他人を微塵も信用しなかったリューガに、唯一信用された男なんだよ」


フューガは、唖然としていた。




そして、気づく。



男の胸に、赤い傷がついている事を。まるで切り傷のような、異様な傷だった。

「お前の生きる意思、効いたぜ」

男は、フューガの頭を撫でてやった。




…周囲は徐々に白い光に包まれていき、やがて真っ白な空間になる。




「お前に導狼の証を授けて良かった。お前ならきっと、色々と救っていけるだろう」

背中を向ける男。

果てなく続く真っ白な空間を歩いていく。

フューガは、それを呼び止めた。


「ま、待て!あんた何者なんだ…?」

男は立ち止まり、背中を向けたまま、上を見上げた。

空も日の光もないというのに、眩しそうに右腕で顔を覆う。


「俺は導者(どうしゃ)。運命を導く者だ」



…光は、導者を包み込む。











「…!」






…Fは、目覚めた。

Fの周りに広がるのは、白い壁と天井。

無数の機械が置かれており、自分はベッドで眠らされていた。

隣を見るとクラナが眠っている。



…テクニカルシティの研究所だった。

「お目覚めかい?」

研究員が部屋に入り、美味しそうなスープを持ってきてくれた。

温かい香りを嗅ぎながら、Fは呟いた。


「…良い夢を見ていたよ」

スープをFの横の机に置く研究員。







「なあ、クラナ」



研究所の庭に出たFとクラナ。

クラナの左手には、兎のぬいぐるみ、ラミが大切そうに抱かれていた。


「俺が好きか?」


「大好きだよ!お兄ちゃん!」

Fに右手を差し出すクラナ。






「…俺もだぜ」

小さな手を握るF。






二人の人生は、ここから始まるのだ。

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