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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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兄弟と兄妹

突如現れたエメラルド色の髪の青年。彼を見て、アメジストは確かに呟いた。


「…兄さん…?」

青年は、アメジストを見て頷く。



…勇者エメラルドの再誕だ。




「…どういう事だ?」

右腕を見つめるF…。

エメラルドは、導狼の証で復活した。しかし、彼から感じられる魔力は、導狼の証の魔力だけではない。

勇者本来の力も、修復されていたのだ。

その魔力を感じとりながら、粉砕男が考察した。

「…復活のトリガーとなったのは導狼の証だろう。しかし、あの欠片にはあそこまでの力はなかった。…つまり、今までアメジストがこなしては失敗していた儀式で、復活に必要な魔力を密かに充填してたのか…?」


…アメジストが、弟の彼がいなければ、エメラルドはこうしてここに立っていなかったという事だ。


エメラルドが次に視線を向けたのは、Fだった。

…美しい瞳だ。エメラルド色の瞳の奥に、まるで水のような輝きがある。


「欠片の時の記憶、そして弟からもらった魔力と一緒に流れた記憶で、大体の状況は把握している。F、君の妹は必ず救ってみせる」


…エメラルドの鎧は、アメジストと同じ銀色で、宝石のエメラルドが嵌め込まれている。

勇者の鎧だ。


「…っ!」

今まで冷静だったクラムアが、突如飛び出してエメラルドへ向かっていく!

目の前で一旦止まり、そこから足を振り上げて彼を蹴飛ばそうとしたが…。


エメラルドは、彼女の足を右手だけで受け止める。

クラムアの目が見開く。

エメラルドは無言のまま、クラムアの体を掴んで空中に投げ飛ばした!

飛ばされつつも体勢を立て直そうとするクラムアだが、時既に遅し。

エメラルドは間髪いれずに空中へ飛び出し、クラムアに両手の拳を振り下ろす!

クラムアが地面に叩きつけられると同時に、れなたちははっきりと感じた。

地球全体が揺れたのだ。


「…くそ!」

クラムアは舞い上がる土砂の中から飛び出し、エメラルドへ突きや蹴りの打撃の嵐を仕掛ける!

だが伝説の勇者エメラルドは、表情を一切動かさずにその打撃を軽く払っていく。

クラムアの顔は必死だ。

遥か上空で戦ってるにも関わらず、地上には暴風が発生していた。

顔を覆うれなたち。


「っ!?」

クラムアが一瞬、本当にほんの一瞬だけ突きを止めると同時に、エメラルドは彼女の腹部を殴り付けた!

血を吹き出すクラムア。


「すまん!」

クラムアをある程度弱らせなければ、クラナを救い出せないという事に気づいていたエメラルドは、彼女を容赦なく殴り付けだす!

苦悩に満ちた表情を浮かべつつも、確実にクラナ救出へ向かっていると、拳を休めない。

クラムアは苦痛に満ちた表情だ。

「くそ!くそ!あぁ…くそっ!!」

荒ぶるような声をあげながら、クラムアは両手で顔を覆う。


「諦めろ!クラムア!」

エメラルドは右手を振り上げ、手の平にエメラルド色の光弾を召喚、それをクラムアに投げつけた!


「いやああ!!」

凄まじい大爆発が発生する。

エメラルド色の光が夜空に飛び交う。

…いや、壮絶な戦いでもはや見えていなかったが、暗かった夜空は異様な程に光る星達で明るく照らされていた。




光に照らされながら、勇者は空中に佇んでいた。

呆然と見上げるれなたち。

…そして、笑顔を浮かべるアメジスト。


「…兄さん、あなたは、ずっと俺の憧れだ」

その一言を境に、アメジストは意識を失った…。





…爆発が止み、一つの影が地上へと落ちる。



…砕けた地面に叩きつけられるクラムア。体のあちこちから血を流し、額から顎の辺りまでが乱れたように赤く染まっている。

エメラルドは直ぐ様目の前に降り立ち、彼女を見る。


…殺意に満ちたクラムアの顔を見て、エメラルドは悲しい目を見せた。

「…何よ。ど、同情なんていらない。早く殺しなさいよ」

「…助けて、と言えないのか」

立ち上がるエメラルド。


「…クラナは、思い悩んでいたんだろ。悪の塊である自分が、果たしてこの世にいて良いのかと。自分達に、生きる価値はあるのかと」

「は…?」

震えるクラムアは、右手を突きだす…。まだ、やる気だ。



…そんな彼女に、エメラルドは近づく。




「やめるんだ」








そっと、抱き締めた。







クラムアの目が、また見開いた。

しかし、先程とは違う。何か違うものを感じ取ったような目だ。





「君は、いて良いんだ。生きてて良いんだよ。幸せになって、良いんだよ」








豪音が響いていた戦場に、沈黙が走った。






…いつの間にか、エメラルドはクラムアを放して、手元に何かを持っていた。

兎のぬいぐるみだ。

…クラナの宝、ラミだった。


「これを、森に落としてたよ。れなが、密かに拾ってくれたんだ」


クラムアの手が自然に動き、気づけばラミを抱いていた。

顔は、まだ何も追い付いていない。






「れな…であってるよな?」

エメラルドが振り替える。


「このぬいぐるみからは君の強い念を感じる。…今会ったばかりの俺では彼女の心を癒せない。次は君が、抱き締めるんだ」

「いや」

エメラルドの提案だが、れなはもう一つの提案でそれを押しきった。









「私でもダメ。Fが抱いてあげて」

れなの視線がFに向く。










…クラムアを除く全員が、Fを見つめていた。


荒れ果てた焦げ臭い大地の上で、何か温かいものを感じられた。



「Fが一番クラナの事を思ってきた。いつもクラナを守ろうとして、死にかけて…。自分が何者なのか知った時も、本当はもっと叫びたかったでしょ。でもクラナに心配かけたくなくて、平気なふりしてたんだよね」







「…」







黙ったまま、無表情でクラムアへ向かうF。


彼女の前に立ち、そっと膝を曲げる。

青いコートが、フワリと揺れた。





「クラナ…。そして、クラムア」

両手を広げるF。彼女を抱き締めようと、ゆっくりと近づく。









…だが。








「っ」

Fは、言葉にならない声をあげかけた。









…先に抱きついてきたのは、クラムアだった。

「…お兄ちゃん」

声が震えていた。








彼女の肩を、優しく撫でるF。



「…あっ」

クラムアが真っ赤な顔で、涙を流しながら地面を見た。


思わず落としていたラミが、無造作に転がっている。

急いでラミを拾い上げる。


…周りにいたれなたちの方を見渡す。


「ごめんね」

れなたちは、優しく笑っていた。



背を向けたまま、俯くFに、エメラルドが駆け寄る。







「君は、良き兄だな」



















…Fは、泣いた。

泣きながら、クラナの、そしてクラムアの涙を指で拭いた。




彼女を抱き締めながら。








「…大好きだよ、お兄ちゃん」

「…クラムア、クラナ。愛してるよ」








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