伝説の再臨
「しぶといわね。屑は眠る時間よ」
クラムアは右手の平を向け、桃色の魔力波動を発射した!
地面に巨大な地割れが発生し、倒れていたれなたちは容赦なく直撃、空中の仲間たちもその一撃で落とされてしまう。
「こ、ここまでなのか…!?」
全身を関節から軋む音を鳴らしながら、テリーが叫ぶ。
誰もがここまでかと思ったが…。
波動を撃ち終えたクラムアの頭上に輝くエメラルド色の閃光!
「!」
クラムアは驚いて空を見上げる。
…れなとFの目の前に、一人の戦士が舞い降りた。
アメジストだ。
体にエメラルド色のオーラを纏わせ、その力をクラムアに見せつける。
今までになく腕のたちそうな相手の出現に、クラムアはより深い構えをとる。
「…まさか、君がリューガの血を引いていたとは」
アメジストは、クラムアの魔力から彼女の正体を瞬時に見切る。同時に、手元にエメラルド色の宝石が嵌め込まれた剣を召喚し、紫のオーラも纏い出す。
はじめから本気状態だ。もう出し惜しみをしては勝てないと理解したのだ。
「少しは腕がたちそうね。あんたも一緒にころ…」
クラムアの余裕の笑みが、一瞬で崩れ去る。
アメジストは、光よりも速くクラムアのすぐ横を失踪し、居合斬りを決めていた。
クラムアの脇腹から血が吹き出す。それを見たFが血相を変え、叫ぶ。
「ま、待ってくれ!」
「大丈夫だ。殺しはしない。絶対助ける」
目だけを動かすアメジストを見て、次に表情を変えたのはれなだった。
…殺しはしない。
リューガの姿が、頭に浮かぶ。
クラムアは脇腹の傷を瞬時に再生し、同時にオーラを纏い出す!
その勢いは凄まじく、クラムアを中心に更に大地が割れていく!
森の木々は次々に倒れ、テクニカルシティ、テクニカルシティの隣町、海、そして海の向こう側と、魔力がとてつもない勢いで大気を振動していき、やがて地球全体を揺るがす程になる。
倒れながらも必死に大地にしがみつく一同と、表情一つ変えず、クラムアのオーラの流れを読み取るアメジスト。
先程まで桃色一色だったクラムアのオーラは、赤や黄色と色が入っていき、最終的に虹色に染まる。
幾つもの色が混ざりあった虹色。不安定な、混沌のオーラだ。
クラムアは全オーラを右手に集め、アメジストの顔面目掛けて拳を突き出す!
アメジストは剣を構えて受け止めた!!
剣と拳の間に、星を形成せんばかりのエネルギーが発生し、白く光る。
…ほとんどの仲間たちは二人の戦いに目をとられて気づかなかったが、Fの右腕の導狼の証が青く光った。
光ると同時に、クラムアとアメジストを包み込む青いバリアが出現した。
バリアの中で、白い光は大爆発を引き起こし、とてつもないエネルギーを撒き散らす!
しかし、バリアはびくともしない。全てのエネルギーを内側に収縮し、本来であれば最低被害でも確実に星を半壊させるであろう爆発を、ほんの四秒ほどで終わらせた。
…バリアは霧のように消えた。
「…っ…!」
…アメジストは今の爆発に直撃し、大ダメージを受けていた。
仲間たちの視線が、一気に曇る。
クラムアも体から血を流しているが…笑みを浮かべたまま再生していく。
あまりにも回復が早すぎる。戦況は…アメジストが確実に不利だ。
だがアメジストは目の前のクラムアではなく、バリアを発生させたFに視線を向ける。
「…僅かにバリアからもリューガの魔力を感じた。君もリューガの子か。なら、この大防衛魔術も納得だ」
…アメジストの鎧はひび割れ、顔面も左半分に大火傷を負っていた。
「…何が起きたのか分からないけど、こんな程度、掠り傷にもならないわ」
クラムアが少し体を震わせると、全身の傷が一瞬で再生する。
それを見たアメジストの顔は、笑っていた。
「…はは。参ったな」
クラムアはアメジストの顔面に蹴りを決め、彼の火傷に追い討ちをかける!
吹っ飛ばされるアメジストにクラムアは両手から桃色の光弾を放ち、とてつもない追い討ちを浴びせる!
剣を手放してしまうアメジスト。同時に剣はエメラルド色に光り、光が刃から分裂、地面に置かれると同時に、何かに変化した。
…それはエメラルド色の石。勇者エメラルドの魂の欠片。
「…あれは!」
地に伏したままドクロが声を上げ、そのすぐ横で粉砕男が状況を理解した。
「…欠片を剣に宿す事で、力を高めていたのか…?」
勇者の力というのは未知数だった。
…しかし、その力を高めていた欠片が分離した今、アメジストは…。
「なら、無力って事ね!」
クラムアが、倒れたアメジストを蹴っ飛ばす!
何回転も回りながら宙を舞い、叩きつけられるアメジスト。口からは血を吹き出しつつも、その目はクラムアを睨んでいた。
…だが、内に秘めてるのは自分自身への怒りだった。
(…こんな事でどうするんだ。こんな程度で、彼女を救えるのか!俺は、どこまで不甲斐ないんだ!!)
魔王へと堕ちた自分を思い出すアメジスト。
「なに?その目は」
仰向けのアメジストの顔面を鷲掴みにし、無理やり立たせるクラムア。
血まみれのアメジストの顔面を更に殴り付ける。彼の目を目障りとばかりに。
…今のクラムアは、真の自分を取り戻して気分が良いのだ。アメジストのこんな目を見れば、苛つくのも当然だ。
…怒りを浮かべてるのに、どこか哀れみにも見える…そんな目に。
「その目をやめなさい。…早く、死にやがれ!!」
今まで以上に力を込めた拳が飛んでくる!
アメジストの髪が、そのあまりの力で風に吹かれるように揺れ動いた。
目を閉じるアメジスト…。
(…兄さん、ごめん。俺は兄さんのようにはなれないよ)
「うっ!」
…突如、クラムアが苦しそうな声をあげた。
アメジストを放し、周囲を見渡しだす。
困惑するアメジスト…。
…周りには、青い光が満ちていた。
勿論驚いてるのはアメジストだけではない。
れなたちもそうだ。
…だが、れなたちはその光がどこから放たれてるかを分かった上での驚きだった。
…Fの導狼の証、そして、地面に転がったエメラルドの欠片から、青い光が放たれていたのだ。
二つの光は、互いに呼応しあうようにゆっくり点滅している。
「…!ま、まさか…!」
粉砕男が呟く。
…その、まさかだ。
「や、やばい!」
その光を見て、クラムアは嫌なものを悟ったらしい。
らしくない走り方で、地面のエメラルドの欠片へ向かう!!
「させるか!」
れみが小さな体を震わせながら、右手の平からレーザーを放つ!
クラムアの手に直撃し、彼女の動きを止めた。
光はどんどん強くなっていき、何かの形に変化していく。
…足、体、両手、頭。
人間の形へと…。
「…あっ」
アメジストが、小さく声をあげた。
青い粒子は、だんだんとエメラルド色に変色していき…。
「…」
光が、消える。
…そこに立っていたのは、アメジストにそっくりで、けれども、髪も瞳もエメラルド色一色の青年だった。




