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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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キメラヒューマン

Fの妹クラナをさらった謎の組織。彼らがいつ町にやって来るか分からない。

そんな状況に備えるれなたちがまずする事はやはり修行だった。

「今日はこの森を四百周するぞ!」

れなとラオンの前に、色黒で筋肉質、二メートルほどの身長に白目を剥いて、黒い服を着た怪人が右手を振り上げていた。

彼は粉砕男。見た目はすごい迫力だが、れなたちの頼もしい味方だ。

「粉砕男ー、森を四百周はもうきついよ。たまには別のにしない?」

「んー、そうだな。ではどうする?」

このように、彼は味方のペースにあわせてくれる。れなは彼の性格を利用し、楽な修行にしようと目論んでいた。

「じゃあ、その辺に落ちてる石ころで鼻をほじって痛みに耐える修行を…」

「四百周で」

ラオンが横から入ってきた…。粉砕男も、迷わずそれに頷いた。


「ひーひー、疲れたよー」

れなは二百四周でもう息をあげた。人工の肺を荒げながら、汗を流している。

ラオンはまだまだ余裕そうだ。視界の横を過ぎていく森の木々を横目に、前へ前へと進んでいる。

れなは手頃な大きさの岩に腰掛け、手で顔を扇いでいた。

今日のれなは特別やる気がない。いつも家でのんびりしているぶん、体がなまっているのかもしれない。

そのなまりきった体を鍛え直すのがこの修行なのだが、やる気がなければ元も子もない…。


「ん?」

リラックスしようと森の音に耳を傾けるれなだが、その音のなかに何やら聞き慣れない音が聞こえてくる。


ボキ、ボキと…木の枝が何本も折られるような音と、僅かな地響き…。


「!」

嫌な予感がしたれなは岩から降り、音のする方向を目指して走り出した!


細い蔦や草を押し退けながら、音に耳を傾けつつ突き進んでいく。

音は確実に近づいている。この先で間違いない。

木の枝が折れる音も間違いなさそうだった。

沢山の茂みが前方から迫ってくるのを確認したれなは、一気に飛び出して茂みに飛び込む!



全身に草を纏い、転がるように飛び出したれな。

その先には、あるモンスターがいた。

緑のゼリーのような体に、体の各所についたイボ、赤いタラコ唇に小さな黒目の四足歩行のモンスターだ。

グリーンモンスターとでも言うべきだろうか。この森では見た事がない、珍しいモンスターだ。

れなはこのモンスターを知らないが、知らなくても明らかに分かるくらいに弱りきっているようだった。

左右によろめくグリーンモンスターに駆け寄り、正面に立つれな。

グリーンモンスターはぐったりと草の地面に伏せてしまった。


「そいつから離れろ」

渋い声が背後から聞こえてくる…。振り替えると、茶色いスーツ服の男が、散弾銃を構えて立っていた。

れなはグリーンモンスターの前に立ち、両手を広げる。散弾銃から放たれる殺意で、もう既に相手が敵だと分かっていた。

「そのモンスターは希少だ。そいつの体液は研究所で高く売れる。邪魔するな」

また勝手な真似をするやつが出てきたのだ…。

れなは彼を一発殴ってやろうと接近し、拳を振るう。

しかし、男は後ろに下がる無駄のない動きでそれを回避。人間にしては中々の反射神経だ。

もう一発拳を叩き込もうと拳を突き出すが、男の回避は異常な正確さ。

今度は背中を軽く反らしていとも簡単に避けてしまう。

(な、なぜ…?)

れなは拳を嵐の如く突き出しまくるが、男は散弾銃を空中に投げ、その両手の平で受け止めていく。

れなの攻撃にここまでついてくる人間、ただ者ではない。

男はある程度れなの攻撃を受け止めると突然下がり、落ちてきた散弾銃をキャッチ、れなの隙をついてついに発砲!

不気味な無機質な銃声が響くと同時に、れなの腹部に凄まじい激痛が走る!

更にそれだけでは終わらなかった。男はれなが怯んだ隙に、足を振り上げて彼女を蹴っ飛ばしたのだ。

その痛みは、明らかに人間が出せるような力ではなかった。

この俊敏さ、この足の力…まるで馬だ。

「この馬野郎!!」

痛みに耐えつつ、れなは反撃の回し蹴りを男に叩きつけた!

さすがに油断していたのか、男は吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。


よろめきながら立ち上がる男だが、様子がおかしい。

突然全身を震わせ、呻き声をあげ始めたのだ。

「え?」

…困惑するれなの目の前で、恐ろしい事が起きた。


「びひゃあああああ!!」

男は背中を反らしながら、全身から黄色い光を放ちながらその体を瞬時に変化させた!





…男の姿は、四肢が馬の前足と後ろ足に、頭は目を赤く光らせた馬そのものと化していた。

馬人間となった男は鳴き声まで本物の馬そっくりだった。

震え上がる闘争本能を解放しながら、こちらに向かって走ってくる!

二足歩行だ。走り方は人間がベースのようだった。

しかし…銃が手放され、地面に落ちている今、まだ攻略が楽だった。

「…!」

目の前の敵を倒す事に集中するれな。

後ろに飛び上がり、馬人間から距離を離しつつ足を伸ばし、馬人間の頭を思い切り蹴飛ばす!

馬人間は苦痛に満ちた甲高い声をあげ、上半身を仰け反らせる。今がチャンスだ!

れなは空中飛行し、思い切り勢いをつけた後、馬人間の腹部に頭突きをお見舞いした!

れなの石頭は強力だ。馬人間は吹っ飛ばされ、あっという間に気絶してしまった。


倒れた馬人間を改めてよく見てみるれな…。グリーンモンスターも目の前の状況の異常さが分かっているらしく、馬人間を凝視していた。


…やはりどう見てもこいつは馬だ。

しかし、体は人間だ。


「…これは一体…?」

またもや、得体の知れない相手だった。

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