敵地を目指せ
「あったあった!髪の毛!」
れなは、とある事情で事務所に戻っていた。
研究所に帰ってから髪の毛が一本だけ抜けているのに気づいたれなは、たった一本の髪の毛の為に深夜三時頃に家を出たのだ。
「アンドロイドの私たちには髪の抜けは一大事なのよ!!」
独り言を大声で発するれな。深夜の歩道で酔っぱらいの如く歩いていく。
そして、すぐに事務所についたのだが…。
「あれ?」
事務所の前に、誰かが立っているのに気づく。それだけではない。ドアに何か紙が貼られているのだ。
…近づいてみると、その人物は全身血まみれな事に気づく。
「…!?」
思わず身構えるれなに、その人物は視線を向けた。
Fだ…。
「え、F!?何それどうした!?」
彼に駆け寄るれな。Fは、いつになく弱々しい声で彼女に伝える。
「バリバが…クラナをさらった…。クラナを、助けて…くれ」
膝をつくF。
れなは急いで事務所に駆け込み、黒電話をとって仲間の電話番号をいれる。
葵に連絡するのだ。
「もしもし葵!すぐに事務所前に来て!Fが!」
れならしくない焦り声に、寝ぼけていた葵もすぐに目を覚まし、ログハウスから飛び出していく。
「…葵を呼んだ!!」
「…れな、頼む。クラナを…。俺はいい。こんなもんじゃ死なねえ…」
れなは頷くと、すぐに飛行して事務所から離れていく。
上空に移動すると、森から強い残留魔力を感じる。
つい先程まで、激しい戦いが行われていたらしい。
れなはバリバの痕跡を掴む為、森へと駆け込む。
…森は昼間と比べると、木々が不気味だ。冷たい風に吹き付けられ、まるで生きてるかのように揺れている。
れなは臆せず、森へと飛び込んだ。
「…!」
そこには異様な光景があった。
緑の草原に大量の血が広がっており、そのすぐ近くには何か大きなものが倒れてる。
…ライデンだ。
倒れてもなお、顔は不気味な笑顔を崩してない。
いつもバリバといるはずのライデンがなぜここに…?
状況を掴めないれなは、恐る恐るライデンに近づく。
「っ!」
れなが近づくと、ライデンは突如立ち上がる!
鋸を回転させ、れな目掛けて振り下ろそうと、腕を振りかぶる!
「落ち着け!!」
れなは怯まず、ライデンに蹴りをかました!
…Fとの戦いで消耗しきっていたライデンは、再び仰向けに倒れてしまう。
「ライデン!バリバはどこだ!」
話を聞くようなやつとは思えないが、れなは一応聞いてみる。
「…」
ライデンは、仰向けのまま鋸を振り上げ、夜空を指す。
明らかにれなの言葉に反応していた。
「…空に逃げたのか…。ほら、立て!」
れなは、魔力が抜けきったライデンの右腕を持ち、鋸に気を付けながら抱え込み、そのまま森の入り口を目指していく。
…森の入り口に辿り着くと、ライデンをそっと降ろした。
「ここにテクニカルシティの巡回警察官が来るって博士に聞いた事がある。人に会ったら、襲わずに助けを求めろ!」
いつの間にかれなは、「HELP me」と書かれた紙を取り出した。ポケットにでも入れていたのだろうか。
紙をライデンの頭に置くと、直ぐ様空に飛んでいった。
もっと他に方法はあったが、クラナを追わなくてはならないのだ。時間がない。
空中の魔力を探知すると、確かに僅かにバリバの嫌な魔力を感じ取れた。
しばらく冷たい風に吹き付けられながら上昇していくと、魔力の道が曲がっていくのを感じた。
「ここのどこかに、あいつのアジトがあるのか」
れなが周囲を見渡すと、そこにあるのは夜空をゆったりと飛ぶ雲ばかり…。
アジトなどどこにもないかに見えたが…。
「…おりゃあ!!」
残念、れなにはお見通しだ。
れなが勢いよく拳を振るうと、その勢いで突風が巻き起こり、巨大な雲が吹き消される。
…雲の中には、鉄でできた球状の要塞があった。
要塞と呼ぶには小さいかもしれない。アジトといったところだろうか。
アジトは姿を露にするなり、表面から煙を噴出し、雲を形成していく。
「隠れようとしても無駄だ!」
れなは再び拳を突きだし、雲を払ってアジトへと突っ込んでいく…!
だが、やはり無抵抗な訳がなかった。
アジトの各所に穴が空き、そこから大量の怪人が飛び出してきた!
ハエ頭の者やカラス頭の者…KHこと、キメラヒューマンだ。
「丁度良い!ついでにルークワースも潰してやる!」
れなは空中で構えをとり、全身に力を巡らせた!




