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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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夜の襲撃

「クラナ、いくぞ」

月の綺麗な夜、Fがクラナを起こした。


ゴミ捨て場のゴミをリサイクルして作った思い出の家からクラナを連れ出していくF。

クラナは、訳も分からず彼に聞く。

「ねえ!なんで?こんな時間にどこに行くの?」

「適当に出ていくんだ。この町の連中はもう止まらないだろう。…それに、これ以上れなたちに迷惑をかける訳にもいかないからな」

クラナは勿論嫌がった。ここから離れまいと必死に抵抗したが、Fはそんな彼女の手を強く握りしめる。


「痛い!お兄ちゃんやめて!ここでずっと暮らそうよ!」

「…クラナ静かにしてくれ。あまり人を呼びたくない」

それでもクラナは騒ぎ立てた。思い出深いこの町から離れたくないのだ。

それにこんな唐突に。れなたちの顔をもう一度見たいというのに。


「…うるせえ!黙れ!!」

Fが、ついにクラナを怒鳴り付けた。

クラナは一瞬肩を上げると、すぐに大人しくなり、抵抗しなくなる…。


「!」

Fの固い表情が、崩れる。


クラナの目には涙がたまり、月明かりに照らされて真っ白に輝く。

こぼれる前に、Fは優しく拭き取った。


「…お、兄ちゃん…。何で皆、いきなり意地悪になったの?私達が悪いの…?」

Fは彼女をそっと抱き締めた。

はじめはそっとだった。

…クラナの嗚咽が多くなる度に、Fは彼女を強く、強く抱き締めた。


「…生まれた時から、運命なんて決まってるんだ」

クラナをそっと離し、彼女と目を合わせる。


「でも、俺はお前を守る。それだけは、何が起きても揺るがない」

クラナの表情に、光が戻ってくる。




れなたちに伝えれば、絶対に自分達を引き留めるだろう。

そうなると名残惜しくなる。今でも辛いが、もう仕方ないのだ。

Fは、せめて事務所のドアに別れの手紙を貼っていく事にした。


自分達の家で、自分達のテーブルの上で、電気もつけず、月明かりだけで手元を照らしながら二人は文章を綴る。


綺麗な夜空だった。

沢山の星が煌めき、…二人の旅立ちを彩っているようだった。


「…クラナ、行こう」

手紙を書き終えた。



時刻、午前二時。テクニカルシティの歩道は、ほとんど人がいない寂しい風景になっていた。

この時間なられなたちに会う事もないだろう。心置きなく出ていける。


…少し歩道を歩けば、すぐに事務所についた。

「うちと事務所、こんなに近かったんだね…」

昼間は人をかわしながらゆっくりと歩いていたが、この時間ならすぐに辿り着けた。

…クラナは、右手に持った兎の人形を抱き締めていた。

れなから貰った、可愛い友達ラミ。大切な宝物だ。



…それからFは、事務所のドアに紙を貼り付けた。

「さあ、いくぞクラナ!」

「うん!」


…はじめてれなたちと出会った森の方向へ歩いていく。寂しさを紛らわせる為、わざと明るい声で呼び掛けあった。





…何かしらの話題を出そうとしたが、森に入るともう何も話さなくなっていた。

町から離れていく度に、寂しさは二人の頭上から降りかかる。

…雪のように冷たく、ゆっくりと降りかかるのだ。

…もっと進めば、雨のようになってしまうのだろうか。

月明かりも、木々に隠れてしまっていた。


「…この辺で野宿するぞ」

森の長い坂道を上っていった先に見える、町を見渡せる崖の上で野宿する事に。

葉っぱを使って布団を作るのだ。かつてクラナを探して旅をしていた頃からこうしていた。


「お兄ちゃん…こんなので寝るの?」

嫌そうなクラナ。…ついさっきまで柔らかいベッドの上で寝ていたのに、一時間後にはこれだ。


「…ごめんなクラナ」

「…お兄ちゃんのせいじゃないよ」


…では誰のせいでこんな事になった?


二人は考えすぎないようにと、静かな町の夜景を見渡した。







「…?」

枝が折れる音で、Fは目を覚ます。


ゆっくりと体を上げ、周囲を見渡す。

はじめはクラナが彷徨いてるのかと思ったが、クラナはすぐ横で眠ってる。


野生動物か何かだろうか。Fは、夜闇に揺れる草木に身構える。




「やあ、勇気を振り絞ったか」


聞き覚えのある声が耳に飛び込む。


地面に落ちた枝を踏み折りながら、何かが茂みから現れる。


「…お前は!」

闇に溶け込む黒いローブを纏った屈強な老人…バリバだった。

Fは眠るクラナの前にゆっくりと立ち塞がり、彼女を守る。


そして…ゆっくりと、ポケットからお手製のハンドガンを取りだし、バリバに向けた。

「また会ったなクソジジイ。筋肉自慢でもしに来たか?」

余裕が出ているFを見て、バリバは笑う。これなら殺し甲斐があるというもの。


「お前があのまま町に留まれば、クラナの精神が崩壊し、それと同時にお前も冷静さを失っていただろう。そうならない為、お前は森に逃げ込んだが…これはこれで好都合だ」

バリバが話している間、Fはもう一つ気配が近づいてきている事に気がついていた。

バリバの魔力がゆったりとした怪しい魔力なら…もう一つのこの気配の魔力は迸る電撃のように激しい。


…茂みの向こうの暗闇に、黄色い稲妻を纏う巨影が見えてくる。


現れたのは、ライデンだった。

相変わらず赤い顔は不気味な笑顔だ。だが、見慣れなかったこの笑顔にも段々と慣れてきたところだ。

「間抜け面が、また戦うのか。良いだろ。今度は殺しあいだ!」

Fが構えると、右腕の導狼の証が青く輝き、闇を照らす。

すると、クラナの回りに青いドーム状のバリアが形成された。

「…ん?」

光が目蓋に差し込み、クラナは目を覚ます…。




「いくぞ!!」

直後、戦闘が始まった!

ライデンの鋸がFに振り下ろされ、Fは後ろに跳ね上がって回避する。

空中で体勢を変え、両足を向けて急降下し、ライデンの胸元に蹴りをお見舞いする!

ライデンの三メートル近くある巨体がよろめくが、ライデンはがむしゃらに鋸を振り回してくる!

Fは離れず、あえて至近距離でその連撃を見事にかわし、隙あらば顔面を殴り付けた!


「お兄ちゃん!私も戦う!」

クラナもやる気だが、バリアに閉じ込められていては何もできない。このバリアは、Fの強い意思そのものなのだ。


バリバは、観戦しながらとある考察をしていた。

(やつの右腕にある導狼の証…あれがやつの力の源か。リューガの息子だからこそ、あの力をものにしているという訳だが、まさかFの悪意が進行しないのも、あれのおかげか…)

目をそらすバリバ。

(…やつにあれを刻んだ者を探す必要がありそうだな。あの証を刻むとは、よほどの技術を持つ者がいるはず…)


考え途中、突然バリバを大きな影が包み込んだ。

見上げると、そこにはこちらに飛んでくるライデンの背中!

間一髪、バリバは後ろに下がって回避する。

ライデンが地面に直撃すると同時に、激しい地響きが森の大地を刺激した!


土砂が立ち込めるなか、Fは平然と佇んでいる。

「もはやライデンも相手にならんか」

Fの青いコートには、土一つこびりついていない。繊細さと力強さを両立させた戦闘スタイル…。

短期間でここまでの成長を見せたF。やはりこいつの力は本物。紛れもなく、リューガの息子だと、バリバは確信した。

「あとはお前だ。やはりお前だけは、俺の手で倒してやりたい」

両手の指を鳴らしながら近づくF。

バリバは両手をゆっくりと振るうと、足首を軽く捻る構えをとる。

Fはそれを見逃さず、防御の構えをとる。







「…がっ!!」




…何という事だろうか。

Fに強い衝撃が走る!


見ると、バリバはFの腹部に強烈な拳を炸裂させていた!

痛みには慣れっこだと必死に誤魔化しつつ、Fは回し蹴りを放つが、バリバは地上から極力離れない程度に跳ね上がる。

Fは蹴りが空振りし、一瞬だけよろめいた。

「甘いわ」

よろめいたところへ反撃をかますのは簡単だが、バリバはあえて足払いを繰り出して更に体勢を崩させる。

Fはうつ伏せに倒れてしまい、土砂と落ち葉にまみれる。



「ぐああああ!!!」

Fの背中から、全身に激痛が走る!


…バリバの手刀がFの背中に突き刺され、周囲に鮮血が飛び散っていた。

バリバのローブも赤く染まってしまう。

「以前なら兵器のためにこの血を求めていたところだが、今の私は闇姫軍。ルークワースなどという過去の栄光など捨てたわ!」

勢いよく手を引き抜くバリバ。Fは震え上がりながら立ち上がろうとするが、派手に吐血する。

「このまま死ぬまで刺し続けてやろう」

クラナが必死にバリアを殴る音が聞こえてくるが、バリバがまた手刀を突き刺した際の派手な出血音でかき消される。

普通の人間なら致死量だろう。

「ぐ…」

しかし、導狼の証は彼を見捨てない。

再び青い光を放ち、目映い光がバリバを照らし出す!

バリバにとっては忌まわしい光だった。たまらず離れ、光から目をそらす。

「ぐっ…!だが、お前はもう動けないはずだ!クラナを助ける事はできん!」

バリバはまだまだ魔力を残してる。右手を突きだし、全身の魔力を集中させ、クラナを包むバリア目掛けて黒い光線を発射!

その威力は凄まじく、バリアも一瞬にして砕けてしまう。

クラナは吹っ飛ばされ、危うく崖から落ちそうになった。


構わず彼女を追い詰めるバリバ。ゆっくりと歩み寄り、無駄なお喋りは無しだとばかりに彼女の頭を軽く殴り、気絶させた。

Fは立ち上がろうとするが、導狼の証は彼を守るだけで回復まではできない。

「残念だなF。どうせお前らリューガの子らに生きる価値などない。こいつはとことん苦しめて殺してやるからな」

そう言い残すと、バリバは凄まじい勢いでその場から飛び去っていった…。



「く…そ…野郎…」


Fは、血だらけの体で必死に起き上がる…。


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