甦る外道
以前のクラナの突然の変貌について、れなは事務所メンバーに話していた。
彼女がリューガの血を引いてるとは話したくない…。
だが、何かあれば徹底的に話すしかない。
仲間は皆神妙な面持ちだ。
こんな集まりでは珍しく、れなが発言した。
「特に私達に襲いかかってきたとかではないんだけど…何だかこのままだとまずい気がする」
間違いない。あの眼光、あれはリューガの力だ。
もしリューガの力をものにし始めているのなら、強力な仲間になるかもしれない。
嫌なのはその逆だ。もしかしたら、あの強力な力に乗っ取られ始めている…そんな可能性もあると睨んでいたのだ。
…それを知るのは、今この場ではれなだけだが。
勿論そんな事は考えたくない。だが起こってほしくない事が何度も目の前で起きてきた。
今回は起こらないとは限らない。
結局、その日の事務所会議はハッキリした結果は出ずに終わってしまった。
今後クラナの行動に注意する事…程度だ。
誰もが納得のいっていない結果だったが、あまり話を広げたくないあまりにすぐに終わらせてしまった。
「はあーあ、何でかな…」
れなは、テクニカルシティの河川敷でため息をついていた。
これから何が起きるか分からない静かな恐怖に襲われてる…自分でも分かっていた。
…リューガは殺すしかなかった。
もしも、クラナまでリューガのようになってしまったら…。
「…考えて良い事と悪い事があるぞ!!」
れなは自分の顔面に思い切り拳を叩き込んだ!
あまりの勢いで、自分の拳に吹っ飛ばされる。後ろにあったビルに背中をぶつけ、ビルに風穴が空いてしまうのだった…。
そんなれなの葛藤のなか、ここから遥か北にある闇の国ではある動きがあった。
「…」
闇姫が、城の研究室である物を見つめていた。
緑色の培養液入りのカプセルだ。中には長い顎髭を持つ筋肉質で青い肌の老人が。
…彼は合成生物キメラヒューマンの開発組織、ルークワースのドンであるバリバだ。
Fとクラナの抹殺を目論み、結果れなたちに倒され、そして闇姫に殺されたはずの男。
殺されたはずのバリバが、目を開く。
「目覚めたか」
同時にカプセルの培養液が減っていき、透明のカプセルの壁が天井に吸い込まれていく。
「…闇姫様ではないですか」
バリバは、目覚めてすぐに状況を理解した。
自分を殺したはずの闇姫が、何かしらの理由で自分を復活させたのだ。
ふとバリバが自身の体を見ると、今までの死にかけのような細い体から見違えた、筋肉質な肉体に気がつく。
「服着ろ。パンツ履け」
目の前の闇姫は、冷たい目で黒い服とズボン、下着を右手に持っていた。
「…さて、お前ようなクズをわざわざこの世に呼び戻した訳を話すとしよう。お前が散々狙っていたクラナだ」
黒いテーブルを囲みながら、バリバと闇姫が向かい合う。
近くに兵士などはいない。完全に二人きりのようだ。
バリバはかつてのターゲットの名前に、身構えるように腕を軽く動かした。
「お前らルークワースの予想通りだ。クラナのリューガの血が目覚めだしている」
「やはりですか。このまま野放しにすれば更に大変な事に繋がるでしょうな」
淡々と話すバリバだが、事態の深刻さは十分理解していた。
闇姫は両手を組み、背もたれによりかかる。
「だがバリバ、気づいたか。やつの兄であるF。やつだけは全くと言って良いほど悪の心が進行しないのだ」
バリバもこれには気づいていたらしく、静かに頷く。
そう。Fだけは一切悪の心が開かないのだ。
その目も赤くなる事は一切なく、青い輝きのみを放ってる。
何かやつにだけ大きな力が作用していると間違いなさそうだが、それはまだ分かっていない。
どちらにせよ、未知を秘めた不安要素というのは大きなものだ。闇姫は、できるだけ早くやつを片付けておきたかった。
「やつらの抹殺を散々目論んでたお前にも、この計画に協力させてやろうと思ってな」
「なるほど、ご招待いただき感謝いたします」
以前のバリバなら頭を下げそうなところだが、今の彼はしなかった。
「Fを倒すのなら、良い考えがありますよ。獲物を仕留めるには、四方に罠が必要ですからね」
そう言うと、バリバは闇姫にある策を話し出した…。




