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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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ファンドンとBBG

「おらああああ!!!」

勇ましい咆哮と共に吹っ飛ばされる、鎧を着た兵士達。


巨大な斧を持ち、赤いマントを羽織る象の怪人が、荒れ果てた荒野で暴れまわってる。

兵士は剣や銃を持って立ち向かうが、誰一人として敵わない。

あっという間に象戦士が率いる兵士達は敵兵の砦に到達し、敵兵は移動さえままならなくなる。


その光景を、空から見下ろす二つの影。

一人は黒いツインテール髪に眼帯で覆った右目、赤い左目の女、闇姫。背中からは灰色の翼を生やしている。

もう片方は翼もないのにフワフワ浮いている黒いワンピースの少女。闇姫より艶のある黒ツインテールだ。

「それにしても、あのリューガの配下であるお前らがここまで利口とはな」

この二人はあのファン・マリス・リューガのかつての配下、象はファンドン、少女はブラックバルーンガール、略称BBGだ。

「悪」を尊重する二人だが、リューガが掲げる悪の概念と、闇姫が掲げる悪の概念。二人は闇姫の方を選んだのだ。

「リューガ様もやってる事は確かに凄かったんだけどぉー…あれは悪というよりただの愉快犯…」

「そうだ。悪というのは単に悪事をこなすだけではない。自分達の『正義』を信じ、この世界への反抗心のままに行動し、そして支配する。それこそが悪の定義だ。面白半分な行為など、悪を語るに至らん」

BBGは途中からさっぱりな表情を浮かべていた。闇姫と会話するといつもこうだ。


「終わりましたぞ、闇姫様」

ファンドンが地上から闇姫に声をかける。

見ると砦は闇姫軍の兵士達に囲まれ、敵兵は皆捕らわれている。

この辺りの領土も占領完了だ。

「よくやった。あとは私と四天王がやる。しばらく好きにしろ。時間になったらこの装置で集合命令を送る」

ファンドンとBBG、そしてその他大勢の兵士達は黒い通信機を渡された。


二人は闇の世界から一旦抜け出し、かつての主が滅ぼそうと目論んだ人間の世界に出向いた。

綺麗な空の下に、人間達の文明の道筋を感じさせるような建物が並んでる。

その横には町と隣り合わせになった美しい森が立派に生えている。

美しい世界だ…。闇姫の言う通り、手に入れたくなる美しさだ。

丁度テクニカルシティがよく見える崖に腰を下ろし、町を見下ろしていた。

「美しいな。リューガ様はこんな世界のどこがそんなに気に入らなかったのか」

「気に入らなかったんじゃないよ。彼は悪の心の集合体。生まれついて悪に生まれたという自分の運命を謳歌したかったの」

静かに語るBBG。ファンドンは彼女を見て頷く。

…そう考えると、哀れなやつだった。あれほどの事をしたというのに、ごく少数ながらも同情を得るような運命を辿ったのだ。

リューガの一件を思い返しながら、二人は何となく空を見上げていると…。


「あ、見覚えあるやつら発見」

どこかで聞いた声がした。


ゆっくり振り替えると…そこには、黄色いツインテールと緑の瞳の少女、れなが立っていた。

かつての敵を前に、即座に立ち上がる二人だが…。

「いや待って待って待って。戦う気はないよ」

両手を振るれな。二人はしばらく警戒したが…。


…確かに、闘気は一切感じられない。ファンドンが先に構えを解き、BBGは構えつつも彼女に近づいた。

「…何の用?」

「ちょっと友達と散歩してたらたまたま二人に会ったって訳よ」

れなはその友達に、安全を知らせるサインを送った。



草むらから、ピンクのポニーテールにピンクのワンピースの少女が出てくる。

大きくて綺麗な目もまたピンク色だ。

BBGは彼女を見て何となく自分と近い何かを感じた。

彼女は二人に寄ってきて、軽く頭を下げた。

「私は風船ちゃん、よろしくね!」

「そのまんまな名前ね…」

そう言ってBBGは風船ちゃんの手をとり、両手を上下に動かした後、飛び跳ねるという奇行に出た。しかも風船ちゃんはその動きについていく。

飛び跳ねた二人の足が地上から離れ、再び足が地上に降りるまでの時間はおよそ五秒もかかっている。

風船ならではの軽い体によるものだ。

その奇行に首を傾げ、傾げ過ぎて横向きにすっ転ぶれなに、ファンドンが言う。

「BBGいわく、風船同士の仲良し儀式らしい…。俺達にはよく分からん文化もあるという事だ」

「へー、まあこの世界は不思議だからね」

一分程その動きを続けた後、二人は離れあった。

BBGも風船ちゃんも笑っている。もうこれで仲良しなようだ。

それを見てファンドンも大きな手をれなに伸ばす。

「また戦場で会ったら、互いに本気を出しあおうぞ。我々闇姫軍は必ず世界を手中に収める。負けんぞ、お前は私の好敵手だ」

好敵手、という言葉の意味が分からず一瞬固まるれなだが、れなもまた手を出した。

「…こう、てき…ああ!これからもよろしく頼む、我が甲殻類!」

好敵手と甲殻類をどうやって間違えるのか…ファンドンは珍しく笑いが漏れていた。

ファンドンの分厚い皮膚とれなのアンドロイド特有の硬い手、だがそこに宿る独特な感情は同じものだった。


「ああ…そうだ。少しおかしな願いだが…一つ聞いてくれるか?」

自分にできる事なら何なりと、とばかりに頭を下げるれな。

だが、ファンドンが発したその願いは、予想外のものだった。てっきり、ここで一勝負、とかかと思ったのだが…。


「我々がかつて忠誠を誓っていたリューガだが、あいつに関係する誰かが現れたら…。…生かしておいても大丈夫なレベルであれば、なるべく生かしてあげてくれ」


れなは、上手く返事ができなかった。


「…うん、わ、わかった!」

Fとクラナの顔がよぎる。



しばらくして、ファンドンとBBGは通信機からの集合命令に応じ、空へと飛んでいった。

新しい友達ができて微笑む風船ちゃんと、その隣にいるれなの表情は真逆のものだった…。

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