ガッツポーズに生きる男 ルイク
「闇姫様、そろそろ私に出番を…」
「お前はまだダメだ。引っ込んでろ」
廊下を歩く闇姫に、出番を求める兵士がいた。
右手に槍を持ち、闇姫軍特有の紫の鎧を身に纏う、赤い目に黒髪の男。鎧の右肩には、赤い字で闇と書かれた真っ黒な軍のロゴマークが。
今月だけでもう三回も出番を求めてる。背を向けて去っていく闇姫に、戦士はなぜ自分に出番が与えられないのか分からなかった。
「…何故だ?このルイク様の槍裁きが、この軍には不必要だと言うのか!」
槍を置き、がっくり膝をつく…。
「…こうなれば、私一人だけでも行ってやる…!闇姫様ではもうダメだ。れなたちを倒せば昇格のチャンス!」
ルイクは、槍を掲げてポーズをとり、一人城の廊下を駆けていった。
「…」
その様子を、闇姫は呆れたように見つめていた。
ルイクの目的であるれなたちは、まあいつも通り森の散歩中だ。
今日のメンバーはれな姉妹だった。珍しく姉妹仲良く並んで歩いている。
「で、昨日の焼き肉のタレが空を飛んだ話だけどさー」
今日は互いに機嫌が良いらしく、世間話も弾んでいた。
こんな日に、とある理由で出動してはならないルイクは単独で出てしまった。
…運の悪い男だった。
「お前らぁ!」
勇ましい声が響く。
驚いて上を見上げると、木と木の間の青空に人影があった。
槍と紫の鎧は、太陽の光を受けてるにも関わらずほとんど光を反射しない。まるで光を拒んでいるかのよう。
「お前らがれな姉妹か!お前らを倒し、俺は上級兵士として軍に仕えるのだ!」
空中から急降下し、槍を振り下ろしてくるルイク!
二人は迷わず正面にでんぐり返しし、ルイクの着地地点から離れる。
ルイクの槍は地面に突き刺さる直前で向きが変わり、隙を晒す事なく素早く姿勢を変える。
得意気に槍を天に掲げてポーズをとるルイク。
「やはり噂通り、一筋縄ではいかなそうだな。だが、俺ならいける!少なくとも俺はそう信じてる!」
それは仲間に言われる台詞ではないのか…。
ルイクは槍を激しく振り回しながら一気に距離を詰め、乱れ突き!
れなは両手を構えてダメージを最小限に抑え込んだ。回避が間に合わないと見たのだ。
攻撃を終えたルイクはまたもやポーズをとり、その隙を狙われてれなに顔面を殴られる。
「いってええ!!くそ、顔を狙うとは!」
ルイクは再び空中に浮かび、素早く急降下してくる!
れなはバク転してかわすが、れなの後ろにいたれみが突かれ、吹っ飛ばされる。
「あ、れみ!」
「このスピードならお前らに勝てる!」
またまたポーズをとるルイク…。ここでれなは、彼の弱点に気づき始める。
目を細めながら、ルイクに蹴りを打ち込む。
ルイクの鎧を貫通する衝撃は、彼の重い体を吹き飛ばしてみせた。
「き、貴様、二度もこの俺に攻撃を当てるとはやるな」
「いや、お前ポーズとりすぎ。何でそんなにポーズとるの?」
問いに答えず、槍を突きだすルイク。
単純な攻撃だ。これならかわすどころか直ぐ様反撃が打てる。
れなは軽く屈み、ルイクの腹部に拳を振り上げる!
ルイクは小さな叫びをあげ、後ずさる。
そして…やはりポーズをとる。
もはや突っ込んでられない。姉妹はルイクの隙を見逃さず、飛びかかり、袋叩きにした!
鎧も意味をなさない連続攻撃に、ルイクはあっという間に戦闘不能となる。
「ぐああ…ここまでとは…」
仰向けになり、鎧が黒ずんだルイク。悔しそうに震えつつも、もう槍を持つ気力も残ってない。
「一つ聞かせてよ。何でそんなにポーズとるの?」
二人の敵を相手に、あれだけの槍裁きを披露しつつもガッツポーズ。きっと深い訳があるはずだ。
ルイクは、先程とは違う震えに全身の体温を高めながら、拳を握った。
一体どんな訳があるのか…。
「それはな…かっこいいからだよ!!ガッツポーズこそ、戦闘の極意なのだ!」
…姉妹は、呆れたようにルイクに背を向け、去っていく。
ルイクはなぜ逃げられるのか訳も分からず、ただ叫ぶしかなかった。
「くそー!!何で俺は出番を与えられないんだー!!」
ガッツポーズを信頼しすぎた男の話だった。




