蛙先生のやべえ授業
テクニカルシティには、ビルもなければコンクリートもない広い草原が存在する。
ここでとあるイベントが始まっていた。
四つの切り株が並べられ、その正面には車輪付きの黒板がある。
黒板の前に立つのは黒い髭を生やした蛙のような顔を持つ人型モンスター。見た目は奇妙だが、彼はこう見えて教師なのだ。
木の枝で黒板を指す蛙先生の授業の参加してる生徒は、れみとクラナ。その横には、二人を見守るFとれなが座ってる。
「ではこの計算式はいくつ?」
蛙先生の声は穏やかだ。授業も華やかな雰囲気に包まれるように進んでいき、れみとクラナも順調だった。
れなは色々と順調過ぎておかしくなっていたが…。
「はい!!2!!いや3!!いや100、いや2億!!!」
落ち着けとばかりにれみに頭をしばかれるれな。
笑いながら授業を進める蛙先生。
彼は別の町で教師を勤めていたのだが、今回は授業イベントとしてテクニカルシティにやってきた。
何やら面白そうと言う単純な理由でれみたちは今こうして切り株椅子に座っているのだ。
先生の話は聞き取りやすいし声も優しい。質問にも分かりやすく答えてくれる。
これぞまさに理想の教師。
Fも腕を組みつつも、噂に聞いていた授業というやつに興味津々、不良なフォルムの彼に似合わず、授業態度は真面目だ。
その右が恐ろしく騒がしいのだが…。
「はい!!30!46!5!!ご!GOOOOOO!!」
授業は一時間で終了し、れみとクラナは彼の授業の話題で盛り上がっていた。
「すごく分かりやすかったねー!!」
「それにかっこよかったー!!お姉ちゃんはうるさかったけどね!!」
楽しそうに語り合う妹達の横で、れな、Fは蛙先生と話している。
「やぁ、どうでしたでしょうか。私の授業ちゃんと伝わりましたでしょうか?」
蛙先生は授業を完璧にこなしつつも、別の町で授業をするのはやはり慣れないのか、少し恥ずかしそうな小声だった。れなは彼女らしい様子で先生を元気付ける。
「いやいやめっちゃ分かりやすかった、プリンと同じくらい飲み込みやすかったです!」
おかしな例えに笑う蛙先生。やはりフレンドリーな人だ。
しかし、こんなおかしな事を呟くのだった。
「…もう一人の私が出てこなければいいですが」
首を傾げるれな。蛙先生は誰にも聞こえないように発したつもりだったのか、話題を逸らそうと不自然に二時間目を開始した。
「さ、さあ二時間目スタートしますよ!」
それからは二時間目の国語が始まった。内容は単純で、ただ黒板に書かれた漢字の読みを言っていくだけ。
ひたすらこれだけだ。少しずつ始めていくのが蛙先生のモットーであり、この授業は彼らしいものだった。
相変わらず物静かなF、無邪気なれみとクラナ、狂気的なれなと、授業は面白おかしく進んでいく。
一年生で習うようなものがメインだが、蛙先生は時々おふざけ調子で一流大学で習うようなものも出してくる。これでも凄い盛り上りで、まるでパーティのよう。
「さあこの漢字は…」
だが、十三問目に移ったところで異変が起きた。
蛙先生は突然大きく息を吹き出し、何やら頭を抱え出したのだ。
全身から緑の汗が垂れ、黒板の前で苦しそうに呻いている。
「ど、どうした?」
さっきまで元気だった蛙先生が突然苦しみだし、さすがのFも焦った様子だ。
一分ほど苦しみ続け、地面に頭を擦りつける蛙先生に、恐る恐るれなが寄り添った時…。
「ほんげええええ!!!」
凄まじく間抜けな声が響く。
Fは誰かがふざけたのかと思って声のした方向を睨み付けた。
声のした方にいたのは…蛙先生だ。
え、と思わず声を出すF。
「ほんげええええ!!!」
顔をあげた蛙先生は…まさに間抜けそのもの。
両目は別々の方向を向き、口は笑顔とも真顔ともとれない何とも微妙な角度。
髭は下から風が吹いているかのように空に向いている。文字で書けば不気味に見えるが、実際は途方もないような間抜け面だ。
何が起きたのか分からない生徒達を前に、蛙先生はがに股で両手を空に向け、叩きながら踊り出す。盆踊りの曲でも流れてきそうだ。
「さあさあ月に向かってひゃっはほーーー!!」
蛙先生は流れるようにれなに向かってきて、その背中を持って共に踊ろうとしてくる!
明らかに危険だ。れなは蛙先生を殴り付け、先生は数十メートル先まで飛ばされた!!
蛙先生が落ちた地点から吹き荒れる煙を見て、呆然とする一同。
そう、これこそが蛙先生のもう一つの姿。
頭が良すぎるが故に脳の制御が効かず、もう一つの人格ができてしまったという事を聞いたのは、この授業の後の事だった…。




