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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
32/57

Fは何がお好き?

「Fは何が好きなの?」

「は?」

町で偶然Fと出会い、何となく彼と歩いていたれなが、突然聞いてくる。

「この世は下らないものばかりだ。俺に好きな物なんてねえよ」

そんな事言って、クラナという宝物があるくせにと、れなはフッ、と一声笑ってみせた。

彼は素直じゃない。だからこそ何が好きなのか気になってきたのだ。

そう考え、れなは市場にやって来た。


しつこく聞き出すと怒るだろうから、それとなくFを誘導していく。

「どう?たこ焼きとか」

Fは、左右に広がる店に目もくれず、通過していく。いらんという言葉さえ出さない気だ。

モデルガンの店なんかもあったが、それすら興味はない。銃を使ってるのにこれは意外だ。


しかし…たった一つだけ、彼が反応する物があった。

クレープ屋だった。


騒がしい歩道の上に停められた白い車の中に、甘そうなクレープがガラスケースに並べられている。

今までどれにも見向きもしなかったFが、ほんの一瞬だがそれに目を向けたのだ。

普段戦いで動体視力を鍛えてるれなにはすぐにそれが分かった。

「あ、今見たね?Fはクレープが好きなのだね」

「うるせえ!」

突然反応が荒くなる。図星だ。

こうなれば彼がクレープが好きだという事実を何とかして明かさねばならない。別に深い意味はないが、やらねばならないのだ。

れなは自分が食べたいとして、Fの手を取ってクレープ屋へと引きずっていく。


「いらっしゃいませー」

冴えない感じの男性店員が、車の中かられなとFを接客する。


Fは本当はクレープが食べたかった。だが素直に言うのも恥ずかしい。

ならばれながクレープを注文した時の流れにのり、しれっと自分も頼むのがベストだ。

Fはれながクレープ名を言うのを待ち、タイミングを見計らっていた。









…だが、いつまでたってもれなは何も答えない。

「…おい、早く頼めよ」

「こっちの台詞じゃボケえ」

れなはれなで、Fに先に言わせようとしていたようだ。

店員は、二人をぼんやり見つめて待っていてくれるが、内心は早く帰れと考えている事だろう。

沈黙がよぎる。互いの意志がぶつかり合う、激しい沈黙が。


「…苺クレープとブドウクレープください」

…忍耐対決は、れなの負けだった。だがれなは新たなる策を投げ出したのである。

それは、しれっとFのぶんも注文する大作戦だった。

Fははじめはれなが二つ食べるのかと勘違いしていた。


市場のベンチに座り、れながブドウクレープを突き出してきた事でようやく理解する。

「いやいやいや俺は食わないからな」

「あんたの為に用意したんだよ!!食え!!おら食え!!」

何としてでもFにクレープを食べさせようとするれな。何をそこまで向きになるのか。

嫌がるFにあまりにもれながクレープを押し付けるものだから…。

「やめろ!!!」

Fはれなの頬を音高く殴り飛ばす。ぶっ飛ばされたれなは歩道の上でバウンドし、コンクリートの粉を吹き上げながら地面に倒れこんだ。

それでもしつこいれなはクレープ右手にゾンビのように起き上がって向かってくる。もはや恐怖を覚えたFは、市場を駆け抜けて逃走を開始した。

れなは負けじと追いかけてくる。その走りの勢いは、周囲に置かれた木箱や樽が風圧で倒れていくほどだ。

夢中で追いかけっこを開始する二人。周りの迷惑など知った事か。



…市場を抜けた後、平和な噴水の広場を突っ切り、海が見える道路を突っ切り、最終的には森の入り口にまで辿り着いてしまった。

木に追い詰められるFに、じりじりと詰め寄るれな。

「何なんだ、何故そんなに俺にクレープを…!!」

「ぐへへへ良いじゃんクレープ好きな男子とかめっちゃ可愛いやん」

壁ドンならぬ木ドンを仕掛けるれな。もうFに夢中だ…。


「おるあさっさとクレープ好きだと認めちまえ!!エフゥゥゥゥ!!!」

Fの顔面に飛んでくるクレープ!!

ブドウクリーム混じりの悲鳴が、森に響き渡った…。





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