VSバリバライデン
Fとクラナがリューガの子である事を知らせ、殺そうとするバリバはライデンと融合…『バリバライデン』と化したのだった。
れなは彼らに何としても正体を知られない為、一人でバリバライデンと戦いを繰り広げていた。
(もし二人にあんな事を伝えれば、必ずリューガの事を知りたがるに違いない。そして…そんな事を知れば…)
知らない方が幸せだ。
だが一つになったとはいえ相手は二人。さすがのれなもこいつの両手鋸をずっと避け続けるのは不可能だ。
何とかして、一発でも反撃を決めなければならない。
「…ここだ!」
鋸と鋸の軌道の僅かな隙間に拳を叩き込む。
ライデンの胸元に命中し、大きくよろめかせた。
だがバリバはよろめいたライデンの体を操作、よろめいたのを逆手にとり、一回転して勢いをつけて鋸を叩きつけてきた!
咄嗟に両手を構えて防御姿勢をとるが、そんな抵抗も虚しくれなは真下の民家に叩きつけられる!
屋根を突き破り、中にいた住人を驚かせるれな。
勿論周りの被害など何一つ考えていないバリバは屋根に突っ込んでれなを追いかける!
砕け散る屋根の瓦礫と共にれなの頭上から襲い来るライデン。
家の壁を切り刻み、ドアも切り飛ばして外に出て、れなを追う。
れなは逃げつつ、反撃を狙うが、ライデンの速度は尋常じゃない程速い。
あっという間に距離を詰められ、鋸がれなの髪にかすり、黄色い髪の毛数本が風圧で飛んでいく。
「…!オメガキャノン!」
広場に辿り着いたれなは、振り返り様に左手から青い破壊光線オメガキャノンを放つ!
バリバの寄生のお陰か、ライデンは反射神経も上がっていた。両手の鋸から同時に雷を放ち、オメガキャノンとぶつかり合う!
青と黄色の閃光が点滅し、稲妻が飛び交う。地上のコンクリートがその勢いで砕けていく!
白い粉も飛び散り、れなの目に粉が入り込む。
「くっ!!」
その瞬間、オメガキャノンの勢いが少し落ち、ライデンはその隙に雷の威力を倍増させた!
れなに直撃する巨大な雷!!
幸い周囲の人々は避難していた為、巻き添えは誰も食わなかった。
その代わりれなは、深刻なダメージを受ける。全身に電撃が迸り、目を回しながら地面に叩きつけられる。
こいつは強い。一人で戦うような相手ではない!
「出しゃばらなければ生かしておいたものを…」
ライデンの両腕の鋸が振り上げられる…。麻痺している隙にとどめを刺すつもりだ。
れなは必死に動こうとするが、間に合わない…!
…だが、やはりやつが黙ってはいなかった。
ライデンの背中のバリバに何かがぶつかり、人間の原型を留める赤い血を吹き出した!
ゆっくりとライデンが視線を向けると…そこには、銃を構えるFが立っていた。
左手に銃を持ち、ライデンを睨む目に宿るは戦意、そして因縁の相手を討つ事ができる僅かな期待に満ちていた。
「どうだクソジジイ、俺の方から来てやった。お前を倒すのは俺だ」
「…これはありがたいな」
ライデンの鋸から放たれる、無数の大雷!!
金の閃光を放ちながら展開される電撃を潜り抜け、Fはバリバライデンへの決戦に向かう!!
…バリバライデンとFの戦いが、町の上空で繰り広げられる。
「おらぁ!!」
Fの鋭い蹴りがライデンの頭部に命中、それを引き金に、激しい蹴りの連続攻撃が始まった!
ライデンの肉体に打ち込まれる衝撃が、内部の機械とバリバによって張り巡らされた根っこにダメージを与える。
だがこの程度ではやはり倒せない。どうやらダメージを受けるのはライデンのようで、寄生しているバリバは特に変わった様子もない。バリバはライデンの体を酷使し、鋸を左右交互に振り下ろしてくる!
「必死だな!」
Fは更なる蹴りを命中させる!吹っ飛ばされつつもライデンは電撃を放ち、Fは青いコートを風で揺らしながら正確にかわす。
Fの猛攻は、バリバの予想を遥かに上回っていた。
(やはりリューガの息子…!何としてでも…!)
バリバライデンは一旦Fから離れ、突如上昇した!
テクニカルシティの上空で静止したバリバライデンは両方の鋸を天に掲げる。
すると周囲に金色の光が柱のように差し込み始め、少しずつ空に黒い雲が集まりだす…。
嫌な予感がした。
「ライデンの最終奥義、ゴールドボルティカル!!これで死ぬがいい!!」
バリバの叫びが響き、同時にFの目の前に黄金の閃光が走る!
直後、Fの全身を激しい電撃が貫いた!
バリバライデンを中心に、町の至る場所に巨大な雷が落ちてきたのだ!
「ぐっ!!!」
声こそ一瞬しか出さないが、正直まずかった。
更に無慈悲な雷は彼を連続で撃ち抜き、地面が少しずつ黒焦げになっていく。
「どうだ痛いかFよ!冥土の土産に教えてやろう…お前とクラナの正体を!!」
電気で麻痺しきった体で、必死に拳を握るFにバリバは語る。
「お前達は…忌まわしき呪われた存在!お前達の正体は…」
その時だった。
「ぐはあああああ!!!」
バリバが悲鳴を上げる。
「言わせない…」
…れなが、彼の背後に回って拳をバリバに叩きつけていたのだ。
バリバの黒い物体と化した体から飛び出す赤い血。
これでもれなは加減していた。頬についた血を拭き取りつつ、れなはライデンの背中を蹴飛ばした!
「F!今だ!!!」
れなは、地上のFに叫ぶ。
震えながら立ち上がるF。やはりまだ隙があった。
吹っ飛ばされつつも途中で体勢を建て直したバリバライデンは、逆に好機とばかりに両手の鋸に電気を集める。
「ぐっ!どうせ死ぬ者に真実など教えぬわ!訳も分からないまま死んでしまえ!!」
このままでは間に合わない!Fは両手を構えて防御の姿勢をとる…。
そんな光景を滑稽だと思ったのか、バリバは笑いが止まらなかった。
…しかし、まだ彼には味方がいた。
「やめろ!!!」
二つの声が響き、Fの前に、二つの小さな影が立ち塞がった!
「町が騒がしいと思ったら…こんな事になってたなんて!」
それは、れみとクラナだった。
れなとFの妹二人が、両手を広げて彼を庇ったのだ。
それを見たバリバライデンは、一瞬驚いたように怯んでいた。
「っ!」
Fの右手に熱が宿る。
狼の入れ墨…導狼の証が青く光り、彼の魔力を活性化させたのだ。
「終わるのはお前らの方だ!!」
Fはれみとクラナの頭上を飛び越え、右手の拳を突きだす!
その拳から放たれる衝撃は暴風を引き起こし、一気に放たれた魔力は青い波のようなエネルギー波と化した。
コンクリートの地面は引き裂かれていき、バリバライデンは空中にいたにも関わらず魔力の波動に流され、滑るように飛ばされる!
天を覆った黒い雲も切り払われていった。
「…!F、クラナ…!!お前らは必ず後悔する!そう遠くない未来で!!生まれた事を後悔する事になるぞぉぉぉぉぉ!!!」
バリバライデンは遥か空の果てへ飛ばされ、姿は見えなくなった…。
「…」
Fは右腕を見つめていた。
ここまでの力が宿っていたとは…。
「…生まれた事を…後悔する…」
Fには、もう既に訳が分からないようだった。
表ではいつも通りだが、その胸の内には自身の正体への興味が嵐を作っていた。
「…F!やったね!!」
そんな彼の思いを遮るように、れなが降りてくる。
Fの手を握ってひたすら振るうれなに、彼らの横で笑いあうクラナとれみ。
「…れな」
「何か変な事言いながら飛ばされたねあいつ!二人が危険な存在みたいな事言ってたけど、そんな訳ないじゃん!それより今はやつらを倒せた事を喜ぶべき!」
元気なれなに、Fは何とも言えない表情で俯く。
…すぐ横に、愛する妹の無邪気な笑顔がある。
そうだ。今は勝利を喜ぶべきだ。
「…れな」
「ん?」
「…助けてくれて、ありがとな」
顔を赤らめるFは、そっぽを向きながられなに言った。
独り言のような声だった。
「へへへへ…ぐへへへへ…」
嫌らしい笑みで見つめるれな…。
Fは、ますますそっぽを向いていた…。
「…くそ、やつらめ…ライデン立てるか…?」
これだけのダメージを受けてもなおライデンに寄生するバリバは、黒ずんだライデンを起き上がらせようとしていた。
だが…ライデンはもう既に限界であり、動くにはしばらくここで休む必要がありそうだった。
…真っ暗で、獣のような声が響く、この森で。
「く…」
暴れすぎて力が出ない。
折角寄生という博打を打ったというのに、これでは意味がない…。
「残念だったな」
…何者かが、声をかけてきた。
「だ、誰だ?」
…直後、バリバはその声の主の顔も見れるまま、突然意識を失った。
彼の頭上から黒い刃が放たれ、頭から貫通、寄生されていたライデンも突き刺されていた。
血が周囲の緑の草に飛び散って赤く染め上げ、ライデンからは黒いオイルが漏れ出した。
…仕留めたのは、爪を伸ばした闇姫だった。
彼らの死体に足を置き、闇姫は考えた。
これから先、やつらをどうするかを…。
「…まあいい。思ってたより時間はある」
闇姫の頭上の木々の隙間から、白い光が僅かに差し込んでくる。
忌まわしそうに光から離れながら、赤く染まった刃のような爪を引っ込め、暗黒の森を歩いていく。
「リューガよ喜べ。お前が残した負の遺産、私がとことん遊んでやる」




