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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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F 怒りの死闘

「…クラナ、大丈夫?」

真っ白な病室にて。

うっすらと目を開けたクラナの顔を、ドクロは心配そうに覗き込んだ。

クラナはまだ意識がハッキリしていないのか、周囲を見渡して不思議そうにしている。


ドクロはクラナの小さな手を取った。


「…」

Fのあの時の焦る表情が忘れられないのだ。

れな姉妹も勿論同じ感情だろう。しかし、恐らく事務所メンバーのなかで最も彼の顔が焼き付いているのはドクロだ。

何故なら、彼女もまた、兄を持つ者なのだから。

(もしも私が同じ目に遭ったら…お兄ちゃんもきっとFと同じくらい焦るだろうな)

そんな気持ちが、ドクロを動かしていた。


「…ねえドクロちゃん…私はどうしたの?」

クラナが、弱々しい声で口を開く。ドクロは震える声で彼女に言った。

「…かなり悪性の毒を…。…いや、バイ菌が入ったみたい。でも大丈夫。すぐに良くなるから…」

まだ子供のクラナが苦しそうに呻く姿は、ドクロは見てられなかった。


…クラナは一瞬表情を作った。


心配そうな表情だった。


「…クラナ、大丈夫。きっとお医者さんが治してくれるから…」

「違う、違うのドクロちゃん」

クラナは、白い手を伸ばす。


「お兄ちゃん、きっと私を心配して何か無茶してるのかも…。私は良いから、お兄ちゃんを…」

この状況でも、クラナは兄を心配していたのだ。

Fの兄としての愛情が、クラナにも伝わっていたのだろう…。ドクロの涙腺が熱くなる。

ドクロは、クラナの手を強く握った。


(…クラナのそばにいたいけど。確かにFの行動が気になるわね)

ドクロは立ち上がり、クラナの為にも彼の様子を見に行く事にした。

クラナを病院に任せ、ドクロは渡り廊下を歩いていく。



「…」

クラナは、窓の外の透き通った青空を見上げるのだった。




「…お兄ちゃん」



…その目は、明らかに今の感情とは矛盾したものだった。

光が宿っていない。

まるでもう一つ、何かの感情に飲み込まれているかのような…。







「…F!」

ドクロは飛び去っていく。

飛び去っていく様子も、クラナの目には映っていた。



「Fは!?」

事務所に駆け込むドクロ、ドアを開けた風圧で吹っ飛ばされるれな姉妹。

先程外へ出ていくFも見たのが最後なものだから、まだ庭にいるのではないかと庭を映す窓の方を指差す。

「嘘よ。庭には誰もいないわよ」

「え、そんなはずは…」

れなは庭の方を見た。




確かに、そこは無人だった。無造作に生えた雑草が揺れているだけだ。


青ざめるドクロ。

「あのバカ…!」

ドクロは精神を集中させ、Fの魔力を探しだした。



…幸い、現在Fは莫大な魔力を放ちながら大乱闘を繰り広げていた。

青いオーラを纏いながら、迫り来るハエ怪人達を次々に叩きのめしていく。

ライデンが放つ電撃が、まるでリングのようにFの周りを取り囲んでいる。

「ちくしょうこれじゃ上手く動けねえじゃねえか!」

ハエ怪人四人に回し蹴りをお見舞いし、吹っ飛ばしたところでFは天高く飛び上がる。

そして、両手の指先に魔力を集中させ、青いレーザーを連射してハエ怪人を一気に片付けようとする!

クラナを傷つけられた怒りで冷静さを失っていた。

事務所でのドクロは間違っていなかったのだ。

まずは落ち着け、と。


それでもこの怪人達程度ならどうという事はない。

Fは次々に怪人を片付けていく。


…そして、スタレタウンの錆び付いた地面にはレーザーにより、無数の穴が空いていた。

倒れるハエ怪人達のなか、着陸するF。

残るはライデンのみだ。



ライデンは、鋸を稼働する。

無機質な殺意が、Fに向けられる。

「来いよ、鉄屑野郎!」

走りだし、詰めよりあう両者!


ライデンの鋸を滑るように回避し、飛翔するF。

ライデンの背後にまわり、その後頭部を蹴りつける。

振り返り様に鋸を振るうライデンだが、Fはまたしても同じ動きでそれをかわす。



廃れたコンクリートの地面に足をめり込ませ、方向転換するライデン。

Fは右手の拳を青く光らせ、魔力を集める。

「これで終わりにしてやる…」

互いに睨みあい、そして一気に迫りあう二人の戦士!!

スタレタウンの錆びきった空気が、二人の魔力で甦ったように揺れ動いた。



「!」

しかし、ライデンはFとぶつかり合う直前に鋸を地面に叩きつける!

地面が揺れ、Fは走るペースを乱される。

揺れる拳から、魔力が抜けてしまった。

「くそ!!」

その隙を突き、ライデンは相変わらずの不気味な笑みを見せ、今度はFを叩き斬ろうと鋸を振るう!



「っ!」

Fの体に衝撃が走る。

斬られた衝撃ではない。何かに突き飛ばされた衝撃だ。

気づくとFは勢いよく何かに吹き飛ばされ、ライデンの攻撃を回避できていた。



地面に顔から衝突し、ヨロヨロと立ち上がるF。

「くっそ、いってえ…バランス崩しちまったのか…」

呟きながら立ち上がると…。






目の前に、彼女が立っていた。










「全く…」


白い二つ編みの髪を、廃れた風に揺らすドクロだった。

呆れ気味な顔でFの方を見ながら、右手の人差し指を軽く曲げてFを誘う。

「早くやるわよ」

Fは悔しそうで、どこか悲しそうな顔で立ち上がり、両肩を回して鳴らす。


F、ドクロはそれぞれの拳を構え、魔力を集め出す。


「くらえ!!!」

声を揃え、叫ぶ。

巨大な魔力の衝撃波が二人の手の平から放たれ、大地を切り裂き、白いコンクリートの欠片をばらまきながらライデンへ向かう!

ライデンは強いが、大きな可能性を秘めた二人の戦士の前ではさすがに敵わない。

鋸を構えて防御するが、そんなものは通用しなかった。

たちまちライデンは衝撃波に飲み込まれ、不快なエラー音のようなものを鳴らし回る。


ライデンの鋸から放たれる金の電撃。

苦し紛れの反撃だ。


二人の視界が金色の閃光に染まるが、こんな攻撃では止まらない。

二人は電撃を回避し、両手からもう一発魔力の衝撃波を発射した!

砕けたコンクリートを更に打ち砕き、ライデンを再び直撃する魔力の衝撃波!

これにはもうライデンは反撃も許されなかった。



全身から黒い煙をあげながら仰向けに倒れるライデン…。

「…何とかやったわ」

さすがに魔力の消耗が大きかったのか、ドクロは膝をついて息を切らす。

責任を感じたのか、Fは彼女にぎこちなく手を伸ばしていた。

「あら、そんな一面もあるのね」

「黙れ!!」

顔を赤らめるFを、ドクロは疲れつつもどこか面白そうな顔で見つめていた。



「…ふふふ、ライデンには悪いが、これも我々の為だ。あの毒は普通の人間であれば致死量のもの。それでも生き抜いたということは…」



…テクニカルシティの病院にて。



バリバは、足元に倒れこんだ医者の頭を踏みながら、右手にクラナを抱え、左手には彼女の血が入った注射器を持っていた


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