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ワンダーワールドⅡー2   作者: 白龍
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バリバの不意打ち

…悲劇というのは、突然起きるもの。

予兆はない事の方が多いのだ。


「いってきまーす」

クラナはついこの間Fに買ってもらった兎の柄の服を着て、テクニカルシティへと向かっていった。

Fはクラナと一緒に行こうとしたが…ついこの間粉砕男から聞いた言葉が頭によぎった。


「クラナも成長してるんだ。時には一人で旅立たせるのも大切だぞ。彼女が出掛ける時は、俺を呼んでくれ」

クラナの一人立ちの為に、粉砕男は協力してくれていたのだ。クラナが一人で出掛ける時、自分を呼ぶように言っていた。

ルークワースの襲撃などの万一の出来事に備え、粉砕男がクラナを見守ってくれるそうなのだ。


「クラナ…」

Fは粉砕男の魔力を辿り、空気中に自身の魔力を放つ事で粉砕男の元へ電波のように送る。




「…よし、出番か」

Fの魔力は、数百メートル離れたテクニカルシティの隅っこにある小屋にいた粉砕男のもとへ届いた。



テクニカルシティの空を飛行する粉砕男。

多くの人々が群がるなか、一人の小さな少女を見つけ出すのは大変だが、魔力を辿ればすぐに分かる。

土日の慌ただしい人混みのなか、粉砕男はすぐにクラナを発見した。

いつもFと行っているコンビニへ向かう途中らしく、見て分かるくらいに浮かれて歩き方で進んでいく。


「よし、今のところは何もなさそうだな…ん?」

粉砕男は、遠くから何かがこちらに向かってきているのに気づく。



「…やっぱりか」

視線を動かすと、こちらに飛行してくるFの姿があった。

やはり兄として、他人に任せっきりにしてられないのだ。

Fは粉砕男のすぐ横で静止し、彼と同じようにクラナを見守った。


「本来なら俺一人で十分だ」

「F、お前はいつもそれだな」

粉砕男の大きな手がFの左肩に置かれる。重いが、優しい手だった。

二人でこのままクラナの一人立ちを見守ろう…。




そんな柔らかい雰囲気のなか、それは起きた。




突然、Fと粉砕男の全身に冷たいものが触れたような感覚がした。

「…!?」

嫌な予感がして、クラナの方を見る二人。



…同時に、クラナの頭上から何かが降ってくるのを見た。


巨大な鋸の腕を振りかぶりながら落下してくるライデンと、その腕に掴まるバリバだった!

空中飛行している二人の目を盗み、まるで瞬間移動しているかのような出現だった。

まさかこれもライデンの魔力なのか。

「…っ、まずい!」

不意を突かれた二人。

ライデンの鋸は歩道に叩きつけられ、コンクリートの地面が砕け、白い粉が飛び散る。

驚くクラナは他の通行人と共に白い粉に隠れてしまい、二人の視界から消えてしまう。

バリバとライデンも同じだった。



「うっ…!」

クラナは、白く染まる視界のなか、左手に痛みを感じた。

何か針のような物を刺されたような痛みだ。



…粉の霧は少しずつ晴れていく。



…霧が晴れると、そこにバリバとライデンの姿はなかった。

いたのは、姿を消した二人にも気づかず逃げ惑う人々と、ボンヤリと左手を見つめるクラナのみ。

「クラナ!!」

Fは粉砕男と共にクラナのもとへ降り立ち、彼女の手をとる。

クラナの左腕には、小さな刺し傷があった。

「大丈夫か!?」

「うん…多分コンクリートの破片で傷ついたのかも」

Fはクラナの手をより強く握った。

そんななか、粉砕男は消えた二人を探していたが、彼らはどこにもいなかった。



…二人は、テクニカルシティの門の外にいた。

「ライデン、よくやった」


…ライデンを見上げながら、左手に持っていた空っぽの注射器を黒いローブのポケットにしまうバリバ。

「さあ…ここからだ」





「一体あのクソヤロウどもは何がしたいんだ…?」

バリバの今までの行動を思い返しながら、Fはれなたちの事務所でコーヒーを飲んでいた。

こういった案件はお任せな粉砕男と葵がリビングのテーブルを囲む。

窓の外の緑の庭には、れな姉妹と仲良く遊ぶクラナの姿が。


「バリバとライデンがクラナの暗殺に失敗したか、それとも別の目的があったのか…どちらにせよ、クラナに何かをしようとしていたのは確かだ」

腕を組む粉砕男と、カップを握り潰さんばかりの力を手に込めるF。

愛する妹を一回でも狙われれば、誰でも怒りを覚える。Fの場合は、何度も妹を狙われているのだ。

そんな彼を見つめながら、葵は聞いた。

「クラナに異変は見られないの?」

「…特には」

右手の人差し指を顎に添えながら、葵は窓の外のクラナを見た。

やつらは何を考えてるのか…?

ルークワース。彼らの目的を、改めて推測する必要がありそうだ。



その頃…テクニカルシティの北にある山岳地帯にて、ある戦いが繰り広げられていた。


ハエのような頭を持つ怪人たちが、ショットガンを抱えながら敵に突っ込んでいく。

敵は赤く、逞しい体を持つ二本の角、鉄球を持った悪魔、アースデストロイアーと、黒いツインテール髪を山の冷たい風に揺らす闇姫だ。


ハエ怪人達は見事な連携で二人へ向かっていくが、二人の腕はその更に上を行く。

挟み撃ちにしてかかるハエ怪人二人に対し、闇姫は飛び上がって両足を広げて蹴りつける。

吹っ飛ばされるハエ怪人が地面に叩きつけられると、そのあまりの勢いで地割れが起こり、多くのハエ怪人が吹き上がる岩石に叩き飛ばされた。

横一列になって走ってくるハエ怪人達には、一列を逆に利用するアースデストロイアーの鉄球が鎖を鳴らしながらなぎ払う。

ハエ怪人達は二人に攻撃するどころか触れる事すらできずに叩きのめされた。


「さすが、闇姫軍ですな」

穏やかな老人の声と共に、僅かな魔力の流れが発生した。


…その直後、二人のすぐ後ろに、ライデンとバリバが瞬間移動してきた。

闇姫は既に彼らの気配は感じていた。ハエ怪人達を叩きのめすついでに、一つある事を聞いてやろうと考えていた。


「Fとクラナをどうする気だ」

「Fについては変わりません。以前通り、抹殺を試みております」

バリバは何やら楽しそうに話し出す。自信満々、という言葉がよく似合う声の張りようだ。

「…クラナは、また新たな策を用意しております。つい昨日、実行いたしました」

バリバの怪しげな笑顔を、さも憎たらしそうに睨み付ける闇姫の赤い目…。




「F!!クラナが!!」

れなの叫びが響く。




Fは立ち上がり、焦りに歪んだ顔で窓の外を見た。




そこには、胸を抑えて苦しむクラナの姿があった。


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