豪腕 シャコ怪人
…スタレタウンの地下にて。バリバはまた新たなKHの開発にかかっていた。
試験管がズラリと並べられた棚から、「シャコ」と書かれたラベル付きのカプセルを取りだし、研究室の中心にある大きな壺に中身の緑の液体を投入するバリバ。
その表情は、自信に溢れていた。
その頃、Fは拠点である鉄屑小屋の前で、クラナに修行をつけていた。
拳の握り方や蹴りの角度など、基本的な事からだ。
これからの為、少しでも備えをしたかったのだ。
「もー疲れたよおお!!」
地面に倒れこんで駄々をこねる妹に、Fは厳しく指導…する事もなく、どうも上手く接する事ができずに困り果てていた。
そんな光景を、偶然見かけた者がいた。
ドクロとれなだった。
「ほら見てドクロちゃん!やっぱFは妹には弱いんだ!」
彼の弱みを確信したかのように、二人はビルとビルの狭い隙間を潜り抜けながら駆けてきた。
その声は、一同を取り囲むビルのバリケードに跳ね返されるように、エコーのごとく響いていた。
舌打ちしながら振り替えるF。
Fたちの住み場所を知っているれなたちは、頻繁に彼らの様子を見に来る。クラナは喜ぶも、Fは少々迷惑がっていた。
「修行なら手伝うわよ」
ドクロはれなと違って、単純に二人が気になって来たらしく、Fは彼女にはまともに接する。
まあ良いタイミングだ。自分が人に教えるのは下手だという事は理解している。
ここは素直に二人に教え方を教えてもらおうと歩み寄るが…。
…またもやゆっくりとは過ごせないようだった。
突如、周囲のビルが激しく揺れ動きだした。
都会のビルが目で見て分かるくらいに揺れるという大事態。
路地裏の向こうからも、人々が騒ぎ立てる声が聞こえてくる。
Fはクラナの手をとり、れなとドクロは衝撃に備える。
…直後、揺れていたビルの一つから爆発音に近い崩壊音が響き、こちらに倒れこんでくる!
「ひ!!」
クラナが小さな悲鳴をあげるが、それと同時にFの右腕の入れ墨…導狼の証が青く輝く!
するとビルは崩壊を止め、宙に浮いたような状態に。
「…危なかった」
こいつはこんな事もできるのかと、れなたちは目を見開いた。
「…ビルを直せるかもしれん。お前たちはあいつを何とかしてくれ」
右手をビルに向け、左手である箇所を指差すF。
白い煙に紛れ、敵が近づいてきていた。
それは、海洋生物のシャコを直立させたような姿の怪物だった。
メカニカルな両目に鋼鉄のような両手を持ち、体は白い殻に覆っている。
シャコ怪人が両手を叩きつけあうと、そこから火花が生じていた。
れなとドクロが戦闘姿勢をとるなり、シャコ怪人は両手を振りかぶっていきなり飛びかかってくる!
その勢いと溢れる力は、二人に防御しても衝撃を防ぎきれないと思わせるほど。
たまらず二人は飛行して回避、シャコの拳は地面に直撃し、周囲のビルが倒壊し始める。
Fの導狼の証が更なる輝きを見せ、ビルの倒壊が止まる。
「くっ…」
Fは体から魔力が抜けるのを感じた。早めに決着をつけなければならない。
シャコ怪人もまた、飛行する二人を追いかけて飛行を開始、空中で二人に恐るべき拳のラッシュをお見舞いする。
れなは回避に成功するも、ドクロは間に合わずに四、五発ほど顔を殴られ、とどめとばかりに腹部を殴られた。
とてつもない力、そして速度だ。ドクロは血を吹き出し、地上へと落ちる。
「やばい…」
れなが呟く。今までの怪人とは違うようだ。
次にれなを狙い、ひたすら拳を打ち続けるシャコ怪人。
一度に多くの拳を決めようとするという行動パターンを見切ったれなは反撃として蹴りを決めるが、こいつは攻撃力だけでなく防御力まで完璧だった。
輝く殻は見事に攻撃を防いでしまう。
「打撃は効かないかっ…」
シャコ怪人に逆に隙を見せてしまい、拳を打ち込まれるれな。
両手を構えて防御するも、激痛が走る。
れなの両腕から鉄パイプが折れるような鈍い音が響き、れなの両手は脱力、力を失う。
一部始終を見ていたFは驚愕した。
「アンドロイドの腕さえも折るのか!?」
れなは悲鳴をあげそうになるも、急いでシャコ怪人の顔を蹴りつけ、その勢いで後退飛行。
倒れそうなビルにぶつからないように上昇する。
そんなれなにとどめをさそうと、シャコ怪人は更なる勢いをつけて向かってくる!
れなは痛みに耐え、右手をあげてエネルギーを集中、右手を青く光らせた。
そして、青い破壊光線オメガキャノンを放つ事に成功。エネルギーの勢いで更に腕に負担がかかるが、もはや気にしてられない。
「ぐぅぅぅぅぅ!!!」
闘志を込めつつ、同時に痛みへの悲鳴混じりにれなは声をあげた。
光線はシャコ怪人を飲み込み、何発も爆発させ、殻の硬さを無視してダメージを与えてみせた。
黒焦げになって落っこちるシャコ怪人。れなは両腕の痛みに息をあげていた。
ドクロも頬を抑え、歯が欠けてないか舌で確認する。
「…おらっ!!」
Fはシャコ怪人の闘気がなくなった事で、ビルの保定に集中できるように。
ゆっくりとビルを元の位置に戻していくFを見て、二人はとりあえず安心した…。




