巨悪との戦いを終えて
ルークワースのドン、バリバは今テクニカルシティのビルの路地裏に身を隠していた。
天下の闇姫軍との契約を破られた彼らルークワースは、Fを倒し、これからルークワースの邪魔となるであろうれなたちも始末するという大がかりな計画を急がねばならなくなっていた。
「特にFとクラナ…。そろそろやつらの正体をあの小娘どもに明かしてやっても良い頃だ。…だがその前に」
寂しい路地裏に佇むバリバの背後から現れる、巨大な影…。
その頃、れなたちはFとの交流をより深めていた。
今回のメンバーはれな、ラオン、粉砕男。
れなとラオンはFと初めて出会った事務所メンバー。Fの事は二人の方がよく知っていると粉砕男は考え、話題を二人に任せていた。
…だが、話題は弾まない。
「えーとあのFってさ、趣味とかあるのいや趣味というかその特技とかでも良いから何かしら何か良い事というか良からぬ事というか」
れなが先導して盛り上げようとしていたのだが、これがまるでダメだった。
事務所内は気まずい雰囲気に包まれた。陽気なれなも、こういうのには慣れていないのだ。
「その…えっとクラナってめっちゃ綺麗な髪してるよね。うちの嫁にしても良いかな」
…その言葉を最後に沈黙するれな、睨むF。
…色々と可哀想な事になったれなを助けてくれたのは粉砕男だった。
「…あ、Fはリューガって知ってるか」
「…聞いた事はある。何人も人を殺したとんでもないクズだったそうだな。今はどうなったのかは知らんが」
リューガの話題に、Fははっきりと反応した。彼の事を旅の途中で知ったらしい。
リューガ。
今も色々と事件が起きているが、やつの一件が終わってからは随分平和になった気がする。
こうしてFという新たな仲間もできたし、何より日常で死体を見る事もなくなった。
「…実は俺達はリューガと戦っていた。激戦の末、れながやつを倒した」
れなの肩を軽く叩く粉砕男。Fは大した反応は見せず、少し頷く程度だった。
やつがとんでもない悪という事は知っているが、その真の恐ろしさを知っているのは深く関わったごく一部の人物のみ。
このくらいの反応は当然だ。
「…ルークワースのバリバも、リューガ程の悪でなければ良いが」
いまいち締めが決まらなかったが、上手い事Fの興味のある話題に回した。
だがそこでFがのった話題は、意外にもルークワースではない。
「…リューガか。そいつの話をちょっとしてくれないか」
意外だった。
粉砕男は大きく頷くと、リューガの話をした。
やつとの戦い、やつの悪行、その最期、正体…。
こうして話すと、当時やつの正体について考えていた時間が馬鹿らしく思えてきた。
…まさかやつの正体が、自分達が守ってきた人間の悪意の集合体だったとは。
「…なるほど。世の中何が起きるか分からないな」
「そう。世界は不思議だからね」
れなが机を叩いて体を突き出した。
Fは腕を組む。
「…どんなクズが相手だろうと、俺はクラナを守る。二度と奪われるものか」
拳を握るFの決意は、固まっていた。
…こんな何気ない話題で盛り上がり、彼らはこれからの戦いに備える事を忘れていた。




