Fとクラナとカブトムシ
Fとクラナが、れなたちが暮らす島とは大きく異なる環境で暮らしていた事が判明した。
それは、Fに追いかけられながら右手に何かの虫を持ったクラナが、れなたちの事務所にやって来た時の事。
持っていたのはカブトムシだった。
「ねえれな、この虫なに?」
クラナはカブトムシを知らないようだった。知らないどころか、色々本を読んでいるがその姿を一切見た事がないのだという。
それは、Fも同じだ。
カブトムシを手にれなと無邪気にはしゃぐれなとクラナの横で、Fは葵に聞いていた。
「こいつは危険生物じゃないだろうな?」
彼らにとって未知の生物を平気で手に持つクラナを、Fは心配していた。
カブトムシは基本無害な生き物だと聞いてもなお、Fは不安そうにしていた。
その後、れなは以前から研究所に未使用のまま置いていた虫籠があった事を思いだし、クラナにプレゼントする。
「これに入れれば飼えるよ。詳しい事はこれ読んで」
置場所に困っていた昆虫図鑑もプレゼント。クラナは大いに喜び、Fは家に未知の生き物を置く事に不安しかなかった…。
…そんな平和な光景だが、事務所の前を通りすぎる一つの人影が怪しく見つめていた。
…黒いローブを身に羽織った老人、バリバだ。
彼らの楽しそうな姿を見て、バリバは邪悪な笑みを浮かべる。
「…さあ、もっと楽しむが良い」
バリバはポケットから水晶玉を取り出すと、すぐ近くにあった塀の裏に隠れる…。
近くの敵の存在にも気づかず、れなとクラナは事務所の入り、カブトムシを机にのせて無邪気に遊んでいた。
屈強な角を持ちながらもヨチヨチと進むカブトムシは、かっこいいというよりも可愛いという気持ちの方が強かった。
Fと葵は、椅子に座って新聞を読みながら、時々視線を向けて見守っている。
…完全に保護者の顔だ。
「あっ!」
クラナが声をあげる。
新聞から顔をあげるF、葵。
見るとカブトムシが羽を広げて飛んでいた。羽から不気味な音が放たれており、Fの耳には酷く不快に聞こえた。
「こ、こいつ何する気だ!!」
「別に何もしないわよ…」
立ち上がるFをなだめる葵…。
だが、実はこれはカブトムシの中の本能からの行動だった。
突如、事務所の窓が割れる音が響き、一同を風圧が襲う!
壁に叩きつけられる一同。そのうちれなは一緒に飛ばされた机に思いきり顔面をぶつけた。
「…!皆気を付けて!」
目の前に、一体の侵入者が立っていた。
茶色いアーマーを纏い、頭からは一本の長い角、鋭い爪を持つ手を持つ怪人…カブトムシのような怪人だ。
一瞬Fはあのカブトムシが変身でもしたのかと身構えたが、そのカブトムシはまさに今、割られた窓に向かって飛んでいっている。
カブトムシ怪人は背中を丸めると、立派な羽を射出する。
頭の角を向け、太陽の光で鈍く輝かせると、一気に突っ込んでくる!
目標はクラナだ。Fはクラナを突き飛ばし、彼女を部屋の隅っこへ避難させる。
「大丈夫。必ず守ってやる」
頷くクラナの前でFは立ち上がる。
れなと葵は、両手を振り回して暴れる怪人の周りを回りつつ、散らばっていく部屋の家具を片手で払いのけながら蹴りを食らわせていく。
れなの蹴りにすら耐えるアーマーは相当な硬さだ。
ここは無闇に突っ込めない。
「その立派な角を狙わせてもらうわ」
葵はどうやって隠していたのか、首の下からワンピースの中に手を突っ込み、ハンドガンを取り出す。
猛烈な勢いで暴れる怪人の角を正確に狙い、弾を発射した!
角に走る衝撃に、怪人は怯む。
今がチャンスだ。
れなは天井に頭がつかんばかりに飛び上がり、急行下、強烈な蹴りをお見舞いした!
怪人は吹っ飛ばされ、その勢いで壁を破壊、事務所の外へと飛び出す。
すかさずれなは接近、拳を振り上げて怪人を殴り上げ、地面に激突させた!
怪人は、あっさりと気絶した。
…その戦いでまたもや事務所が傷ついてしまう事となったが。
「あっさりやられたか…。何とかしてやつらの戦闘データを集めなくては」
戦闘を裏から見守っていたバリバ。
闇姫軍との契約を破られた今、彼らルークワースは新たな生物兵器を作るのを余儀なくされていた。




