囚われのクラナ ハエ型キメラヒューマン
スタレタウンに辿り着いたFの前に現れたルークワースのドン、バリバ。
そして彼がFに見せたのは、Fの旅の始まりとなった彼の妹、クラナであった。
「お兄ちゃん!」
檻を掴むクラナだが、顔を苦痛に歪め、即座に手を離す。
どうやら檻に電流が流れてるらしい。にやつくバリバ。
Fは怒りに震え、もはやかける言葉などないと、バリバに銃を向けた。
殺意の塊が放たれようとしている銃口にバリバは臆する事なく、むしろ自ら近づいてくる。
Fは迷いなく発砲した。
…しかし、バリバはやはり普通の人間ではなかった。
放たれた鉄の鉛を、右手の人差し指と中指で挟み込むようにして受け止めてしまったのだ。
驚くF目掛けて、バリバは銃弾を投げ返した。
「ぐっ!」
銃弾が胸に直撃し、出血するF。さすがにこれは効いた。
悔しそうに唸りながら、膝をつくF。バリバは彼に歩み寄り、クラナとFを交互に見る。
「やはりこの程度では死なないか。予想通り、お前達は普通の人間ではないな」
バリバは、そのしわがれた声に一気に活力を宿した。
そして、Fに手を伸ばす…。
「ぐぬ!?」
バリバの手に、強い熱が炸裂した!
慌てて手を引っ込めるバリバ。
目の前には、右手に刻んだ狼の入れ墨…導狼の証を青く輝かせながら立ち上がるFの姿が。
「…!それは導狼の証…。どんなに強力な力があっても人間には使いこなせないはず…。どこまでも私の予想通りに動いてくれるやつだ」
「さっきから何言ってんのか分からねえが、もう容赦はしねえぞクソじじいが!!」
Fは飛び上がり、天井を蹴った後、バリバの顔面に蹴りをお見舞いしようと足を構える!
バリバは反撃にも怯まず、滑るような動きでその攻撃を回避するが、この回避行動はFの予測通りだ。
バリバが避けた事を確認すると、Fは咄嗟に蹴りの構えをやめ、着地。
目の前にあるクラナが閉じ込められてる檻に一気に接近。電流が流れてる事を承知の上で掴みかかる。
両手を通じて全身に電撃が流れるが、愛する妹を前にした彼を止める事などできない。
鉄格子が潰れんばかりの力で握り、引っ張る事で鉄格子をへし折るF。
真っ赤になった右手でクラナを掴むF。
「逃がすな!」
Fの背後から、激しい発砲音が一斉に押し寄せてくる。
部屋に駆けつけたハエ怪人たちがバリバを守るように整列し、手に持ったハンドガンで発砲してきたのだ。
Fはクラナを身に寄せて抱いた後、後ろを一切見る事なく銃弾をかわしてみせる。
迷いなく体を左右に動かすFを、納得いかなそうな顔で睨むバリバ。
振り替える時間が勿体ないとばかりに、Fはバク転しながら敵との距離を詰める。クラナは、目を瞑りながら、全ての動きを兄に任せていた。
ハエ怪人たちは迷わずリロード。弾丸をハンドガンに込めると、宙を舞うF目掛けて弾丸を発射する!
Fはクラナから一旦手を離し、空中で激しく回転しながら、飛んできた弾丸を全て蹴り落とす。
彼の真下の床を弾丸が貫通。無数の小さな穴が空いた。
すかさず空中で体勢を整えたFは、地上に着地する直前に一回転し、無数のハエ怪人達に重い蹴りの一撃を叩き込んだ!
次々に倒れるハエ怪人たちを見て唖然とするバリバ。
その隙をつき、着地したFは彼にも鋭い蹴りをプレゼントした!
吹っ飛び、壁に炸裂したバリバに背を向け、Fは落ちてきたクラナを両手で受け止めてみせた。
「逃げるぞ」
クラナをおろし、右手の拳に力を集めた後、壁を殴り付ける!
古びたビルの壁は呆気なく砕け散り、Fとクラナは外へと飛び出していった。
…見事な逃走劇を見届けたバリバは、口から垂れた赤い血を右手の親指で拭き取り、不気味に笑っていた。
「…面白い。実に良い気分だ」
全てが予想通り。
バリバの脳裏に浮かぶ言葉は、まさにその一言だった。




