すれ違う戦士達 赤目の人間達
「スタレタウン?」
ある時、葵が話したある町の情報に、れなとラオンは首を傾げる。
スタレタウン…そこは、ここから西の方角にある不気味な霧のかかった町。
大昔は産業が盛んだったという町だが、他の町の発展に置いてかれ、次第に廃れていき、今では廃墟と化してしまった悲しみの町だ。
「最近、このスタレタウンの周辺で、旅人の間で謎の怪物を見たという情報が頻発してるわ。裏で何か組織が動いてるのかも…」
不吉な話だった。モンスターなどが当たり前のように認識されているこの世界で、謎の怪物というのは一体何者なのだろう。
更に話を進めていくと、彼らは旅人を襲ってはその牙を赤く染めているのだという…。
「これは、調査の必要がありそうだな!」
いつになくヤル気満々のラオンは、ナイフを振ってやる気を見せつけた。
それに対し、れなは何とも面倒臭そうな様子だったが…。
とりあえず、三人は西にあるスタレタウンへ向かう事に。
町の上空から森をこえ、名も知らぬ町を四つほどこえた先に、霧がかかっていて地上が見えない地点がある。
三人は飛行しながらこのルートを辿り、霧地点に到着。
「ここの下にスタレタウンがあるらしいわ」
中々ゾッとする冷気が渦巻いている…。正直入りたくなかったが、ここまで来てしまったらもう引き返せない。
三人は降下していき、冷気渦巻く霧の中にゆっくりその身を投じていく。
…霧の中では、視界が真っ白に染まってしまう。どこから何が現れても不思議ではない。
三人は人工の体全体の感覚を研ぎ澄ませながら、注意深く突き進んでいく。
しばらく進んでいくと、何かが見えてくる。
…真っ黒な建物だ。表面は無数のヒビに覆われ、今にも倒れそうになっている。
霧に封じられた空の下に、本当に町があったのだ。
ここがスタレタウン…。
まだ人が住んでいた痕跡はあるが、静かだ。
人どころか、鼠一匹いないのではと思わせる程の静けさに包まれている。
葵はショットガン、ラオンはナイフ、れなは拳を構えながら、スタレタウンを歩いていく。
「…!」
三人の長い髪を通じて、はっきりした殺意が体に行き渡る。
敵は、れなの背後から接近していた。
直ぐ様右向きに飛翔するれな!
背後から不意打ちを仕掛けてきたのは、両目が赤い人間だった。
それ以外、特に変わった特徴もない…本当に目が赤いだけの人間だ。
拳を振り下ろしてきた人間は、かわされるや否や、獣のような唸り声で威嚇してくる。
気がつくと、れなたちの周囲には全く同じ状態の人間達が、彼女達を取り囲んできていた。
「な、何だこいつら!?」
さすがのラオンも驚く。
相手は人間だ。銃やナイフでは殺してしまうと二人は武器を捨て、拳でかかる事に。
飛びかかってくる人間達を軽く殴って気絶させていく。
赤い目を閉じて次々に倒れる人間達。
全員が勝利を確信したまさにその時…。
人間達とは全く違う、何やら異質な魔力を感じ取った。
どこか無機質な、何か電気のような物も一緒に感じられた。
直ぐ様跳び跳ねる三人!
予想通り、三人が集まっていた地点に凄まじい衝撃が叩きつけられ、周囲の人間達は吹っ飛ばされる。
現れたのは…金色の体を持つ三メートル程の怪人だった!
その体はよく見ると金色の装甲に覆われ、内側は銀色の鉄でできた体が無機質な音をたてながら稼働している。
右手は普通の人間の形だが、左手は巨大な回転ノコギリとなっている。
そしてその顔は、目、鼻、口が赤いペンで描かれたような赤色をしていた。
こいつがルークワースの強力な兵器、ライデンだとも知らず、れなたちは応戦するしかない。
ラオンはナイフを片手に、ライデンに飛びかかるが…ライデンはその反射神経で巨体を素早く動かし、ノコギリをラオンに叩きつけてくる!
ラオンは咄嗟にナイフを構え、刃を犠牲に衝撃を受け流すが、ラオンお手製のナイフがいとも簡単に砕かれてしまう。
直ぐ様葵が銃撃を仕掛けるが、放たれた無数の弾丸も残らず真っ二つ。
二人の後に続いて拳を突き出そうとするれなも、そのノコギリの危険性を察し、ライデンに拳が直撃するギリギリのところで引き返した。
れなたちは、こいつがFやドクロたちと対峙した事はまだ知らなかったので気づかなかったが、ライデンは以前よりも戦闘力を増していた。
そのノコギリに纏う電気は更に凄まじい物となっており、闘気も溢れ出ている。
「こいつの相手をするのは早いかもな…!」
スタレタウンの調査がまだ途中だが、こんなのがいるとなると諦めるしかなさそうだった。
三人は足に全精神を集中し、全力で逃げ出した!
「…あれ?あいつ追ってこないぞ?」
白い霧に紛れ、少しずつ姿が見えなくなっていくライデンだが、どんなに離れても追ってくる事は一切なかった。
…そしてこの出来事は、数分前の出来事だ。
「くっ!」
れなたちが撤退して数分後。
無人のビルが不気味に並ぶなか、Fがすれ違う形でここに辿り着いていたのだ。
無機質な音が、霧の中を駆け抜けて不気味に響き渡る…。
Fとライデンが、戦っていた。
以前以上に激しい攻撃に、Fはひたすら飛翔して回避するしかない。
「お前しつこいんだよ…」
クラナがいるスタレタウンにようやく辿り着いたというのに、この邪魔者だ。
「相手するだけ無駄か…!」
Fは戦いつつも、空気中に紛れたある魔力を探知してある場所を目指していた。
先が見えない霧にも怯まず進んでいく。
背後からライデンの殺意に満ちた音が聞こえてくる。魔力を正確に辿り、目印もない町を駆け抜けていく。
…白い霧ではっきりと見えないが、比較的綺麗な建物が顔を出していく。魔力はそこから感じられる。
「…クラナ!」
自身と同じ血の魔力。クラナはあそこに囚われている!
愛する妹を救いだす為、Fは更に速度を高めて駆け抜ける!建物はあっという間に近づいてきた。
動かなくなった自動ドア目掛けて、Fは飛び出す!
すぐ後ろからノコギリが叩きつけられる豪音が響き、凄まじい風圧がFの青コートを持ち上げる。
その時は、Fは自動ドアのガラスを体当たりでかち割っていた。
先を急ごうと顔を上げるが…。
「…ちっ!邪魔なのが分からねえのか!!」
既に廃れたビルの中、Fは自身を取り囲む異形の兵士たちと遭遇した。
体は黒いアーマーを身につけた人間だが、ハエのような頭を持つKHたちだ。
その手には、マシンガンを持たされている。
「邪魔だクソ虫ども!」
一斉に放たれる無数の弾丸をバク転や側転で華麗に回避しつつ、隠し持っていたお手製ハンドガンを連射しながらハエ怪人たちを正確に撃っていく!
高い連射性を持つマシンガンだが、使い方次第ではハンドガンだって十分勝機はあるのだ。
時々避けついでに蹴りも浴びせながら彼らを撃退していく。
最後の一人は、右手の拳を叩きつけ…。
「はぁぁぁっ!!!」
Fの右手の狼の入れ墨、導狼の証が輝き、強大な魔力の波動が放たれた!
旅人の目的の為に力を発揮するというこの入れ墨。
今まで以上に強力な力を放っている辺り、やはりクラナは近いようだ。
吹っ飛ばされたハエ怪人は、脆くなっていたビルの壁を突き破り、飛ばされていった。
「…ライデンは追ってこないようだな」
倒れたハエ怪人達に囲まれながら、ライデンが追ってこない事に気づくF。
何故なのかは分からないが、とにかく今はクラナを急ぐべき。
Fは近くにあった階段を発見し、急ぎ足で登っていった…。
Fは今にも崩壊しそうな階段を登り、二階へと辿り着く。
「っ!」
息を呑み、戦闘態勢をとるF。
「思ってたよりは早かったね。F君…」
…目の前に立っていたのは、黒いローブを纏い、白く長い髭を持つ老人。
ルークワースのドン、バリバの姿が。
「…貴様!」
「まあまあ落ち着きたまえよ。君の妹は大切にとってあるんだから」
バリバはそのしわがれた指を綺麗に鳴らす。
古びたビルに仕掛けられた仕掛けが発動し、震える部屋の中に何かが降りてきた。
天井が開き…そこから、黒い檻が降りてくる。
黒い鉄格子の隙間に、何かが囚われていた。
「…クラナ!」
黒い髪に桃色の服、桃色の瞳の少女…Fの妹クラナの姿が、そこにあった




