8「文明開化の音がする」
「イインドみたいなやつ知ってる?」
彼女、クラスメイトの斎岡はそう口にした。
「いつにも増して意味分かんないこと言わないでくれないかな」
「いや、あるじゃん?イインド」
「マジでわからんわ」
「ススウェーデンかもしれない」
「怯えてるの?スウェーデンに」
私の名前は猫路地。
「国名だった気がするんだよ。なんだっけあれ猫路地や」
「全く見当がつかないんだけど」
「小気味よい音の連続する国なんだよ」
「ドドドバイみたいな?」
「斎岡それはないと思う」
「お前がはじめた物語だぞ。なぜそうなるんだ。褒めちぎれ」
「いやそのあのね、いい感じなのよ。わからないけど響きがさ。とにかく二人で一緒に奏でりゃ文明開化の音がする」
「文明開化って何だよ」
「とにかく、小気味いい音が欲しいんだよ斎岡は」
「ふーん」
「あ、さては猫路地や、興味ないわね」
「ないわよ」
「ひひどい!」
「そこも連続にするのか...」
「まあとにかくさ思い出したい。その名前をさ。言ってって。国名の頭に一文字追加して言ってこう猫路地」
「チチリ」
「わあ可愛いね。男の子?女の子?」
「子供の名前じゃないよ」
「じゃあ成人男子?」
「なわけあるかい」
「おかしいな...。斎岡間違いないと思ったんだけど...」
「成人男子に可愛いねって言う斎岡もおかしいよ。何らかの方法で連れ歩いている私もおかしい」
「ま、他にもどんどん言っていこうや。斎岡待つから。ほら、どんどん」
「ブブラジル」
「最終進化の楽器みたいだね。ラジル、ブラジル、ブブラジル」
「最終進化形の楽器って何?ついていけない阿呆加減」
「草タイプだから。火力高めな攻撃困るよ猫路地さん」
「私はほのおタイプだったのか。知らないうちに強なってた」
「何言ってるの猫路地さんや?」
「お前が始めた物語だろ。責任取れや阿呆岡よ」
「ロロシアだっけ?」
「戦闘員かな?」
「あ、フフランスか」
「梨みたい」
「ススペインかも」
「埃っぽそうだ」
「イイギリスだっけ?」
「虫みたい。てか、欧州なのかい?」
「ラライン川か!」
「自分で川っていってるやんけぇ...」
「こまったな斎岡。斎岡困ったよ〜。マジ思い出せねえでヤンス」
「まあいいんじゃない。たまには平和に過ごしてみるのも」
「それ斎岡is悪い人、ってこと?」
「そうでヤンス」
「猫路地はひっでー女だぁ。感電しちゃう」
「感電しちゃうって何?」
「ま、いっか。そろそろ帰ろか〜。雨のふろうごたぁ!」
「確かに暗くなってきたね。今日は傘持ってる?」
「もっちょる!」
「斎岡さんや。その喋り方、どこ出身の方ですか?」
「ドドイツ!」
「せめて日本であれや」
こうして今日も斎岡との放課後は過ぎていった。
思い出せない その国はどこか
小気味よい音 都々逸だ