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10「スダチ降ル日ノ木ノ隙間」
昨日からの雨は上がったけれど、今朝の雨が降り始めた。
青い葉から落ちるのは雫ばかりで、息継ぎする間も見つからない。
珍しく昨日、友達が学校を休んだ。
そして今日も学校を休んだ。
いつもより少し静かな午後だった。
普段うるさいはずの誰かがいないだけで、こうも教室は広く感じるのかと思った。
いつもと同じお昼ご飯が少しだけ塩っぱく感じた。
放課後になった。
クラスメイトのが帰る声がして、私は意味もなく教室に残った。
なぜか無意味に窓の外なんか見たりした。
灰色の雲が広がって、まるで食べられない不味そうなものに見えてしょうがない。
一昨日食べたアイスクリームは、もっと綺麗な空の色をしていた。
りんと、電話がなった。
全く急ぎもしないで、私は平然と電話を取った。
「8900」
電話口の彼女は、もしもしの後に少し笑って、それだけ言った。
「私も古い写真の風景に見える」
そういったら彼女は笑った。
彼女は明日は学校に来るらしい。
鞄を手に取って、教室を出る。
上履きを履き替えると、木の隙間からほんの少しだけ日差しが差し込んでいた。