1「あなた、お会いしてる。ね」
「キノコって何?」
彼女、クラスメイトの斎岡はそう口にした。
「菌類」
「そっか〜」
私の名前は猫路地
......。
「え?終わり?」
「うん。」
「開始も終わりも唐突すぎる」
「斎岡は縛られない自由な生き物ですから、まるでキノコのほうしの如く」
「キノコと同じくらいヒッソリと静かにしてほしいわ」
「斎岡は静かでイイ子ですわよオッホッホッホ!」
「こんなに目立つのは毒キノコに違いない。即刻退避」
「猫路地さんや、帰ることはないじゃあないですか。そのくらいで逃げ出すことを繰り返してたら、この先生きのこれないよ。」
「定番中の定番なぎなた読みをありがとう、斎岡」
「定番薙刀読み?猫路地さんの必殺技?」
「定番な、ぎなた読み、ね。定番ってつく必殺技の弱さたるやこの上なしだよ」
「で、ぎなた読みって何サ?」
「ぎなた読みっていうのは、例えばさっき言った、この先生きのこる。みたいに文字にすると意味が変わって聞こえるものだよ」
「このさきいきのこる。この先生き残る。この先生きのこる。なるほど。また斎岡は賢くなってしまった」
「完全に役に立たない知識だけどね」
「完全に焼く、煮立たない知識?」
「無駄な間違いをしない。そもそも煮立たない知識って何?」
「慣用句でありそう。煮立たない知識。意味、いつまでも理解できない」
「私は斎岡のことが煮立たない知識だよ」
「猫路地、他にもないの?ぎなた読み」
「おもいこんだら、とか」
「おもいこんだら。斎岡は、思い込んだら、しか思いつかない」
「重いコンダラ、だって。コンダラって物が重いらいしいよ」
「ふぅん......」
「......え、これ私が悪い?」
「いえいえいえいえ〜斎岡は全くそんなこと思っていません。思っていませんよ。他にはなにかないかなーーーーーーって思っただけで猫路地が滑ったなんてこれっぽっちも思ってないですからぁ〜」
「......。ぱんつくったことある、とか」
「ないよ」
「あ、はい」
「......。」
「......。やっぱりなんか私が悪い雰囲気出してない?」
「そんなことない。斎岡まったくおもってない」
「......ほんとに?」
「あ、そんなことない、もぎなた読みだね。斎岡閃いたよ。そんなことない。そんな子、都内」
「しょーもな」
「じゃあ猫路地さんはなんですか?も〜ッッとすごいの考えつきますか?ほらほらかかってらっしゃいよ!斎岡待つよ〜。考え出す猫路地待つよ〜。待つ、すごく待つ。」
「ハードルが上がりに上がって見えないんだけれども」
「猫路地さん、今のどこがぎなた読み?」
「違うわ」
「なんだ」
「......。ここではきものをおぬぎください。とか」
「猫路地、さっきから欲求不満なの?」
「なんでだよ!」
「さっきから、パンツ食ったとかお脱ぎくださいとかコンダラとか言ってるから」
「コンダラに罪はないだろ、コンダラは」
「それじゃあ斎岡のターンだ。ドロー!」
「そういうノリなんだ」
「ねえちゃんとふろはいってる?とか」
「私と変わんないじゃないかい!小学生か!」
「はい、猫路地さんのターン〜」
「......。はーもにーかなでておくれ?」
「わかりずら!ハーモニー奏でておくれ、と、ハーモニカ撫でておくれ?微妙にズレてるし。」
「じゃあ斎岡は私よりはもっとスゴイのあるのかよ」
「これとかどうよ。ぎなたの猫路地さん」
「いってみれ」
「あなたおあいしています」
「......。あなた、お会いしてます。ね。お、とを、が違うじゃん。」
「それは猫路地もおあいこ」
「......。じゃあ私の負けで」
「斎岡のかちぃ〜」
「はぁ、斎岡、お前はホント、煮立たない知識だな。」
こうして今日も、斎岡との放課後は過ぎていった。
1わ おしまい
またいらしてください