アンケート
「こちらのアンケートにご協力ください」
久しぶりに外出すればすぐにこれだ。自分でも他人から声をかけられれば無視できないのは分かっていたのだから外に出るのは控えていたのに。
渋々、スーツ姿の男が差し出すバインダーとペンを受け取るとアンケート用紙に目を通した。
アンケートの形式は基本的に二択でたまに記述の欄があった。
『年収』だったり『学歴』、『交友関係』など、何の変哲もないアンケートだった・・・最初の内は。
というのも途中から『軽犯罪の経験がある』など少し奇妙な質問が混じってきた。
こんな質問に対して馬鹿正直に答える奴が居るのかと思ったが、気が付けば私の手は『はい』に丸を付けていた。
その後も自身の悪事を私の意志に反して暴露していく右手に私の自由は無かった。
私は書き終えたアンケートを男に返すと男は書かれている内容にスーッと目を通した。
「これはこれは・・・」
男はニヤニヤと品定めでもするような視線をこちらに向けると口元を歪めた。