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終焉

 私は、自分の体を支えることができず、そのまま床に倒れ込んでしまった。立ち上がることはできなかったが、体はわずかに動かせた。自分の意識があるのは間違いなかった。まだ、体を乗っ取られていないようだ。アーランドソンの念動魔術が、理由はわからないが一度途切れたようだ。そして、私の体が床に倒れると同時に、聞き覚えのある女性の叫び声がした。しかし、意識が朦朧としているため誰の声だったかすぐには思い出せない。そして、アーランドソンの声も何度かした。そして、何度か稲妻が放たれる音がして、あたりは静かになった。


 しばらくして、再び私の体は宙に浮いた。

「邪魔が入ってね」。

 アーレンドソンはそう言うと、再び呪文を唱え始めた。

 床に崩れ落ち、再び宙に吊り上げられるまでの短い間だったが、朦朧としていた意識がわずかながら戻っていた。

 私は気力を振り絞り、先ほど拾っていたナイフをアーランドソンの首に突き立てた。

 アーランドソンは、叫び声を上げて、数歩後ろに下がった。

 私の体は再び床に落ちた、しかし、今度は倒れ込まずに何とかひざまずく形で体勢を保った。顔を上げるとアーランドソンが首に刺さったナイフを抜くところだった。呪文を唱えているところを見ると、再び治癒魔術を使っているようだ。

 何とか次の一撃を。

 私は、少し離れて落ちていた剣に手を向けた。その剣はすっと宙を横切り私の手に収まった。

 それを見てアーランドソンは驚いたようだった。それもそのはずだ、私がアグネッタから念動魔術を伝授してもらったのは、ここ二週間ぐらいの前の話だ。セバスティアン・ウォルターの記憶の中に念動魔術を使う私の姿はない。

 私は力を振り絞り、剣をアーランドソンの心臓めがけて突き刺した。そして、全体重をかけて剣をより深く差し込んで行く。


 アーランドソンは叫び声を上げ、私に稲妻を放った。私の体は再び後ろに跳ね飛ばされたが、稲妻の威力は先ほどとは明らかに弱くなっていた。

 その後、アーランドソンは倒れて、動かなくなったようだ。アーランドソンは人間だ。傀儡魔術の作り物ではないから、首を切り落とす必要はないだろう。

 私も稲妻のダメージで倒れたまま、しばらく動けなかった。


 数分立っただろうか、私は何とか立ち上がり、先ほどの女性の声のした方に向かった。そこで倒れている女性を見て驚いた。召使いのオレガだった。

「オレガ!、オレガ!」

 私が声を掛け、体を起こし肩をゆすると、オレガは目を開いた。よかった、気絶しているだけだった。

「師」

 私を見てかすれた声で言った。

「大丈夫ですか?」

「私なら、なんとか大丈夫だ。そっちこそ、大丈夫か?」。

 オレガの意識がはっきりとしているようで、私は安堵した。

 オレガは、ハッとして声を上げた。

「陛下は?」

「倒したよ。君が助けてくれたんだね。ここには、いつから居た?」

 私は、オレガを落ち着かせるようと、穏やかに尋ねた。

 しかし、オレガは、かなり興奮した様子で、まくし立てるように話しだした。

「召使いの控え室にいると、大きな音が何度もしたので、階段を上がってこの階に来てみると、兵隊さんがたくさんいました。その先で、師やソフィアさんたちがチューリン様と戦っているのが見えました。私は、あの奥の壁の後ろに隠れて様子を見ていました。チューリン様が倒された後、陛下と師が一緒に部屋に入って行くのが見えました。でも…嫌な予感がして、師が出て来るまで待っていようと思ったんです。そうしたら、師を追ってくる陛下のお姿が見えて。そして、陛下の話を聞いていました。陛下は偽物で、イリア様も殺してしまうとか言っていて…。そして師も殺されそうになっていたので、何とか助けようと落ちていた剣を拾って陛下に切りつけました。その後の記憶はありません」。

「アーランドソンが自分の秘密を話すのを全部聞いていたのか。君は、多分、奴の放つ稲妻にやられて、それで気を失ったんだろう」。ともかく、オレガのおかけで命拾いしたようだ。「おかげで助かった。命の恩人だ。ありがとう」。

 私は改めて礼を言った。


 オレガはいつから私のことを“師”と呼んでいるのだろう?

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